創作に励む野﨑千愛季さん=松江市内
創作に励む野﨑千愛季さん=松江市内
美術工芸甲子園で大賞に輝いた野﨑さんの「姫」
美術工芸甲子園で大賞に輝いた野﨑さんの「姫」
創作に励む野﨑千愛季さん=松江市内
創作に励む野﨑千愛季さん=松江市内
顔の筋肉や装飾品に至るまで作り込んだ
顔の筋肉や装飾品に至るまで作り込んだ
創作に励む野﨑千愛季さん=松江市内
美術工芸甲子園で大賞に輝いた野﨑さんの「姫」
創作に励む野﨑千愛季さん=松江市内
顔の筋肉や装飾品に至るまで作り込んだ

 本物の人間と見まがうような人形を作り続ける宍道高校通信制3年の野﨑千愛季さん(17)の作品「姫」が、全国の高校生が出品する「美術工芸甲子園」で最高の大賞に山陰両県の高校生で初めて輝いた。粘土で顔の筋肉や歯の一本一本を作り込み、衣装も一から自作。1日に10時間以上、制作に向き合う中で磨かれた技術が、工芸の専門家たちから高い評価を受けた。 (白築昂)

 「ダントツの完成度」「高校生離れ」-。京都伝統工芸館(京都市)の展示会場でひときわ異彩を放つ高さ約70センチの「姫」に審査員から驚きの声が漏れた。

【写真】他の作品も 「滅び」や「はかなさ」がテーマ、鎌倉殿の13人を参考に

 作品イメージは「強く美しい姫」。乾燥した土地の草原、砂ぼこりが舞う中でたたずむ様子、といった断片的なイメージから物語を膨らませた。9月初めから1カ月かけて制作。針金や新聞紙で作った体に石粉粘土を盛り込んで着色し、肌の質感を再現した。石見神楽衣装の残り布や祖父のネクタイを解体してつないだ衣服は、スマートフォン用の画像検索用アプリで「民族衣装」といったキーワードを調べ自作した。

 美術工芸甲子園は、次世代を担う工芸作家の発掘・育成を目的にした国内で数少ない公募展で、一般財団法人・京都伝統工芸産業支援センターが主催し14回目。竹・木工、木彫刻や金属工芸、陶芸、絵画など72点が寄せられる中、野﨑さんはただ一人、人形を出品した。

 審査員を務めた京都伝統工芸大学校の工藤良健教授は「正直、作品を見て驚いた。一見すると既製品を用いたのかと疑ってしまうほどレベルが高い。世界観を含め、審査員の中で話題になっていた」と評価する。

 野﨑さんにとっても「妥協せず納得いくものが作れた」という自信作。公募展への出品が創作目的ではないものの、今後も機会があれば挑戦するといい、19日に松江市袖師町の島根県立美術館で始まる県総合美術展に人形2体を出品する。「これからも作りたいものを作り続けていく」と、一心不乱に手を動かし続ける。