2024年11月3日(日)~11月10日(日) 無音訓練編
もっと『サザエさん』の無音視聴を重ねて、訓練していきましょう。
10月27日(日)は忘れてしまいましたが、11月3日(日)・11月10日(日)の回はちゃんと録画しました。
11月3日(日)がこんな感じで、
11月10日(日)がこう。
3類型(掛け合い型、イベント型、騒動型)を頭に入れておくと、視聴前にタイトルを見るだけでも大まかな推測ができます。
「サザエのかくし事」と「母さんの主張」は、前回の「気がつくワカメ」に近そうです。
サザエが何かを内緒にしているのをカツオに追及されたり、フネが珍しく何かを波平に主張するみたいな、磯野家の屋内で巻き起こる問答が中心の回ではないかと。
(『サザエさん』においては原則、母さん=フネだと思います。「お母さん」だと別な人の可能性もある。古文の読解みたい)
つまり「掛け合い型」っぽい。
一方で、「アタシの商店街」と「ひみつの参観日」は、前回の「美術館に行こう」に近そうです。
商店街へ買い物に行ったり、学校の授業参観があるのでしょう。
商店街も学校もそれなりの頻度で登場する日常寄りの舞台ではあるものの、「授業参観(=磯野家の大人と学校が交わる)」や「商店街そのものが主題・主役」というのは、十分に非日常っぽさを感じられます。
つまり「イベント型」ではないかと。
残る2つ、「カミナリおやじの会」と「理想のわが家」は、難しいですね。
どことなく「騒動型」っぽさを感じます。
たとえば「カミナリおやじの会」は、「カミナリおやじの会の会長」みたいな特殊ゲストが登場する非日常的な展開(=イベント型)を想像しやすいですが、『サザエさん』においては「カミナリおやじ=波平」という黄金のルールがあります。
波平を差し置いてまでゲストがカミナリおやじとして活躍する姿は、なかなか想像しづらい。
つまり、会長というゲスト中心の回ではなく、会長に触発された波平を中心に物語が転がっていく「騒動型」なのではないかと。
何となく、「ハヤカワさんの物干竿」に一番近そうな雰囲気を感じます。
これってもしかして、
『サザエさん』は毎回、「掛け合い/イベント/騒動」の3話で構成されているのか!?
まあ、この分析はあくまで「無音サザエさん」のための分析なので、『サザエさん』そのもののストーリー構成に対する過度な一般化は慎重に避けておきましょう。
といった仮説も頭の片隅に置いておきながら、今回は、
・まず無音で2週分視聴する
・次に有音(造語)で同じ2週分を視聴する
という二段構成で、無音視聴の精度を高めていきます。
「サザエでございまァ~す!」(幻聴)
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観ました。
音のないテレビにかじりつくこと60分。
無音分析編
正直、全6話ともにストーリーはざっくりはわかったと思います。
前回の3話、特に「ハヤカワさんの物干竿」がちょっと特殊だったのかもしれません。
前回で「掛け合い/イベント/騒動」の3類型を提唱しましたが、新たに6話追加で視聴した結果、2つの座標軸で考えた方が攻略を進めやすそうだと思いました。
(『サザエさん』そのものの分析ではなく、あくまで「無音サザエさん」における分析です)
「磯野家内⇔外」の軸は、話の舞台が磯野家の内なのか外なのか、です。右にいくほど磯野家から離れていき、左にいくほど磯野家という家屋の範囲内で話が完結するイメージ。
「異物度高⇔低」の軸は、磯野家ではない何か(異物)が目立って登場する度合いです。人だけでなくモノや場所も含みます。磯野家<準レギュ<単発、といった順番で異物度が上がっていくイメージ。
一般的に、
異物度が高いほど、無音でも手がかりを得やすいため、無音サザエさんとしては簡単になります。
同様に、磯野家の外ほど、無音でも手がかりを得やすいため、無音サザエさんとしては簡単になります。
つまり、
「磯野家内×異物度低」(左下)は、難しい×難しいで「難しすぎゾーン」です。
前回「掛け合い型」と定義した「気がつくワカメ」がここに入ります。
「磯野家外×異物度高」(右上)は、簡単×簡単で「簡単すぎゾーン」です。
前回「イベント型」と定義した「美術館に行こう」がここに入ります。
いずれのゾーンも、無音サザエさんの競技会場としてはあまり適していなさそうです。
「磯野家外×異物度低」(右下)は、異物度が低いとはいえ磯野家の外に出るので必然それなりにゲストや場所などのヒントが得やすく、結果難易度としてはミドル級。
サブ会場くらいのポテンシャルです。
そして「磯野家内×異物度高」(左上)は、磯野家の内部に異物が侵入して暴れる構造のため、得られるヒントも少ないうえに、「異物の動き」と「異物に対応する磯野家の動き」それぞれを読むという高度な技術が要求されます。
これこそ、無音サザエさんのメイン会場ということです。
今回の6話では、やはり「カミナリおやじの会」が該当しましたが、正直それでも「ハヤカワさんの物干竿」よりはだいぶ簡単に感じました。
「無音サザエさん」会場案内図
ちなみに、左下の難しすぎゾーンだからといってストーリーがわからないかというと、そうとも限りません。
たとえば左下に属する「理想のわが家」は、ノリスケ(異物度:中~高)も多少登場していたものの、磯野家内の掛け合いの割合がかなり高く、「気がつくワカメ」と同じく何のヒントも得られない気配を感じていたのですが、
アナゴ(異物度:中)がマスオにシュポッと「禁酒」という台詞を吐いたことで、バチバチッとすべてがつながりました。
アナゴは恐妻家キャラ、かつマスオに「禁酒しろ」と説教を垂れるようなキャラでもないので、「奥さんに禁酒を命じられる」という忠告(もしくは経験談)をマスオに語ったのでしょう。
タイトル「理想のわが家」からしても、マイホーム購入に関するあるある的なストーリーと思われます。
「フグ田くゥ~ん、キミもマイホームのために禁酒させられるぞ」
というアナゴからの忠告。
たったこれだけのヒントで、他の掛け合いのみのシーンもなんとなく様子が掴めるようになりました。
つまり、掛け合い中心のストーリーであっても、ほんの少しでも突破口があれば、ストーリーへの解像度が急激に上がるということです。
正直この話は、「禁酒」というたった一手で、あまりにもわかりやすくなってしまいました。
したがって「理想のわが家」は、難しすぎゾーンなのに実際の難易度は「簡単すぎ」に属しています。
それくらい絶妙なバランスで成り立っているのが、無音サザエさんなのです。
おそらくこの2軸以外にも、軸や類型化の手立てはまだあると思われます。
たとえば「難しすぎゾーン(磯野家内×異物度低)」は、基本的に磯野家同士の連係プレーあるいは怒る/怒られるなどがストーリーの軸になりますが、主役の行動原理の択が多い(※)ほど更に難易度が上がります。
※たとえばワカメ軸の場合、「まだ子ども」「年の割にマセている」「お母さんにあこがれている」など、ストーリーの軸になりやすい気質がいくつかあるため、展開を読みづらくなる。
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さて、以上は全て「無音」時点の推測です。
僕の今回の目標はあくまで「ハヤカワさんの物干竿」のストーリーを当てることなので、今日視聴した6話をもう一度、今度は有音視聴して、さらに情報を集めていきましょう。
有音分析編
「サザエでございまァ~す!」(本物)
音の聞こえる『サザエさん』、
面白ェ~!!
一体何回膝を打っただろうか?
「なるほどな~!」
「そんなことかよ~!」
「そこまで言っちゃうか~!」
「さすがカツオだ~!」
『サザエさん』って、面白すぎるのかもしれない。
感動してしまいました。
さて、有音で今回の6話を見た結果、得られた学びを列記します。
(6話分の解説はほぼ全て割愛しますので、そこまで長くしないつもりです)
学び1:骨子は無音でも全然当たる
今回の6話は全て、無音で観た時に推測した骨子が当たっていました。
上述した通り、本来なら難しすぎゾーンに属する「理想のわが家」に巨大ヒント(禁酒)があったからというのもありますが、他の5話も無音で観た時に「なんだこの話、ワケわからない」とまでは感じなかったです。
たとえば「アタシの商店街」は、
「豆腐のおつかいに出たワカメが、豆腐屋が臨時休業で困っているところを花沢さんに助けてもらい、商店街に詳しい花沢さんにワカメがあこがれる」という話でした。
展開のキーになる要素のうちいくつか(※)は無音時にはわかりませんでしたが、骨子だけなら無音でも全然推測できる内容でした。
※ワカメが花沢を頼った理由、カツオがワカメを探しに行ったのに見つからなかった理由など
つまり、普通は骨子くらいなら全然当てられるんです。
そうできているんです、「無音サザエさん」は。
だからこそ、一度観ただけではさっぱり訳がわからなかった「ハヤカワさんの物干竿」は、やはり一段高めの難易度設定だということもわかります。
学び2:思ってる2倍、口が悪い
無音視聴時にときどき感じていた「喋るの長いなあ」は、結構な割合で「余計なこと」か「悪口(に近い台詞)」でした。
たとえば「カミナリおやじの会」は、
波平のウワサを聞きつけてやってきた「カミナリおやじの会 発起人」の轟(とどろき)さんが、波平に同会の会長就任を依頼するという導入でして、
その話を食卓で聞いたマスオが波平に笑顔で何か言うのですが、ただの賛同だけにしてはよく喋るんですよね。
何喋ってるんだろうなあと思ったら、半笑いで
「お父さんにぴっw↑たりの会じゃないですか~」
でした。婿としてはギリギリの踏み込んだジョーク。
カツオもカツオで、
「会長の仕事なんかめったに来ないよ」
と、カミナリおやじの本家本元に対してヒヤヒヤする余計な一言。
他にも、学校で「轟」の読み方をカツオが友人たちに出題して、花沢さんが(ストーリーの展開上)読めた時に、
「奇跡だ。ハヤカワさんが読めない字を花沢さんが読めるなんて」
と言ってのけたり。
あるいは、轟さんが既成事実を作るために「カミナリおやじの会 会長 磯野波平」の名刺を作って持ってきたときに
「意外と頭が良い人だね」
と口を挟んだり。
無音の時には「ここでこのキャラが何か言う必要あるのか?」と疑問に感じるポイントがいくつもあったのですが、結論としては「必要のない一言」を言っているケースが非常に多かったです。
こういう隠しスパイスが、『サザエさん』らしさを形成しているということですね。
学び3:タイトル、結構大事
「アタシの商店街」というタイトルは、無音時には「ワカメが、自分も商店街で顔が利くようになりたがっている」くらいの意味にしか捉えていませんでした。
しかし実際は、
・商店街にすでに顔の利く花沢さん
・花沢さんの顔の利かせ方にあこがれるワカメ
・花沢さんよりさらに顔の利くサザエ(顔の利く要素が絶妙に台詞のみになっていた)
というトリプルミーニングになっていました。
多分、ワカメだけを表すタイトルなら「アタシ」じゃなくて「わたし」で良いんですよね、きっと。
花沢さんとサザエにも掛けているから、敢えて「アタシ」というタイトルなんです。
ここは有音時にかなり膝を打ったポイントです。
タイトルは、今までよりももう一段丁寧に読み込んだ方が良いかもしれません。
学び4:カツオの展開力が異常に高い
「カミナリおやじの会」のストーリーは無音時にも大方推測できていましたが、
・なぜカツオがずっと張り切っているのか(波平を会長にしたがっている理由)
・カツオと花沢が何を会話しているのか
など、ストーリー展開のいくつかについては全然わかりませんでした。
有音の結果、カツオは
・「会長」や「会長室」にこだわっている(=波平の出世だから)
・波平が出世することは、自分の手柄である(=自分がカミナリを落とさせているから)
という行動原理が判明し、カツオのこの思い込みがストーリーを動かしていることがわかりました。
もしこの要素がなかったら、「波平が会長就任を打診される」「轟さんが会の立上げを妻子に反対されて結局なしになる」という、4コマにも満たない薄い展開しか残っていません。
これでは、アニメの1話として成立しないことでしょう。
なんだかんだ言っても他の磯野家は常人の範囲内といいますか、自ら展開を生み出せるほど込み入った掛け合いを始められるのはカツオくらいなんです。
だからこそ「カツオが何を考え、どう動くのか」を当てることが、無音サザエさんにおいては非常に重要だということがわかりました。
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これらの学びも、ぜひ「ハヤカワさんの物干竿」に反映させたい。
そして調査を進めているうちに、さらなる貴重な情報源があることを耳にしました。
行きましょう。『サザエさん』の街へ。