「生協で“単位”が買えるなんて」――この1月、首都圏の大学生協で期間限定販売された「単位パン」(税込108円)が、大きな話題を巻き起こした。「単位」という焼き印がくっきりと押された円形のクリームパンで、「単位を売ってほしい」という大学生ならではの要望に、生協が全力で応えた商品だ。
大学生協のTwitterをきっかけに話題に火が付き、テレビや新聞、Web媒体などの取材が殺到。店舗では連日、売り切れが続出し、2週間で3万個を売る大ヒット商品となった。「食べ物関係で、こんなに反響があった商品は初めて」――単位パンの企画を主導した、大学生協東京事業連合の居藤治さんは驚く。
実現への道のりは平坦ではなかった。製造を打診したパンメーカーに断られ、一度はあきらめたこともある。
「学生さんは単位をほしがるから、“単位パン”はどうだろう」――単位パンの企画が浮かんだのは昨年の夏前ごろ。大学生協の店長や事業連合の担当者が集まる商品会議で、冬に向けたパンの新商品について議論していた時だった。
期末の大学生にとって、のどから手が出るほど欲しい「単位」。学生が生協に要望を届けるアンケート用紙「ひとことカード」にも「単位を売ってください」という質問が、期末の風物詩のように投稿される。「単位パン」は面白いのでは――会議で盛り上がったという。
このほかにも、ドラえもんのひみつ道具として知られる「アンキパン」や、「優」「良」「可」が印字されたパンなどさまざまな提案があったが、単位パンの議論が最も盛り上がったため、具体的な商品化の検討に入った。
大学生協はこれまで、パンやおにぎりなどさまざまなオリジナル商品を展開しているが、「単位パン」のような、いわば“ネタ商品”に挑戦するのは初。実現は一筋縄ではいかなかった。
「単位」の焼き印を入れたパンを作ってもらえないか――居藤さんは付き合いのある菓子パンメーカーに打診したが、断られてしまったという。そもそも大学生協のパンを扱いたがるメーカーは少ない。土日や長期休暇中は出荷数が制限され、工場の稼働にムラができてしまうことをメーカーが嫌うためだ。
さらに「単位パン」は、焼き印を押すための設備や人員を余計に割く必要がある上、まったく新しい企画で出荷数が分からず、採算の見えない仕事。引き受けてくれるメーカーはなかなか見つからなかった。
「作ってくれるメーカーが見つからない」――居藤さんが商品会議でそう報告すると、商品化を期待していたメンバーは「しょぼーん、となった」という。だが「これだけ盛り上がった企画、なんとか商品化したい」と手段を考え続け、煙草を一服していた時にふと思い立った。「小菅製パンさんはどうだろう」。
小菅製パンは学校給食のパンを製造しているメーカーで、サンドイッチの取り引きで付き合いがあった。当初は候補として思いつかなかったが、一縷の望みをかけて相談することにした。
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