「海に眠るダイヤモンド」がスルーした軍艦島もう一つの過酷 「働きます」と言うまで殴られた朝鮮人労働者

2024年12月24日 06時00分 有料会員限定記事
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 長崎市の端島(はしま、通称・軍艦島)が「明治日本の産業革命遺産」の一つとして世界文化遺産に登録されて来年で10年。今年はテレビドラマの舞台にもなり、かつての過酷な炭鉱労働や廃虚化に伴う保全が注目されたが、戦時動員された朝鮮人労働者の存在は伝わっていない。日本が朝鮮を植民地としていた時代、端島の朝鮮人たちはどう暮らしていたのか。知られざる歴史の断片を追った。(西田直晃、太田理英子)

◆来島者増加、「最近は若者が目立つ」

 長崎港から南西に約18.5キロの海上に浮かぶ端島。東京ドーム1.3個分の人工島に最盛期は5300人が暮らし、1974年の閉山まで最高級の炭を産出していた。2015年には端島を含む8カ所が「明治日本の産業革命遺産」として世界遺産に登録された。

長崎市の端島(通称・軍艦島)の全景

 長崎市世界遺産室によると、11月末時点の年間来島者が19万人に達し、すでに昨年1年間の数字を上回ったという。「年を追うごとに認知度が高まり、特に最近は若者が目立っている」と担当者。10月から島を舞台にしたドラマが始まり、遺構の保存に焦点を当てた特集も展開された。
 一方、炭鉱で働く朝鮮人の存在が注目される機会はあまりない。NPO法人長崎人権平和資料館の新海智広さん(68)は「日本人労働者に比べ、敗戦までに強制動員された朝鮮人は非常に劣悪な労働・生活環境に置かれていた。その伝承が全く不十分だ」と声を落とす。

◆集団での連行開始後、より劣悪に

 長崎駅近くにある資料館は1995年に開館。市民団体「長崎在日朝鮮人の人権を守る会」の戦後の調査をもとに、朝鮮人被爆者や強制労働の実態、日本のアジアに対する加害行為に関する資料を展示し、敗戦時に500〜800人の朝鮮人がいたとされる端島の内情も紹介している。

長崎市の端島(通称・軍艦島)に残る建物

 朝鮮人労働者はどんな扱いを受けたのか。新海さんによると、1910年の韓国併合以降、1939年の日本政府の労務動員計画策定以降という2つの時代区分で、どちらの時期に日本に来たかで大きく異なる。
 新海さんは「植民地化しており、日本人よりも劣位に置かれた点では同じ」と前置きし、「日本語を学んだり、炭鉱労働者としての技量を高めたりする時間があった前者と比べ、集団で連行された後者は過酷な労働を強いられた。住まいについても『極度に日当たりが悪く、湿気の多い低層に追いやられ、みじめな状況だった』と戦後に回想した日本人男性がいる」と説明する。

◆「仕事を休もうものならリンチが」

 展示資料には、14歳で朝鮮半島から徴用され、炭鉱労働に従事した徐正雨(ソジョンウ)さん(故人)の証言もある。
 「朝鮮人は、1人1畳にも満たない部屋に7、8人一緒でした。到着の翌日から働かされました。日本刀をさげた者、さげない者があれこれと命令しました」
 「下痢をして、激しく衰弱しました。それでも仕事を休もうものなら、リンチを受けました。どんなにきつくても『はい、働きに行きます』と言うまで殴られました」

◆戦後も経営が続いていた「遊郭」

長崎市の平和祈念像

 資料館によると、長崎県では被爆した朝鮮人も約2万人と推計され、徐さんも島外に出た後に長崎市内で被爆した。理事長の崎山昇さん(66)は「海外の人々は戦前の日本をよく知っている。しかし、日本の特に若い世代は、日本は戦争の被害者という認識を持つ一方、加害者としての意識が希薄だ。アジアの人々との信頼関係を築くため、植民地化や戦時の加害行為の事実を伝えたい」と資料館の意義を語る。
 端島には、さらに知られざる歴史がある。戦時中に炭鉱労働者らを相手とする性的施設で...

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