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楽しみにしていた旅行を、一緒に行くはずだった友人にドタキャンされて泣く泣く取りやめた経験はありませんか? 読売新聞が運営する掲示板サイト「発言小町」に、「友達の都合で旅行がキャンセルになった」と題する投稿が寄せられました。「航空券2人分のキャンセル料を友人に全額払ってほしい」と訴えるトピ主。このような場合、キャンセル料の負担はどうなるのでしょうか。弁護士の古藤由佳さんに聞きました。
「キャンセル料は全額支払ってほしい」
トピ主の「はし」さんは、友人と旅行を予定していましたが、その友人から「仕事が入ってしまったため行けない」と告げられました。旅行を取りやめると、飛行機のキャンセル代が2万5000円くらいかかりそうです。
トピ主さんは「これが突然の訃報や自然災害であれば許せます」としたうえで、「いくら仕事とはいえ、相手都合のキャンセルなので、キャンセル料は(トピ主さんの分も)全額相手に支払ってほしい」と主張します。
友人の仕事の都合に合わせるため、3日間の有給休暇を取っていたトピ主さん。「平日出勤の私にとって、平日3日連続の休みはそう簡単に取れるものではありません。キャンセル料を支払うと相手から申し出がなければ、この友達と今後旅行に行くのはやめようと思っています。私の価値観はおかしいのでしょうか」と発言小町に問いかけました。
このトピには、2000回以上のエールボタンが押されました。
自分に生じたキャンセル料の全額を友人に負担してほしいと考えるトピ主さんに賛同するのは「暇蝦」さん。「キャンセル料は当然ですが、(友人に)全額負担させましょう。本人に言ってもダメなら、あらゆるつて(知っている限りの共通の知人、友人や職場関係、可能なら親も)を使って回収しましょう」
「りほりほ」さんも、「不幸とかでなく、調整できる仕事でダメになったらショックだよ……アラサーの私でも急にこんなことをされたら、『じゃあ1人で行くね』と切り替えられる自信ないわ。旅行は行くのも行かないのも自由だと思うけど、キャンセル料は全額請求」とトピ主さんの肩を持ちます。
他の友人に声をかけてみて、誘い出せなかった場合には、行けなくなった友人に全額請求していいと主張するのは「さくらなみき」さん。「私ならせっかくだし友達か親を誘って旅行に行くかも。誘える人がいないとか、1人に変更するにも手間がかかるならキャンセル料を全額払ってもらいます」
一方で、全額は請求できないと指摘するのは、「いいかげんに」さんです。「1人で行けるのに行かないトピ主さんに、キャンセル料を請求する資格はないと思う」と手厳しいコメントを放ちました。「みそら」さんも、「友人のキャンセル料は本人に払わせるとして、トピ主さんは1人で旅行すればよかったと思う」との見解です。
「キャンセルはしない」さんは、「請求をしてみてもいいとは思いますが、払いますかね、その人。もし、『私は行けなくなったと言っただけで、あなたもキャンセルしてとは言っていない』と言われたら、それ以上何も言えませんよね」と語り、全額請求は現実的に難しいのではないかとの認識を示しました。
友人に支払いの義務は発生しない
トピ主さんは、自身のキャンセル料まで全額友人に支払うよう求めることができるのでしょうか。弁護士の古藤由佳さん( 弁護士法人・響 )は、「事前にトピ主さんと友人の間にキャンセル料についての合意がなかったのであれば、友人がトピ主さんのキャンセル料を支払うべき義務が当然に生じるわけではありません」と説明します。よって、トピ主さんと友人は、自分のキャンセル料をそれぞれ支払うことになります。
また、トピ主さんが一人旅に切り替えて、旅行代金や宿泊料金などに加算料金が発生した場合にも、友人はトピ主さんに生じた損失を賠償する義務はないといいます。
「もし、トピ主さんが友人に何か請求できるとしたら、『不当利得返還請求』または『不法行為に基づく損害賠償請求』となります。しかし、今回の旅行のキャンセルによって友人に何らかの利益が生じたとは考えられないため、不当利得返還請求はできません。また、友人の故意または過失によってトピ主さんに損害が生じた場合は、損害賠償が求められますが、今回のケースは、友人がわざと仕事を入れたわけではないと思うので、故意は認められません」と古藤さん。
ただし、友人がずいぶん前から仕事の予定が入っていたにもかかわらず、スケジュール確認を怠って航空券の予約を入れてしまい、直前になって仕事の予定に気づいてキャンセルを申し出た場合などには、賠償請求ができる余地があるかもしれないそうです。
このようなトラブルを起こさないためには、「どちらか一方の都合でキャンセルになった場合、キャンセル料はその人が全額支払う」といった取り決めを事前にしておくことが必要です。「そうした取り決めは、旅行に際して生じる、あるいは生じるかもしれない費用負担に関する合意であり、一種の契約になります。必ず書面で合意しなければ効力が生じないというものではないので、口頭での約束でも有効ですが、後でその内容を証明できるように、LINEやメールなどでやり取りをして残しておくことをおすすめします」と古藤さんは話しています。
キャンセル料の支払いを巡るトラブルは、航空券だけでなく、宿泊施設や飲食店などの予約キャンセルの際にも起こり得ます。楽しい時間を過ごす前には悪いことは考えたくないものですが、“もしも”の事態を想定して、対策を取っておくことが大切なようです。
(読売新聞メディア局 長縄由実)
【紹介したトピ】
▽友達の都合で旅行がキャンセルになった