家康と七人の忍び

  • 家康と七人の忍び 第27回 佐藤賢一

     「だから、 平 ( へい ) 八 ( はち ) 郎 ( ろう ) 、それは考えすぎだろう。仮に殿の命を奪いたいのだとして、さすがの 右 ( う ) 府 ( ふ ) 様もそれを 安 ( あ ) 土 ( づち ) でやりは…
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  • 家康と七人の忍び 第26回 佐藤賢一

     いうまでもなく、 信 ( のぶ ) 長 ( なが ) の怒りを買ってのことだとされるが、 数 ( かず ) 正 ( まさ ) がいうのも、 忠 ( ただ ) 次 ( つぐ ) が 頷 ( うなず ) いているのも、恐ら…
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  • 家康と七人の忍び 第25回 佐藤賢一

    五月二十日、 戌 ( いぬ ) の刻 「いやはや、もう腹いっぱいじゃ」  宿舎の 大 ( だい ) 宝 ( ほう ) 坊 ( ぼう ) に戻るや、 家 ( いえ ) 康 ( やす ) は吐き出した。  「 高 ( こう…
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  • 家康と七人の忍び 第24回 佐藤賢一

     何を探り当てようと、 畢 ( ひっ ) 竟 ( きょう ) それを止める 術 ( すべ ) がないなら意味がない。忍びとして、ときに無力に感じてしまうほどだ。  「 明 ( あけ ) 智 ( ち ) 日向 ( ひゅうが…
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  • 家康と七人の忍び 第23回 佐藤賢一

     「なに、この二月から 右 ( う ) 府 ( ふ ) 様は 甲 ( こう ) 州 ( しゅう ) 征伐であったろう。とうとう 武 ( たけ ) 田 ( だ ) を滅ぼされて、そのあとの四月のことじゃ。 安 ( あ )…
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  • 家康と七人の忍び 第22回 佐藤賢一

     「して」  と報告を促したのは、その 徳 ( とく ) 川 ( がわ ) 家 ( いえ ) 康 ( やす ) だった。  すっかり旅装束を整えて、事実、五月十二日の朝に 平 ( へい ) 太夫 ( だゆう ) が 浜…
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  • 家康と七人の忍び 第20回 佐藤賢一

     ここから 伊 ( い ) 賀 ( が ) に抜けるためには、その前に南 近江 ( おうみ ) の 甲 ( こう ) 賀 ( か ) に入らなければならなかった。 甲賀も忍びで知られた土地だ。その腕を買われて、誰にでも雇…
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  • 家康と七人の忍び 第19回 佐藤賢一

     ──いや、やはり人だ。   微 ( かす ) かな吐息が聞こえた気がした。走ってきたのだ。どれだけの修業を積んだ者でも、いくらかは息が乱れざるをえない。  ということは、何者かが後をつけてきた。 東 ( とう ) 山…
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  • 家康と七人の忍び 第18回 佐藤賢一

     「よし」   観音 ( かんのん ) 寺 ( じ ) 城の石段を下りてしまうと、 茂 ( しげ ) 三 ( みつ ) は走り出した。道を右に折れて、 東 ( とう ) 山 ( さん ) 道 ( どう ) を南に向かって…
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  • 家康と七人の忍び 第17回 佐藤賢一

     すっかり読めなくしてしまってから、 茂 ( しげ ) 三 ( みつ ) は山を下りた。 観音 ( かんのん ) 寺 ( じ ) 城は石段が残っているので、山の夜道もさほど難儀するわけではない。歩き、歩き、それでも 溜…
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  • 家康と七人の忍び 第16回 佐藤賢一

      織 ( お ) 田 ( だ ) 右 ( う ) 府 ( ふ ) のことだろう。  一種の暗号だが、何のことはない。「いろはにほへと」の四十八字を、縦七、横七のマスに 嵌 ( は ) めて、縦横二つの数でこの字と特定で…
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  • 家康と七人の忍び 第15回 佐藤賢一

     ──始まるぞ。   茂 ( しげ ) 三 ( みつ ) は今度は石筆を構えた。柔らかい石を筆状に割り 拵 ( こしら ) えたものだが、これで白い線を書ける。   彼方 ( かなた ) の 安 ( あ ) 土 ( づち…
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  • 家康と七人の忍び 第14回 佐藤賢一

    五月十一日、 亥 ( い ) の下刻   安 ( あ ) 土 ( づち ) 城がみえる。まず安土山が 聳 ( そび ) え立ち、その頂からスッと伸びて、城の 天 ( てん ) 主 ( しゅ ) がくっきりと影をなしている…
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  • 家康と七人の忍び 第13回 佐藤賢一

     ──さて。   山 ( やま ) 一 ( いち ) は立ち上がった。馬も出払ったようだし、そろそろ行くか。  馬鹿でも煙でもなし、別に高いところが好きなわけではない。が、山一は今いちど 天 ( てん ) 主 ( しゅ…
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  • 家康と七人の忍び 第12回 佐藤賢一

     来られるわけがない。 天 ( てん ) 主 ( しゅ ) だか何だか知らんが、こんな棒みたいに天地に長い建物を造るのでは、階段が狭くならざるをえない。大勢が一気に下りてこようとすれば、肩と肩がぶつかって、押し合うほどに…
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  • 家康と七人の忍び 第11回 佐藤賢一

     ──本気かよ。  若侍は跳んだ。目指したのが二階の能舞台で、 山 ( やま ) 一 ( いち ) と同じようにやれば、自分も降りられると考えたのだろう。うまく 手 ( て ) 摺 ( す ) りに足をついたが、いけると…
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  • 家康と七人の忍び 第10回 佐藤賢一

     「飛びおった」 と、声が上がった。 「自死か」  との言葉も背中に届いた。どよめきを置きざりに、 山 ( やま ) 一 ( いち ) の心はといえば、 微 ( み ) 塵 ( じん ) の 昂 ( たか ) ぶりもなか…
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  • 家康と七人の忍び 第9回 佐藤賢一

     ──もとより、 織 ( お ) 田 ( だ ) 右 ( う ) 府 ( ふ ) は忍びを飼わない。   安 ( あ ) 土 ( づち ) であれ、岐阜であれ、織田の城は 容 ( た ) 易 ( やす ) く入れると、忍…
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  • 家康と七人の忍び 第8回 佐藤賢一

      山 ( やま ) 一 ( いち ) は 廻 ( まわ ) り縁の廊下を走った。が、ぐるり回ってみようにも、どの面でもザッ、ザッ、ザッと 襖 ( ふすま ) が横滑りして、奥から新たな 追 ( おっ ) 手 ( て )…
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