■連載:大学職員座談会
大学受験で頑張るのは子ども自身。保護者にできるのは、わが子が安心して入試に挑戦できるような環境をつくってあげることです。お金に関することもその一つですが、大学入試の現場では毎年、手に汗握るようなハプニングが起こっているようです。大学の入試・広報担当者3人に、赤裸々に語ってもらいました。(写真=Getty Images)
期日が過ぎたら、どうにもできない
――大学受験の際、お金に関することは保護者の大切な役目です。
A大学担当者(以下A大学):出願時や合格後の入学手続きに関して、毎年さまざまな事件が起こります。特にお金に関することで一番多いのが入学手続きで、入学金などの振り込みが間に合わないというものです。
B大学(以下B大学):毎年ありますね。大学受験シーズンは年度末でもあり、保護者の方は仕事が忙しくて振り込むのを忘れてしまったり、期日を間違えたりして、入金できなかったというケースは少なくありません。
C大学担当者(以下C大学):年内入試よりも一般選抜で多い印象です。残念ですが、期日厳守。期日を過ぎてしまったら、お断りせざるを得ません。
B大学:子どもが頑張って合格したのに、入学できないというのは本当に悲惨です。なかには、他の大学の合否を待っている間に締め切りを忘れてしまうんでしょうね。入金の日が過ぎた後に、大学に直接お金を持ってきて嘆願されたお父様もいました。本当に申し訳ないけれど、一切お断りしています。どうすることもできません。お気持ちを考えるだけで、いつも胸が張り裂けそうになります。
A大学:合格後のお金のミスは本当につらいですね。うちの大学では、入学金などは金融機関の窓口からの振り込みに限っていますが、時間ぎりぎりになって大学に「間に合わない」という電話をいただくことも数件あります。期日内に支払いが完了しないと入学できないので、「今すぐATMからこの番号に振り込んでください」と、ご案内することもあります。
B大学:A大学さんでは、期限までに入金できればいいというルールなんですね。うちの場合は、期限までに「着金」がルールです。大学の口座にお金が届いていないといけないのですが、地方の信用金庫など送金に時間がかかるところもあるので、そこは気をつけてもらいたいです。
ネットバンキングの落とし穴
――入学金の振り込みでも、大学によってルールに違いがあるのですね。それはうっかりしそうです。
B大学:振り込み名義を、間違えて親御さんの名前にしてしまうケースも多いです。受験生の名前に受験番号をつけて入力することになっているので、名前が違うとエラーが出てしまいます。
A大学:うちはネットバンキングでの入金を受け付けていないのですが、入金してくる方が。そうなると入金確認に時間がかかり、結果、入学手続きが遅れてしまいます。
C大学:入金といえば、最近はいろいろな選択肢がありますが、クレジットカードは手数料に注意が必要です。普段の買い物では店側が手数料を負担してくれていますが、大学の場合は受験生側の負担となります。手数料だけで数万円になるため、入金後に「別の方法に変更したい」と連絡いただくことがあるのですが、手続きしてしまったものは大学側ではどうすることもできません。
B大学:ネットバンキングも危ないです。振り込んだと思っていたのに、最後のワンクリックがされていなくて、手続きが完了していなかった事例がありました。
入学辞退の手続きに注意
――想像するだけでドキドキしてしまいます。そういう意味では、アナログな銀行窓口での手続きが確実なのでしょうか。
C大学:ただ、会社勤めをしていると、15時までに銀行に行くのが難しい時もありますよね。また別の受験校の結果を待ってから、期限ぎりぎりで入学金を振り込むような場合には、23時59分まで手続きができるネットバンキングは便利かもしれません。
A大学:併願校の結果待ちのために、入金を忘れるケースもよくあります。うちの大学は入学金さえ所定の期日内に納めていただければ、3月下旬まで入学手続きを保留できるのですが、その3月下旬の手続きを忘れてしまう方もいます。それもこれも、3月31日に追加合格を出す大学があることも一因です。うちの大学では、それでも3月31日の消印で入学辞退の書類を郵送していただければ授業料のみですがお返ししています。でも、4月1日になると学籍が発生してしまうので、返金不可になります。2校分の入学金と授業料がかかってしまうことになり、保護者にとって大きな負担です。
B大学:期日までにお金が工面できなかったり、教育ローンの審査待ちだったりして、「少し待ってもらえませんか」「分割にできませんか」といった相談もあります。お金の工面の大変さは重々承知しているので心苦しい限りですが、お金に関することは保護者にできる数少ないことです。早めに、確実に、準備するに越したことはないのかもしれません。
――手に汗握るエピソードの数々、ありがとうございました。お金のことは保護者の責任。肝に銘じたいと思います。
>>大学の入試・広報担当者の本音座談会【前編】
「面接で何を聞かれますか?」「子どもの自己推薦書を添削して」と親から相談
>>大学の入試・広報担当者の本音座談会【中編】
総合型選抜、どうやったら受かるの…? 入試・広報担当者からのアドバイスとは
(文=石村紀子)
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