続報! コンパクトなのに7名乗車/7名就寝のキャブコン 日本特種ボディー「KAGAYAKI」
前回、いすゞの新型キャンピングカーベース車「Travio」をご紹介しました。今回は、このTravioを採用している日本特種ボディー(本社:埼玉県越谷市)の「KAGAYAKI」についてご紹介しましょう。
気になる“走行性能”は?
短時間かつ一般道のみの試乗でしたが、新型ベース車Travioの乗り味は非常に好印象でした。
エンジンは1898ccターボディーゼルです。比較すべきはライバルであるトヨタ「カムロード」のディーゼルでしょう。どちらもターボディーゼルですが、カムロードは2754ccですから排気量はひと回り小さめ。以下の表にある通り、最高出力では差があります。が、最大トルクではカムロードを上回っています。これが何を意味するのかを簡単に解説します。
◎メリット◎=トルクが大きい
トルクが大きいということは、停止状態からの動き出しがパワフルかつスムーズであるということ。実際に運転してみても、街なか走行に多い「ストップ&ゴー」を繰り返す状況でも、ストレスは感じられませんでした。キャンピングカーのように重量のある車両にとって、この「トルクが力強い」というのは大きなメリット。走り出しも加速も余裕ですし、安定した走行が見込めます。
●デメリット?●=最高出力が小さい
最高出力が小さいということは、単純に言えばエンジンのパワーが小さいということです。重たい車両にパワーの弱いエンジンでは困るのでは?と思われるかもしれませんが、前述のとおり、トルクに優れていますので問題はありません。もとより高速走行を目指すスポーツカーではないのですから、キャンピングカーの走行性能としては最高出力はあまり影響しないと考えます。
いすゞ Travio | トヨタ カムロード | |
---|---|---|
排気量 | 1898cc | 2754cc |
最大出力(kW[PS]) | 88[120] | 106[144] |
最大トルク(N・m[kgf・m]) | 320[32.6] | 300[30.6] |
ドライバビリティー(運転のしやすさ)はどうでしょう。
■ミッション
Travioのミッションは6速ATです。兄貴分のいすゞ「Be-cam」のようなロボタイズドMTではなく、一般的なトルコンATなので癖もなく、スムーズな変速感です。減速時にはシフトダウンして積極的にエンジンブレーキを使うセッティングになっているのも、評価できる点でしょう。
■ブレーキ
四輪ともディスクブレーキです(カムロードはリア・ドラム)。乗ってみた感想は、ブレーキの利き方・ブレーキペダルを緩めた時の挙動ともに、感触は乗用車に近く好感が持てました。
■小回り加減
最小回転半径は4.4mと軽自動車並み。コンパクトなボディーともあいまって、街中での走行はもちろん、車庫入れなども楽々でした。キャンピングカーの、とくにキャブコンの運転で敬遠されるのが車格の大きさや取り回しのしにくさですが、軽自動車並みのコンパクトな動きができるとあれば、心理的ハードルはかなり低いでしょう。
ちなみにカムロードの最小回転半径は4.8m(コンパクトカー並み)。とはいえこちらもそれほど大回りというわけではありません。
■乗り心地
一番気になるのが乗り心地でしょう。運転してみるとリア側の突き上げもありませんし、カーブ時のロールもよく制御されていました。コンビニの駐車場に入る時のような、段差を乗り越える際の動きもよくチェックされていて、大きな横揺れもありません。
■唯一残念だったこと
ささいな点ですが、残念だったこともひとつ、ありました。いすゞ・Be-camにはあったクルーズコントロールがTravioでは省略されているのです。長距離走行が多いキャンピングカーには必須ともいえるクルーズコントロールなので、これはぜひ搭載してほしい機能でしょう。今後、実車のデリバリーが始まって、どこかサードパーティーから出てくるのを期待しましょう。
キャンピングカーとしての魅力は?
ベース車両がまったくの新型でしたので「車両としての性能」に注目して紹介してきましたが、もちろん「キャンピングカーとしてどうなのか?」も気になりますよね。
概略をご紹介しておきましょう。
サイズは全長4,880㎜×全幅1,900㎜×全高2,850㎜。最近のキャブコンとしてはコンパクトなほうですが、7名乗車/7名就寝を実現しています。
レイアウトは中央部にダイネット、後部に二段ベッドを配置。バンクベッドは引き出し式なので走行時の天井は高く開放感があります。すべてベッド展開すると、ダイネットに2名、後方二段ベッドで3名、バンクベッド3名、合計で7名就寝が可能です。
乗車席としては、運転席・中央席・助手席で3名、ダイネットに4名で乗車定員7名です。居室は、エントランス左に冷蔵庫が、右側のキッチンには電子レンジを標準装備。シンクは給排水が各20Lです。
レイアウトはごくスタンダードな構成ですが、最近では必須装備である家庭用エアコンも標準装備され、居住性はばっちりといえるでしょう。
ユニークなのはサブバッテリーです。「スタンダード電装モデル」と「シンプル電装モデル」とが用意されており、スタンダード電装モデルはリチウムイオンバッテリー・1500Wインバーター・ソーラーパネルを装備。もう一方のシンプル電装モデルにはサブバッテリーは装備されておらず、ユーザーがポータブル電源(エコフロー社を指定)を用意して搭載するようになっています。
「ポータブル電源は日進月歩でどんどん良い製品が出てきますし、追加バッテリーで容量を増やすこともできます。また、キャンピングカーから降ろして多目的に使うこともできるので、こうした装備を考えました」とは、同社の蜂谷慎吾社長。
もうひとつ、車の性能そのものではないながら、注目すべき点があります。それは、KAGAYAKIのWebページやカタログに定員乗車時の積載可能重量がハッキリと記載されていることです。
例えばシンプル電装モデルの場合
車両重量(オプション無し):2695kg
車両総重量(定員乗車時):3080kg
定員乗車時の積載可能重量:410kg
※ただし前輪負荷1900kgを超えないこと
と記されています。
「キャブコンはバーストしやすい」などと言われていますが、バーストや横転事故のそもそもの原因の多くは「荷物の積みすぎ」なのです。
しかし8ナンバーのキャンピングカーの場合、車検証を見ても最大積載量の記載はありません。つまり、ユーザーは自分の車の総重量や、どれだけ荷物を積むことができるかということを、カタログなどでは確認できませんでした。そのような現状を受けて、「安全性の観点から明記することにした」(同社:蜂谷社長)というのは同社ならではの英断であり、ぜひ他ビルダーにも見習ってほしいと思います。
最後に気になる価格ですが、シンプル電装モデルで9,982,564円。キャブコンは軒並み1千万円超が珍しくない昨今、良心的な設定と言えるのではないでしょうか。
コンパクトなボディーに必要十分な機能を凝縮し、小回りもよく、安全装備も充実。そして、なにより普通免許で運転できます。キャブコンを検討されている方なら、要チェックの新型車です。