「ピーマンシャキシャキ」の美味しい青椒肉絲
日本橋にある中華レストラン「リバヨンアタック」料理長の人長良次(ひとおさ よしつぐ)さんに、青椒肉絲の作り方を教わりました。
これです。
写真まちがえました。いまのなしで。
こっちこっち。こういう青椒肉絲。
おいしいですよね。
──家で青椒肉絲を作る時の悩みは、ピーマンがへニャーと柔らかくなってしまうことなんです。お店みたいにピーマンがシャキッとしていながらも、生ではない状態っていうのは、不可能なのでしょうか。
人長:ピーマンシャキシャキのおいしい青椒肉絲はお家でも作れますよ。そのためのポイントは3つ。
- 食材のサイズをそろえる
- お肉の下味処理「チャン」
- 火を通しすぎない
ですね。
──材料はこちらでーす。
【青椒肉絲(2人前)】
- 豚バラ スライス 100g(豚モモや牛肉でも可)
- 卵 全卵40g
- 酒 小さじ1
- 醤油 小さじ1
- 片栗粉 10g
- ピーマン 3個
- 赤パプリカ 1/4個(または赤ピーマン1個)
- タケノコ 60g
- ショウガ 小さじ1
- ネギ 大さじ2
- サラダ油 適宜使います
- ごま油 小さじ1/2
合わせ調味料
- 砂糖 小さじ1
- 酒 小さじ2
- 醤油 小さじ2
- みりん 小さじ2 ※チューニャン(酒醸)、甘酒でも代用可
- オイスターソース 小さじ2
- 水 小さじ6
- テーブルコショー 適量
- 水溶き片栗粉(粉1:水1の割合で) 小さじ1
青椒肉絲について
人長:せっかくおいしい青椒肉絲を作るんですから、まずピーマンがおいしくないといけません。「艶と張りのあるもの」を選んでください。
人長:パプリカ。色味があるとおいしそうに見えるから使いましょう。もちろん赤ピーマンでもかまいません。あまり量は使わないので、ちょうどいい感じで買ってください。僕が住んでいるところのスーパーは大学が近いので、一人暮らしの自炊用に少量で売っていたりします。赤ピーマンひとつとか。
人長:タケノコです。季節が合えばフレッシュなタケノコのほうがそりゃおいしいんですけど、アク抜きなどが面倒ですし、スーパーで普通に売っている水煮タイプのタケノコでオッケーです。スライスしてあるやつでもかまいません。
──細切りされたものもありますよね。
人長:それでもいいと思います。中国では水煮を使うんですよ。「真竹(まちく:中国でよく食べられる種類のタケノコ)」は保存が効くので、一年中使える水煮が一般的ですね。
人長:豚バラスライスです。今日はあえて冷凍にしてあります。カチカチの状態です。理由はあとで。
──ということは、青椒肉絲を作る場合は買ってきた豚肉を凍らせておいたほうがよい?
人長:ですね。流れとしては、野菜を炒めて、肉を炒めて、タレと合わせて、完成。ここをスムーズにするための下ごしらえをちゃんとやっておけば、おいしくできます。
ピーマンなどを切る
人長:今日使う量は3個です。パプリカや赤ピーマンを使わない場合は緑ピーマン4個にしてください。
人長:いろんな切り方があるんですよ。よく中華でやるのは、上と下を落として、このまま、シュッと、中を外していく。
──嗚呼。俺はいままでスプーンでほじって種をバラバラにしてた。これなら、散らからないじゃないですか。
人長:でも、どうしても上下の部分にロスが出ますよね。お店ではおいしい部分だけお出しするので、こうやってやるんですけども。
人長:ご家庭ではピーマンの上下のここを捨てるのももったいないので。フードロスなんてことも叫ばれる昨今ですからね。
──はい(笑)。
人長:そんなときは、半分に切っていただいてね。
人長:ぺろっと。手でむしる。
──ちょろいですね。
人長:するとこうやって使えるんで。
──ところで青椒肉絲のピーマンを切る方向って、縦方向と輪切りがありますが。どちらがいいとかありますか。
人長:それはえーと。作る人それぞれこだわりがあると思いますので、あえて踏み込まず(笑)。僕は縦にいっちゃいます。
──等幅ですねえ。包丁も三三七拍子でリズムを整えてますね。
人長:あ、幅も大事です。細すぎると火が入りすぎて、ヘニャヘニャしちゃう。今回はピーマンがメインなのでシャキシャキに作りたいでしょ。
人長:そのために太さはこのマッチ棒よりちょっと太いくらいのサイズ。これがベストです。これよりも太くても細くてもダメ。
──ピーマンシャキシャキが今回の目標ですからね。
人長:ちなみにご家庭の切り方では。
人長:こうつぶしてあげれば平らになりますんで、あとは重ねて、ゆっくりと切る。
人長:パプリカを切りましょう。
人長:今日使う量は1/4個。
人長:パプリカはちょっと肉厚なので、こうやって押して……(削ぐ)。
──えええー? おそろしいピーリング技術。
人長:こうしておくことで、切ったときに厚さが均一になります。
人長:これを細切りです。
──ピーマンとほぼ同じサイズにするんですね。
人長:つぎはタケノコさんです。半分に切りますね。
人長:今日使うのは60gなんですね。これはパッケージに500gと書いてある水煮ですから半分でおよそ250g。タケノコ8分の1の量が目安です。
人長:さらに半分にします。下の方は硬いので落として。先も落として、ピーマンの長さにそろえてあげます。
──なるほど。
人長:中の節は外してしまいます。これでおよそタケノコ1/8くらいになりますね。
──へえ、なんと贅沢な作りを。
人長:これをさらに薄く切る。
人長:ピーマンと同じサイズに細切りにできるよう、薄くしました。
人長:あとはトントントーン。
人長:細切りにすると、ちゃんとピーマンと同じ太さになると。
人長:こうなるわけですね。パプリカやタケノコの切り落とした部分は、他の料理で使ってくださいね。
──アリタリアカラーっぽい色味です。ラリーカーや飛行機で見たことあります。
──タケノコの水煮って、中に白い澱みたいなのがあるじゃないですか。あれは取ったほうがいいんですか。
人長:調べたら、ヤツはアミノ酸らしいですよ。旨味成分なんですね。ただ食感が悪くなるので、私はあまり使わないです。
豚肉を切る
人長:豚バラの肉ですが、生だとクニュクニュして切りにくいですよね。だから凍っている状態のまま切るんですよ。これを3等分して。
──おお、ピーマンたちと同じ長さになりました。
人長:これをこのままストスト切っていくわけですよ。
──シャクシャクして切りやすそう。
人長:切りやすいんです。ご家庭では凍らせた方が、きれいに切りやすいと思います。ちなみに部位はモモでもバラでもおいしいです。
人長:とにかく、すべて同じ大きさ・細さにそろえることが大事なんですよ。なぜかって、火の通りを一緒にするためです。食感も良くなり、そのほうがおいしく仕上がります。そうじゃないと、タケノコがゴロゴロしているとか、ピーマンの歯ごたえがないとか……。
──あっちはベショベショ、こっちは生という感じで。
人長:そうそう。そういうのを避けたいですよね。
【Tips】かたまり肉を細切りにする方法
人長:ちなみに、青椒肉絲(チンジャオロウスー)は豚肉とピーマンの細切り炒め。牛肉で作るのは青椒牛肉絲(チンジャオニウロウスー)となりますね。
──こりゃまたいい肉だな。
人長:いやいや。おなじみの肉屋で買ってきたオーストラリア産の安い牛モモです。凍っていないブロック肉をどうやって細切りにするのかをやってみます。ぎゅっとつぶしてですね。こういうふうにスライスしていくんです。
──はああー、中華包丁ー!
人長:中華包丁ならではです。
──以前、自宅でローストビーフを作ったときに薄く切れなくて難渋したんですけど、こんなふうにギュッと押さえればよかったんですね。
人長:このまま普通に切っても、クニュクニュしちゃいますよね。
人長:まっすぐいってから、包丁ごと倒すんです(シュピン!)。
──ちょっと刺身の切りつけに似ているー。
人長:中華の専門調理師の試験にこれがあるんですよ。昔の人はこうやって切るのが当たり前だったんです。今は冷凍技術とかがあるんで凍らせてサクサク切ることができますけど。すでに切られたものだって売っていますし、スライサーを使ってもいい。でも昔の人たちはこれを包丁一本で、技術でやっていたわけですよ。
──たしかにこれができないと青椒肉絲を作れないですからね。ちなみに、肉を重ねて切ることはできますか。
人長:重ねると、滑りますね。危ないし、きれいに切れない。
人長:こういうことを教える時間も今はなかなか取れないんですけど、若い子たちに「こういうこともできるんだよ、こういう技術もあるんだよ」というのは見せてあげたい。やりなさいということじゃなくて、知っておくとあとで活きることもあるし、残して伝えないと中華料理の技術も落ちちゃうんでね。
ショウガとネギ
人長:ショウガはチューブのものを使用してもいいんですが、いちおうプロなんで(笑)。皮をむいてスライスします。
人長:これもね、人差し指で押し付けながら、包丁が通っていく感覚を食材に伝えていくんですよ。そうすると厚さが自分でわかるので。
──最悪、スライサーでばばばーってやってもいいんですか。
人長:いいんです。
──よかった。修行から始めないといけないかと思った。
人長:これを(とんとんとんとん)。
──うおお、無呼吸でショウガ1個分、ぜんぶ一気に切りましたね。
人長:細ーく切ったショウガをさらに細かく切ります。
──すごい、ショウガが粉々に。また無呼吸で一気に切りましたね。
人長:そして、今回使うショウガはこんだけです。みなさんはチューブを使ってください。以上、今回のテクニック自慢のコーナーでした(笑)。
──ナイス自慢でした(笑)。
人長:あ、あと、ネギもみじん切りにして細かくしておきましょう。
豚肉の「チャン」
人長:次に豚肉の下味の工程に入ります。使う調味料はお肉100gに対して以下のとおりです。
- 酒 小さじ1
- 醤油 小さじ1
- 卵 全卵40g
- 片栗粉 10g
──凍らせて豚肉を切りましたが、ここまでに解凍できているようにしまーす。
人長:なので、最初に豚肉を切るのがいいですね。まずは下味です。
人長:酒、小さじ1。
人長:醤油、小さじ1。
人長:卵を入れるんですけども、M玉が60gなんですね。使う量が40gなので、さらにちょっと小さいくらいのサイズの卵がいいかな。卵を入れ過ぎちゃうとそれはそれでダメなんですよ。
──じゃあ、卵は量が大事なんですね。
人長:めっちゃ大事です。
──全卵の溶き卵で40gにしましょう。
人長:豚肉を「チャン」していきます。豚肉の「チャン」は、肉に卵を吸わせるんです。
▲「チャン」について学びたい人はこちらもどうぞ
──「まとわせる」んじゃなくて「吸わせる」んですね。
人長:最初、半分だけ入れました。お肉が崩れないように優しく混ぜ混ぜします。
人長:なんのためにこれをやっているかというと……ニュアンス的には「お肉の細胞の隙間に卵を入れてる」感じです。わかりますか。
──はい。脳内にCG解説が出てます。
人長:お肉って、火を通すと固くなりますよね。細胞が凝固してギューッと縮んで固まるんですよ。
人長:卵を入れてあげることによって、その「ギューッ」とするところが「クッ……」くらいになるんですよ。
──あまり縮まなくなる。
人長:さらに卵が肉の中に入ることで、食感が柔らかくなるんです。なので、固くなったりパサパサになったりしにくいんですね。中華ならではの技法だと思うんですけど、これがすごく、いいんですよ。
──中に吸わせると、肉が柔らかくなるという感じ。
人長:卵、先に20g入れましたが、さらに20g入れます。40g用意して半々に分けてやる感じですね。
人長:お肉が卵を吸ってくれるんですよ。牛肉の場合はもうちょっと卵を多く入れます。牛肉がいちばん多く卵を吸いますね。次が豚肉です。
──これも中華で食材に下味をつける技法「チャン」なんですか。
人長:そうです。エビチリの作り方を紹介した回ではエビを卵白でチャンしましたが、今回は全卵で豚肉をチャンしています。
──おお。卵が減ってきましたね。マジで肉に吸われたんですね。
人長:触感も、最初はお肉を触っている感じだったんですけど、だんだんこう、トゥルンとしてくるんですよ。
──トゥルンと。
人長:ちょっと触ってみてください。
──わっ! ひき肉じゃないのにひき肉みたいな、なんか! わっ。
人長:こうやって柔らかくしてるんですよ。卵を吸わせたら、ここに片栗粉を10g。
人長:なんで片栗粉を入れるかといえば、卵だけでチャンして置いておくと、また卵が戻って出てきちゃうんです。それを片栗粉で止めるんです。ほら、卵が出てきてないですよね。
──ホントだ、もう無い。
人長:これで、火を入れたときにも中で固まって水分が出てこないし、片栗粉って熱で固まりますよね。食感も柔らかくなる。
──「プルみ」が出てくるんですね。
人長:そうなんです。……プルみ?
──僕はこれまで、肉にタレを絡ませるためくらいの意識でなんとなく片栗粉をまぶしておりました。
人長:まあ、それでもいいんですけど。今回は、わりと深くやっています。
──生肉が「チャン」によってかなりのプルみを得ました。左がチャン前、右がチャン後です。
タレ作り
人長:合わせ調味料はあらかじめ作っておきましょうか。焦らないために。
人長:まずお砂糖を小さじ1。お酒が小さじ2。お醤油が小さじ2。チューニャン、小さじ2。これはみりんでも甘酒でもいいです。
オイスターソース、小さじ2。お水、小さじ6。そのままだと味が濃いので、水で伸ばしてあげます。
人長:テーブルコショーを適量。「パッパッパ」で適量ですね。黒とか白とか使うと胡椒で辛くなってしまうのでテーブルコショーのほうがいいです。
人長:ここで味見。まあ分量どおりなので、そんなに気にしなくてもいいところです。
人長:ここに水溶き片栗粉を小さじ1。
人長:水と片栗粉は1:1の比率です。味見は片栗粉を入れる前にやりましょう。生の片栗粉を食べるとお腹が痛くなっちゃうんで気をつけましょうね。
──調味料を混ぜるだけ。シンプルです。
青椒肉絲を作る
人長:さあ、青椒肉絲の完成まで、一気にいきますよ。
人長:フライパンにサラダ油を大さじ1。中火です。先にタケノコを入れていきます。ピーマンのシャキシャキのために、タケノコを先に炒めます。
──フライパンがあまり熱くなっていないですけど、いいんですか。
人長:油がハネるとイヤじゃないですか。アチャーってなりたくないじゃないですか。なので、ビビってヌルめのところからいって、さあチリチリしてきてっぞと、ヤベーぞと思ったら一回火を止めて逃げる。
──逃げるんだ。
人長:僕は家の台所ではいつも横にフタを置いていて、油がハネたらすぐフタしちゃいます。
──特に水煮なので、ハネますよね。
人長:そうなんですよね。フレッシュのタケノコだとそうでもないんですけどね。
人長:はい、チリチリしてきました。そしたらピーマンとパプリカを入れます。軽くあおって、ピーマンに油をまとわせます。
人長:そしたら火を止めて、ボウルに逃します。
──ホントにすぐ火から離しちゃうんですね。
人長:フライパンはそのままで、大さじ1の油を入れて、火を点ける前に豚肉を入れます。
人長:先に火を点けていると、お肉を入れたときにダンゴになってしまうんですよ。卵も使っていますし。火を点ける前に、お肉をフライパンの上でほぐしてあげてください。
──たしかに、これ、火が点いた状態でやったら簡単にオムレツ化してしまいそう。
人長:ホントは中華では油通しをするんです。普通のご家庭ではたぶん油通しはできないんでフライパンの中で炒めるんですけど、かといって油をあまりたくさん使いたくないので、こういうふうな形にアレンジしています。
人長:お肉がほぐれたら、ここで火を点けて。中火です。
(ジュウーと鳴りはじめる)
──けっこう徹底的にほぐしますね。
人長:せっかく細切りのサイズにそろえたのに、ここで塊になっては元も子もないので。箸は動かし続けてください。
人長:お肉に火が通ってきました。ちゃんと細かくなっていますよね。そしたらここに先ほどのお野菜をINしてください。お肉にちゃんと火が通っていないとダメですよ。
人長:こうして合わせてあげて、まあ30秒くらいですかね。
人長:ピーマンに火が通ってきたら、真ん中を空けて、ショウガとネギ。
人長:ネギは大さじ2。
──ネギなのに「大さじ」(笑)。聞いたことない単位。
人長:しんなりして香りが上がってきましたね。やはりちょっと豚臭いので、ショウガとネギは入れたほうがいいんですね。
人長:ここにタレを入れます。片栗粉が底に溜まっているので、よく混ぜてからですよ。タレを半分くらい入れたらいったんストップ。もし味が濃くなると、リカバリーが面倒ですから、味付けはタレ半分から。そしたら火を全開にして、ゆっくりゆっくり混ぜてあげます。焦らないでいいです。
──あ、そうなんですか。意外。強火でグワーっとあおるかと思ってました。
人長:いやいや。そんな時代はもう終わりましたよ。
──時代なのか!
人長:材料の大きさによっては微妙に量が違うのでね。もしタレを入れすぎて味が濃くなっちゃったってなると悲しいですよね。一回火を止めて、ちょこちょこ味を見てあげるのが大事ですね。
人長:うん! これでいいかもしれないですね。
──そんなもんなんですね。作ったタレをぜんぶ使わなくてもいい。
人長:「じゃあ最初からタレ半分でいいじゃん」と思う方もいらっしゃるかもしれないですけど、もしタレが足りなくなった場合、焦ってもう一回タレ作ったりすることになると、その間に余熱でヘニャヘニャになっちゃうんですよ。なので、ちゃんと規定量を作っておいて、味見して、タレが足りたらそこでオーケーという感じでやっていただくといいと思います。
──もっとも大事な炒め加減を守るために、タレは十分以上作っておくと。
人長:仕上げにごま油を小さじ半分。ちゅー。
──ごま油にはあまり火を通さないんですね。
人長:香りが飛んじゃうので。香り付けで入れてますからね。
人長:ほら、ちゃんとピーマンが立ってるでしょ。シャキシャキとね。強く炒めなくても、ちゃんと火から外してあげるとか、そういうポイントを押さえていれば、家でもお店みたいなシャキシャキの青椒肉絲ができるんですよ。
──僕、ピーマンがシャキッとしているけどしっかり火も入ってる状態というのは、鉄の中華鍋で、強火で一瞬で炒めることができるお店でしかできないと思っていたんですよ。
人長:やり方次第では、家でもちゃんとできるんです。
青椒肉絲・人長スペシャル! 「牛肉でつくる青椒肉絲」
人長:ちょっと特別バージョンで、ちょっと変わった青椒牛肉絲(チンジャオニウロウスー)を作ります。私のオリジナル青椒肉絲です。
──オイオイ、なんすかー!
人長:これは牛のランプ肉なんですけど。牛さんの、この部分ですね。
──お尻。
人長:そんなにサシは入っていない赤身だけど、牛の中でも柔らかい部分。青椒肉絲の味付けにすごく合うんです。霜降りのナントカ肉とかだと、肉の脂がくどくて食べづらくなるので。青椒肉絲はピーマンシャキシャキの料理なんだけど、こっちはお肉を楽しむアレンジです。
──お肉がメインの青椒(牛)肉絲と。お肉は何g?
人長:427gでした。427。僕の誕生日と同じです。ちなみにこれ、800円くらいでした。
──生肉を使った遠近法の小顔効果です。
人長:お肉に塩コショウをしましょう。高い位置からやると均一に振れるのでおすすめです。
──肉に近いところから振るとカタマリで落ちたりしますからね。
人長:塩をまんべんなく振るなら、こういうやり方でもいいです(笑)。
──イケメンマッチョなトルコ人シェフスタイルですね。
人長::ブラックペッパーしてまーす。
──けっこうガリガリーといきますね。
人長:ブラックペッパー、好きなんですよ。
人長:これで焼きます。
──手順としては肉と野菜どっちを先に。
人長:先にお肉を焼いて、野菜を切って焼いてる間に少し寝かせておきましょう。なぜならMedium Rareにしようと思っているので。
──なぜか「ミディアムレア」と英語の発音で言っております。
人長:まずは油を。大さじ1くらい。
人長:ウチのお店だと鉄板があるんで。普段は裏表250℃で焼いてミディアムレアにしたものを切って、最後に中華鍋でバーっと焼いて仕上げて、というやり方をしているんです。黒毛和牛とかをそうして、お野菜と一緒に中華のソースで食べるみたいなのをやっています。
──(息を呑む音)……なにそれ、うまそう。
人長:フライパンはちゃんと熱してあげてください。
(ジュウー)
人長:ステーキは余計なことしない。いじくり回さない。
──強火です。焼く時間は肉の厚さで変わってきますよ。
人長::大事なのは冷蔵庫から出して常温にしておくことです。家庭でも、というか、お店でもそうですね。やはりね、きれいに焼けるんですよ。『メシ通』を読んでいる方はもうご存知かと思いますけど。
──……(なにか言いたそうなライター・鷲谷)。
人長:いま2分。ひっくり返します。
(ジュウー)
──いい色ですね! これは一応時間は計ってますけど、あまり気にしないで様子を見ながら焼くって感じですか。
人長:肉が焼けるのを眺めながらってのがいいんじゃないですか。ステーキのいいところってそこじゃないですか。
人長:肉と対峙してるんですよ。今、お前はどんな感じなんだと。見て、触って、肉を感じるんですよ。肉がね、「いま俺はここまで火が通っているぞ、いまが俺のピークだぞ」と語っているのを感じるんです。肉と心で対話するんです。肉と。対話。マジで肉と心が。
──肉とコミュニケーションをとるわけですね。人長さん、ヤベえ目つきしてますね。
人長:これで1分ですね。触って確認。たぶん中はレアですね。
人長:これをアルミホイルでくるんで保温しておきます。
人長:あとはさっきと同じ手順で、野菜だけの青椒肉絲を作ります。
人長:お皿に一度盛りましてー。
人長:さきほどのお肉。チラリ。
人長: 野菜を青椒肉絲に調理している間に、余熱で火が入ってます。
──断面が、ああっ! いい!
人長:中身、レアくらいなんです。あえて薄めに切っています。
──これもさっきの、切ってはバタンと倒す方法で、薄く切れるんですね。
人長:お肉で、野菜を隠してやって。
人長:最後に仕上げの火入れをしますよ。
──おおっ、それは⁉
人長:エーーーックス!
──エックスじゃねえよ。
人長:Yeaaaaaah!!!!!!!!!!!!!!!!
──ヒャッハーーー!
※ご自宅では決して真似をしないでください
──悪党ですねえ!
人長:下の野菜を濃い目の味付けにして、お肉と絡めて食べてください。
人長:ご家庭でバーナー仕上げできる人はステーキはレアめで焼いてみてください。できない人はフライパンでお肉をもうちょっと焼いちゃってください。
──これを機に、自宅調理用にバーナーを買ってもいいかもしれないですね。ていうか、そのバーナーいいですね。点火消火が同じトリガーでカチカチってできる。ウチのバーナーも買い替えたいです。
いただきますの時間
人長:いただきまーす。
人長:ご飯にワンバンしますね。
人長:これは……うまいよ!
人長:青椒肉絲を食べたい人って、お店に来る前から「今日は青椒肉絲を食べるぞー」って決めて来るんでしょうね。お店でも、メニューも見ないで「青椒肉絲で」って注文される方、多いですよ。
人長:次はこのステーキ青椒牛肉絲いきます。香りがね、ブラックペッパーを効かせているので、さっきとは違った感じが。
人長:こうグッと、ガッと。このピーマンをつかんで。
人長:肉で巻いちゃう。このまま、このままっすよ。
人長:ウムーーー! うまいすよっ、これ。うまい。
──すっかり「うまいしか言わない人」みたいになってしまいました。
人長:食べてみます?
──そんなね、いくらおいしいからってリアクションが大げさ……うまいー(泣)。ご飯が合ーう。
人長:味もちょうどいいでしょ。タレを半分でやめて正解だったでしょ。
──うんうん! そしてピーマンパリッパリでうまい、うーまい。豚肉がチャンされているからか、うまさにまったく隙がないす。青椒肉絲って肉の存在感が消えがちですけど、これはすごい、うまーい。
人長:次はステーキの方を食べてみてください。
──いうてもですね、こんな見た目重視で基本を外したものが、うまいわけがうまい!
人長:ねえねえ、噛めば噛むほどお肉がおいしいでしょ。
──わはははは、おいしい! 肉が完璧で、シャキパリのピーマンの歯ごたえが。味が。テイストが。
めでたしめでたし。
人長さんの作ったプロの青椒肉絲が食べたくなったら
旨辛料理のプロフェッショナル・人長さんの作った青椒肉絲を試してみたかったら、新日本橋にある中華料理店、リバヨンアタックへ行ってみてください。
シャキシャキのピーマンと、旨味たっぷりの豚肉との完璧なハーモニー。四川料理のスゴい調理人・人長さんの技術が光る、リバヨンアタック自慢の逸品です。
あまりにも忙しいタイミングとかでなければ、「メシ通、読んでます!」とひと言お店の人に声をかけてくれたら、テーブルまで挨拶しにきてくれるかもしれませんよ。
撮影:平山訓生
お店情報
リバヨンアタック
住所:東京都中央区日本橋室町3-4-4 OVOL日本橋ビルB1F
電話番号:03-3548-0840
営業時間:ランチ/月曜日〜土曜日11:30~15:00(14:30 LO)、祝日11:30~14:30(14:00 LO)
ディナー/平日17:30~翌0:30※金曜日のみ翌1:00まで(23:00 FLO/24:00 DLO)、土曜日17:30〜翌0:00(23:00 FLO/23:30 DLO)、祝日17:30〜22:00(21:00 FLO/21:30 DLO)
定休日:日曜日(20名様以上のご予約の場合は、営業させて頂きます)