PMSや月経痛で仕事つらい…女性の健康課題を職場でシェアするために
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月経不順や更年期症状などの健康上の悩みを抱えていても、「個人の問題だから」と心の内にしまい込んでしまう女性は少なくないでしょう。でも、働き続ける女性が増えて、社会で女性がいっそう活躍することが期待される時代となり、こうした悩みを抱える女性のため、「女性の健康」をテーマにしたセミナーを開催する自治体や企業が増えています。全国各地でセミナーを開いている大塚製薬(本社・東京)の担当者に、その狙いを聞きました。
大塚製薬では、2014年に女性向け製品を発売したことをきっかけに、「もっと多くの人に女性の健康問題に目を向けてほしい」とセミナー活動を始め、2016年からは「女性の健康推進プロジェクト」と名称を改めました。現在、年間100回から150回のペースで「女性の健康」セミナーを全国各地で開催しています。
上司や経営者も参加

「女性の健康経営」のアドバイザーとして、企業向けセミナーに登壇している小野田敦子さん(同社ニュートラシューティカルズ事業部・女性の健康推進プロジェクト課長)は、薬剤師の資格を持ち、女性の健康をサポートする成分の研究に10年以上にわたって従事してきました。
「疲労感、集中力の低下を招く月経痛やPMS(月経前症候群)、更年期症状などは、女性特有の健康課題ですが、生産性やパフォーマンスの低下にもつながってしまうので、企業の経営課題と言うべき問題なのです。企業側も『女性たちが心地よく働き続け、能力を発揮するために、何ができるか知りたい』とセミナーの開催を打診してくるケースが増えています」と話します。
女性社員はもちろん、その上司や経営者がセミナーを受講することも増えてきたといいます。

「まずは上司や経営者が女性の健康課題を認識することが大切です。女性にとっても、周囲の理解が深まり認識が変わると、不調を抱えたときに相談しやすいですし、少し大変そうに見えたら周囲も『どう? 何か代われることある?』と声をかけやすくなります。かける言葉も違ってくるでしょう」と小野田さん。
セミナーでは、特定の誰かの問題ではなく、自分自身の身近な問題として“自分ごと化”してもらい、また、わが社の問題として“企業ごと化”してもらえるように、具体的な数値などを引用しながら話すことが多いそうです。
「かかりつけ医がいる」女性は半数以下
女性の健康推進プロジェクトが今年4月、全国の4000人の女性を対象に実施した調査では、女性特有の不調や症状にどのように対処しているかを尋ねたところ、約6割が「医療機関などを利用していない」と答えていました。「かかりつけの婦人科医がいる」と答えた人は半数に満たず、20歳~34歳では約5割、35歳~59歳では約6割が「いない」と回答しました。
「若年層のPMSも中高年の更年期症状も、人によって程度の差はあるでしょうが、セルフケアをしているから大丈夫と考えている人が多いのではないでしょうか。もちろん自身での対処も大事なのですが、婦人科で健診を受けて自分の状態を知ることや、自分の状態をかかりつけ医に相談することなどは、自分の健康を守る意味で、とても大切な要素なのです。『知ること』『相談すること』によって健康に関する情報や対処法もアップデートされ、好循環が生まれるはずです。ですから私たちは、婦人科健診やかかりつけ医への相談も含めた『新・セルフケア』を提唱しています」

日本人女性は控えめで、仕事や家族の問題を優先させて、自分の健康問題を二の次に考えがちだと小野田さんは指摘します。「優先順位を見直して、自分のための時間を作ってほしいですし、定期的に通えるような専門医を持ってほしい。女性たちが10年後、20年後に『自分の不調を我慢するのが当たり前なんて、当時は遅れていたんだね』と振り返ることができるようになればと思います」
(読売新聞メディア局 永原香代子)
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大塚製薬の女性の健康推進プロジェクト