昨年の11月から月1回、献血ルームのボランティアを始めました。コロナで深刻な献血不足になっていると聞き、できるだけ献血しようとしても女性の場合400mlの全血献血だと年に2回しかできません。そこで、献血した人へのサービスとして無料の占いを思い立ったのです。
ウラナイ8の仲間の杏子さんがボランティア経験者で話を聞けました。そして玉紀さんのインナーチャイルドカード講座でカード読みのおもしろさに目覚めたことで、どうせなら自分の特技で献血事業に貢献することに。一人10分から15分程度なので、誕生日から占う命術には短くて、タロットと必要に応じて手相ぐらいがちょうどいいいいのです。
日赤本部での面接後、駅前ビルの献血ルームに配属が決定。パーテーションで仕切ったコーナーが用意されています。占いに訪れるのは、献血に協力するぐらいだから肉体も精神も健全な状態の人が大半。占いが初めてという人も多く、どんな質問がいいか一緒に考えながらカードを引いてもらい、その人だけの物語を組み立てていくのは、毎回わくわくします。日当たりのいいビルの最上階の広々とした献血ルームは、良好な「気」に満ちています。
しかし先日、献血ルームに到着すると、不穏なムードが漂っていました。
中年男性とスタッフが延々と話し込んでいます。献血に来たものの、過去に輸血歴があるために断られたようです。
献血できる基準はけっこう厳しく、残念だけどしかたないと静かに去って行く人もいます。この男性はどうしても納得できないようです。
現場のスタッフにさんざんからんだ後、携帯を取り出して電話をかけ始めました。どうやら日赤の本部のようです。男性は待合スペースにいる人たち全員に聞かせるような音量で話し、内容が筒抜けです。
「血液が足りないというニュースを見て、わざわざ献血ルームまで来たのに断られた」
「過去に一度でも輸血経験があれば断られるというのはどういう根拠があってのことなのか説明してほしい」
といったことを延々と訴えています。
「血液不足を加速させる理不尽な基準を正す」という正義感のようなものがあるから、その場のスタッフや献血者にもアピールしたいのでしょう。承認欲求をこじらせるとこうなるのか…。
男性が献血ルームを去ったのは3時過ぎ。なんと延々2時間以上も居座って、その場の雰囲気をどんよりさせたのです。電話を受けた担当者に深く同情します。
こんな場所はさっさと離れたいでしょうから、占いの希望者はまばらに。ぽつりぽつりと来てくれた人を占っていてもカードに集中できませんでした。
世の中にはモンスター級の顧客や患者、父兄がいると聞いていましたが、リアルでこんな長時間も同じ場所にいたのは初めてのこと。モンスターの相手をしなくてはいけない立場の方々の精神的消耗はいかばかりか。小心で利己的な私は、この男性が占いに来なくてよかったと内心ほっとしてしまいました。
別府に行ったついでに寄った八幡竈門神社。『鬼滅の刃』のモチーフの一つとされる神社で、鬼が忘れた石草履があります。鬼に襲われた人間は鬼になってしまうけれど、人間のままでも鬼よりひどい存在もたくさんいます。