「カーネーション」 
第９回～第２週 「運命を開く」

 

 

おはようございます。

うちはもうすっかり大人やさかい、

バチッと早起きして、妹達の布団かて、

全部上げちゃります。

 

糸子）　はあ～遅刻ちゃうっちゅうんは

　ええもんやなあ～。

（前を行く奈津を小走りで追いこす糸子）

（追い越された奈津が追い返す）

（抜きつ抜かれつ歩く糸子と奈津）

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

＜女学校＞

一同）　♪アアアア アアアアア

教師）　そうそう。

一同）　♪アアアア アアアアア

教師）　もっとしっかり！

一同）　♪アアアア アアアアア

教師）　いいですよ。

一同）　♪アアアア アアアアア

 

ああ…うちはもう大人やのに、何で

こんなとこで歌うてなあかんのやろ。

はよパッチ屋行きたいなあ。

 

（あくびをしている糸子）

教師）　小原さん！

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

＜夜・吉田屋＞

克一）　小原さんとこですか？

神宮司）　何や？

克一）　まあ、こない言うたらあれやけど、

　あっこの呉服屋、大した事ないですわ。

　このごろは品揃えもえらい悪いし、

　やっぱり、着物は、心斎橋辺りのお店

　の方がよっぽどええもん揃えてますわ。

神宮司）　まあ、そやけどな、これまでの

　つきあいちゅうもんもあるさかいのう。

克一）　ほう！ まあ、旦那さんみたいな

　懐深い、お人はそない思うんですやろ

　なあ。わしらみたいな器のこんまいも

　んは、あんな店で買いもんしたらもう、

　損した気ぃになりますわ。

　アッハハハハ…。

（廊下で話を聞いている善作）

善作）　（笑顔を作り）こんばんは～。

　小原でございます～。

神宮司）　おう、来た来た！

善作）　こんばんは、呼んでもらたのに、

　遅うなりましてえらいすんまへん。

克一）　ようお越し！ さあ、どうぞどうぞ。

神宮司）　ああ、そこ、そこや。

善作）　ほな、失礼します。

　いや～今日は縁起がよろしいわ。

　神宮寺の旦那のお座敷に呼ばれる

　やらもう、空からね、紅白の餅が、

　降ってくんのちゃうかとか言うてる

　みたいな。

克一）　どうぞどうぞごゆっくり。

　お料理すぐ持ってきます。

（神宮寺の前に座る善作）

善作）　あっ、えらいすんまへん。

神宮司）　いや～

　呼び出したんはほかでもないんや。

　実はな、うちの娘、いてるやろ？

善作）　はあ！ あの別嬪はん、

　どないぞしましたか？

神宮司）　あれの縁談がな、

　急に決まったんや。

善作）　ありゃ！？ 

　それは、おめでとうございます！

神宮司）　ほんでな。

善作）　はあ。

神宮司）　揃えちゃあってほしいんや。

善作）　嫁入り支度でっか？

神宮司）　うん！ 振り袖と訪問着、あと、

　向こうで着るもん。とにかく嫁入り一式、

　揃えちゃあってくれ。

善作）　へえ…おおきに！

　えらいすんまへん！ 任せて下さい。

　どこへ出しても、恥ずかしない、

　ごっつい上物を、ビシ～ッと揃え

　ますよってに！

神宮司）　ああ、頼むで。

善作）　はい！

神宮司）　アハハハハ！ はあ～これで、

　ちっと気ぃ楽なった。この前、せがれん

　時、悪い事したさかいな～。

善作）　いや、何を言うてはりますねん。

　かなわんな～。そんな事、気にして

　もろてたんですか？

神宮司）　そらそや！

善作）　あないな事、

　大した事おまへんがな。ハハハッ。

神宮司）　そやけどな、あんたとこかて、

　娘４人もいてるやろ？

善作）　へえ…。すんまへん…。

　おおきに…おおきに！

（頭を下げる善作）

 

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（昼、通りを走る静子）

女性）　静ちゃんお使いか？ 偉いな。

静子）　はい！

 

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＜小原家＞

静子）　ただいま。

千代）　お帰り。

静子）　はい、卵。

千代）　おおきに。

静子）　糸子姉ちゃんは？

千代）　糸子？ まだ帰ってへんで。

ハル）　あの子このごろ、

　何であない帰りが遅いのや？

千代）　へえ。何や、学校の勉強が

　遅うまであるそうですわ。

 

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＜家の前の通り＞

糸子）　（♪鼻歌）

静子）　糸子姉ちゃん！

糸子）　ただいま。あんた何してんの？

静子）　姉ちゃん、

　パッチ屋で働いてるって、ほんま？

（静子の口を手で押さえる糸子）

糸子）　誰に聞いたん？

静子）　卵屋のおばちゃんや。

　「変な噂立ってるよって、

　気ぃ付けや」って言われた。

糸子）　変な噂？

静子）　「小原呉服店は、　

　娘働きに出さなあかんほど、

　お金に困ってるらしい」って。

糸子）　はあ？

静子）　ほんまなん？ 姉ちゃん。

糸子）　働いてへん！

　ちょこっと手伝うてるだけや。

静子）　何でパッチ屋なんか手伝うん？

　お父ちゃんに怒られんで。

糸子）　うっさい！

　桝谷パッチ店はええ店や。

　うちは何も悪い事してへんで！

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

＜桝谷パッチ店＞

（笑顔で作業を見ている糸子）

山口）　糸ちゃん。

糸子）　うん？

山口）　大将が呼んでるで。

糸子）　何で？ 何で！？

山口）　いや、さあ…。

糸子）　噂がどうとか言うてた？

山口）　噂？

糸子）　うちは気にしてへんで。

　何も悪い事してへんやし。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

＜帳場＞

さよ）　あ、糸ちゃん！ こっちこっち。

　おとうちゃん、糸ちゃん来たで！

桝谷）　おう来たか。そこ座り。

　お前はあっち行けって。

　気ぃ散んねや。邪魔や。

さよ）　はいはい。ヒッヒッヒッヒッヒ！

桝谷）　あ～あんなあ…。

（桝谷を見る糸子）

桝谷）　何や？

（首を横に振る糸子）

桝谷）　その…あんた今、

　女学校何年やったかな？

糸子）　２年や。

桝谷）　２年か…。

糸子）　うん。

桝谷）　こんな事言うて、

　悪いと、思うんやけどな。

　あんた…。うちへ来えへんか？

糸子）　へっ？

桝谷）　いや、今すぐとちゃうで。

　卒業したらの話やな。

糸子）　つまり、うちに…。

桝谷）　うん。

糸子）　嫁に来いっちゅう事？

（お茶を吹き出す桝谷）

桝谷）　何でやねん！ うちにはあの、

　肥えたおばはんいてるやんけ！

　そやのうて、「うちの店で働けへ

　んか？」っちゅうこっちゃ。

糸子）　えっ！ うち雇てくれるん？

桝谷）　うん。

　あんた、この仕事好きやろ？

糸子）　好きや！ そら好きや！

　そやけど、ええん？

桝谷）　何がや？

糸子）　うち女やで。

桝谷）　かまへん！ 

　男やろうが女やろうが、やる気がある

　んやったら、わしゃそんなん気にせん。

糸子）　働きたい！ うちここで働けたら

　そらそないうれしい事あらへん。うち、

　ミシンかて、桝谷パッチ店かて、

　ごっつい好きなんや！

桝谷）　ハハハハ！ そやな。

糸子）　うん！

桝谷）　よっしゃ！ 

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

＜安岡家・表＞

勘助）　おっ、糸やん。お～い！

　おろっ。何やねん知らん顔すんなや！

（２階の窓から糸子に声をかける勘助）

糸子）　お前かて道で会うたら

　知らん顔するやんか。

勘助）　なあ上がってこいて。

　粟おこしあんで。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

糸子）　こんにちは！

玉枝）　あ～れ糸ちゃん。久しぶりやな。

糸子）　うん。

（奈津の髪を結っている玉枝）

糸子）　あっ…。奈津？ あっ！ あんた、

　おばちゃんに髪結うてもろてんの？

奈津）　そうや。

糸子）　贅沢やな～！

　芸妓さんみたいや。

奈津）　あんたとうちは、

　女としての値打ちがちゃうねん。

　比べんとって。

糸子）　ほうか。

玉枝）　糸ちゃん。

　勘助、２階にいてるで。

糸子）　うん。お邪魔します。

玉枝）　はいよ。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

＜２階の部屋＞

（粟おこしを食べている糸子）

糸子）　女学校、

　やめちゃろか思てんねん。

勘助）　やめる？ 何を？

糸子）　そやから女学校や。

勘助）　女学校やめる？ はあ？何で？

糸子）　働くんや、パッチ屋で。

勘助）　パッチ屋？

　えっ、パッチ屋で働くんけ？

糸子）　うん。

勘助）　ええなあ！

　俺もやめちゃろかな、学校。

糸子）　アホか！ お前は学校ぐらい

　出んでどないすんねん！

勘助）　はあ？

糸子）　おばちゃんがな、

　女手一つで行かせてくれてんや。

　やめたらうちが承知せえへんで！

勘助）　そやな…

　やめたらあかんやんな。

糸子）　何や？

勘助）　えっ？

糸子）　学校で何か、

　嫌な事でもあんのか？

勘助）　えっ？

糸子）　誰かに、いじめられてんか？

勘助）　何でやねん！ 俺がいじめ

　られる訳ないっちゅうねん！

糸子）　ほんまか？

勘助）　ほんまほんま。

糸子）　ふ～ん。言うちょいでよ。

　いつでも仕返ししちゃるさかいな。

勘助）　うん。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

（夕方、奈津が玄関を気に

 しながら座っている）

勘助）　おろっ！

　お前まだおったん？

奈津）　おったら悪いか？

勘助）　悪い事ないけど何してんねん？

奈津）　別に。

勘助）　ふん。

奈津）　あっ！

勘助）　えっ？

奈津）　あんたの兄ちゃん、

　帰り、遅いんけ？

勘助）　兄ちゃん？

奈津）　うん。

勘助）　何で？

奈津）　「何で？」て…

　何ででもええやろ？

泰蔵）　ただいま！

玉枝）　お帰り。

勘助）　お帰り。

芸妓）　はれ、泰蔵ちゃんやんか。

泰蔵）　いらっしゃい。

芸妓）　しばらく見んうちにあんた、

　えらいええ男になって。へえ～。

勘助）　兄ちゃんやで。

奈津）　しっ！ うるさい！ おばちゃん、

　ほんなら失礼します。おおきに。

玉枝）　おおきに。

　お母ちゃんによろしゅうな。

（玄関で草履を履きながら泰蔵を見る奈津）

（泰蔵と目が合い、照れて出ていく奈津）

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

この人は、昔神戸でうちにドレスを見

せてくれた、勇君のお父ちゃんです。

神戸のおじいちゃんは、

大きい紡績会社をやってて、

勇君のおっちゃんも、

そこを手伝うてるんやそうです。

おっちゃんは仕事で、

岸和田へ来る事もようあって、

その際には必ず、ついでにうちを

のぞいていきました。

 

善作）　出かけてくら。

（正一に気付き、逃げる善作）

千代）　えっ？

正一）　こんにちは～！

千代）　あ…お兄様。

 

お父ちゃんは、

おっちゃんが大の苦手です。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
 

桝谷パッチ店の手伝いをして、すっかり大人

になった気になる糸子がかわいい。中の人

は既にとっても大人だけど、一生懸命まだま

だ子どもの女の子を演じているなぁって思う。

泰蔵にいちゃんに恋してる奈津もかわいい。

2度目の視聴なので、彼女たちを待ち受ける

運命を思うと、なかなか感慨深かったりする。

面白い朝ドラは２度目がさらに面白いのよ♪

 

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