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教育

yasuokaの日記: ヘボン式ローマ字における促音と撥音

日記 by yasuoka

『ISO 3602をヘボン式に改正要求』の読者から、伊澤拓也の『「ti」「chi」どっち? ローマ字、児童混乱 教員ら「一本化を」』(毎日新聞[東京], 2017年3月21日, 夕刊p.9)という記事を読んでほしい、との御連絡をいただいた。

さまざまな形式が混在したローマ字を統一するため、昭和初期に文部省(当時)がほぼ母音と子音の2文字で構成する訓令式をまとめた。1954(昭和29)年の内閣告示で現在の訓令式のつづりを正しいローマ字として定める一方、ヘボン式の使用も認めた。

『NかMか』にも書いたが、臨時ローマ字調査会(1930年12月15日~1936年6月26日)において、5年半もの激論の末に「訓令式ローマ字」を決めたのだから、文部科学省としては今更その議論を蒸し返したくないだろう。しかしながら、GHQが出したSCAPIN-2(1945年9月3日)以降、「ヘボン式ローマ字」が日本中に広まってしまったというのも、また事実だったりする。

一方、5年前の私(安岡孝一)の予想に反して、国際規格ISO 3602は「訓令式ローマ字」のままだったりする。「ヘボン式ローマ字」への改正調査提案(ISO/TC46 N2346, 2012年2月3日)は、親委員会のISO/TC46では賛成多数で可決されたものの、子委員会のISO/TC46/WG3では作業のためのエキスパート(5人)を集めることができず、調査そのものが進んでいないのだ。その間、ドイツは「ヘボン式ローマ字」の国内規格DIN 32708を制定(2014年8月)したものの、それをISO/TC46/WG3に再提案したという話は聞かない。

というのも、「ヘボン式ローマ字」は促音と撥音に関して、かなりややこしいルールを含んでいるからだ。代表例が「八丁堀」で、これを「Hatchōbori」と正しく書ける人は、正直あまり多くない。しかも、パスポートの「ヘボン式ローマ字」だと「Hatchohbori」もOKだったりする。あるいは「難波」は、パスポートやSCAPIN-2では「Namba」が強制されるが、DIN 32708では「Nanba」だったりする。「ヘボン式ローマ字」と言っても、複数の書き方が存在していて、一種類では無いのだ。その意味で、現場の教員が本当に「一本化」したいのなら、とりあえずは「訓令式ローマ字」を採用するしか無いだろう。

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コンピュータは旧約聖書の神に似ている、規則は多く、慈悲は無い -- Joseph Campbell

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