「カーネーション」 
第129回～第23週 「まどわせないで」

 

 

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「日々のダダ漏れ」

 

 

＜小原家＞

糸子）　あ、孝ちゃん。

孝枝）　はい。

糸子）　うち明日から、直子の

　ショー見に東京行くのな。

孝枝）　はい。

糸子）　この子も連れていくよって、

　新幹線の切符、２枚取っといて。

孝枝）　分かりました。

里香）　え？ 行かないよ私。

糸子）　何でや？

里香）　大嫌いだしショーとか。

糸子）　あかん！ ええからついて来。

　土産も山ほど持っていかんならんしな。

　荷物持ちかているんや。

里香）　めんどくせ～。

糸子）　小原の家訓は、

　「働かざる者食うべからず」や。

　あんたも仕事せえへんやったら、

　飯食わさへんで。心配せんでも、

　優子は絶対来えへんさかい。

孝枝）　はれ、そうなんですか？

糸子）　うん。あの子らけったいでな、お互

　いのショーは死んでも見よらへんねや。

孝枝）　はあ～骨肉の争いですねえ。

　ハハハ…！

糸子)　まあな。

孝枝）　骨肉の争い。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

＜ファッションショー会場・舞台裏＞

 

昭和60年、日本にも、

ええデザイナーがどんどん出てきました。

デザイナーズ・ブランド・ブームちゅうて、

斎藤源太、吉村君や小沢君、

ついでに、うっとこの３姉妹らの店が、

街中にギュウギュウ並んで、若い子ぉらが、

毎日押し寄せてるそうです。

みんなが自由におしゃれを楽しめる時代。

ほんな中、何でか知らん、

この子は、頑としてジャージしか着ません。

 

ｽﾀｯﾌ）　５分前です！

（モデルを一人一人チェックする直子）

ｽﾀｯﾌ）　こんな感じで大丈夫？

直子）　もっと立てて。

　ラインをまっすぐ。

ｽﾀｯﾌ）　はい。

直子）　もっとてらして。

ｽﾀｯﾌ）　はい。

直子）　シャドーもっと、濃く。

ｽﾀｯﾌ）　はい。

（直子の指示で動くスタッフたち）

（楽しそうに見ている糸子）

（壁に寄りかかり、ガムを噛んでいる里香）

ｽﾀｯﾌ）　まもなくです！

（モニター画面でショーを見る糸子）

（目を閉じ、深呼吸をする直子）　

（ショーが始まり、

 モデルの登場に微笑む糸子）

（ショーを見つめる里香）

ｽﾀｯﾌ）　はい、行きましょう。どうぞ。

ｽﾀｯﾌ）　はい行きましょう、どうぞ。

ｽﾀｯﾌ）　はい行きましょう、どうぞ。

ｽﾀｯﾌ）　はい行きましょう、どうぞ。

（モニター画面を見つめる糸子と里香）

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

＜打ち上げパーティ＞

大輔）　ショーの成功を祝って、乾杯！

一同）　乾杯！

（拍手）

ｼﾞｮﾆｰ）　おめでとう！ おめでとう！

ナナコ）　わあ、ジョニー！

ｼﾞｮﾆｰ）　当然だよ。

直子）　ありがとう。

ｼﾞｮﾆｰ）　ナナコ久々。今日もきれいだね。

ナナコ）　ありがとう。

ｼﾞｮﾆｰ）　本当にきれいだね。

　今度ごはん行こうよ。

ナナコ）　ごはん？

直子）　今その話は…。

ｼﾞｮﾆｰ）　ＯＫ！ 写真ね。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

糸子）　やっぱし、楽しいな～ショーは。

　まさにだんじりや。なあ！

修平）　おばあちゃん！

糸子）　あ～修ちゃん。顔見せてみ。

　こらまた、一段と、

　男前になったんちゃうけ？

直子）　里香？ やっぱし里香やんか。

　どこのクソガキが紛れ込んだんか

　思たわ。あんた何や？ この頭。

　何でジャージなん？

里香）　関係ないじゃん。

直子）　グレてんけ？

　まあな、かまへんわ。けどええか。

　ジャージーて決めたんやったら、

　ジャージーや。絶対に中途半端に

　脱いだらあかんで。分かったか？

里香）　はあ？

直子）　まあ、うちもセーラー服

　ばっかし着てあんたのお母ち

　ゃんに笑われたもんや。

糸子）　直子、そろそろうちら次行くで。

直子）　次？ どこ行くん？

糸子）　ディズニーランド。

直子）　はあ？ 今から？ とりあえず

　いっぺんホテル帰って休みよ。

里香）　いやばあちゃん、私ももう眠いし。

糸子）　あかん！ まだ５時や。今から

　ホテルなんて帰ってどないすんねん。

　行くで～！

直子）　ええ？ ちょっとお母ちゃん！

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

＜小原家＞

 

３日ほど、

昼間の東京を連れ回したら。

里香はあっさり夜寝るようになりました。

 

糸子）　里香、起きや！ 朝やで！

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

＜表＞

（向かいの店をのぞいている糸子）

篠山）　あの、うちの店に何か？

糸子）　ああ、あんたの店？ 

　店、開いてんな。おめでとうさん。

篠山）　はあ、どうも。

糸子）　お宅、何屋なん？

篠山）　金券屋です。

糸子）　きんけんや？ 何売ってんや？

篠山）　まあ、切符とか、チケットとか。

糸子）　はあ～。

篠山）　すんません。店開けますんで。

糸子）　堪忍。邪魔したな。

　切符…。ハハハ、切符屋け。

 

よう分からん商売や。

 

男性）　ほんま21年ぶりやで。

男性）　ほんまっすよ。

　タイガースがっすよ？

男性）　あ、おはようっす！

男性）　おはようっす！

糸子）　おはようさん。

男性）　優勝！

糸子）　そや。

男性）　おめでとう！

糸子）　おめでとうさん。

 

商店街はこのごろ、

店の入れ替えが激して、

ここも、こないだまで、

お好み焼き屋やったんが、

先月から、不動産屋になりました。

このごろの若い男は、

何であない金ピカなんや？

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

＜小原家＞

孝枝）　そら儲かってるからですわ。

糸子）　不動産屋け？

孝枝）　そらもう今、にいちゃんらかて

　ごっつ稼いでるはずですわ。

糸子）　はあ～。フフフ。

　そら北村も、生きちゃあったら、

　今頃甘い汁吸えとったやろに。

　あいつはほんま死ぬまで、

　あと一歩が足らん人生やったな。

孝枝）　せやけど、キタムラちゅうたらもう

　おっきいメーカーさんですやんか。

糸子）　ほやけど、

　あっこの服、見た事あるけ？

　そら安いか知らんけど、ちゃっちいで。

孝枝）　ま、でもそらそんで売れてんや

　さかい、あんでええんです。

糸子）　はあ～ハハハ。

 

戦争が終わってからこっち、

みんながみんな、成功しました。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

（店で取材を受けている糸子）

糸子）　時代がよかったんですわ。

記者）　いや～けど、お嬢様３人が３人

　とも、有名なデザイナーになられたち

　ゅうんはすごい事です。

糸子）　そらまあ、あの子らも、

　頑張ったと思います。ほんでも、日本

　ちゅう国が、豊かんなったおかげです。

　今日かて見て下さい。今日は、りんどう

　の会ちゅう着物の勉強会なんですわ。

記者）　ところで、

　お嬢様の話に戻りますが…。

糸子）　まあもうええやないですか、

　娘の話は。

記者）　は？

糸子）　何や、みんな、

　聞きに来はるんやけど、正直うち、

　さっぱり記憶がないんですわ。

　育児なんぞいっつも人任せの

　ろくでもない母親やったさかい。

　自分の仕事の話やったらなんぼ

　でもでけるんやけどなあ。

　孝ちゃん！

孝枝）　はい。

糸子）　この人にお料理取ったげて。

記者）　いやいや、あの、先生。

孝枝）　先生、高田さん来てはります。

糸子）　あ、久しぶり、どうも。

高田）　いや、久しぶりでございます。

糸子）　あら～お久しぶり。

　ゆっくりしてってや。

譲）　いや、糸子先生！

糸子）　はれ。

譲）　河瀬商会のアホぼんやないか。

譲）　何言うてますの？ 先生。

　最近は僕、

　そないにアホでもないんですよ。

糸子）　あんた、遊んでばっかしい

　てんと、家手伝いや。こないだ

　お父ちゃんまた嘆いちゃったで。

譲）　いやちゃんと手伝うてますって。

糸子）　ほんまかいな。

栄之助）　どうも。

　お初にお目にかかります。

（名刺を糸子に渡す吉岡栄之助）

糸子）　いや～京都の呉服屋さんかいな。

　道理で若いのにえらい着物が

　様んなってる思た。

栄之助）　いやうれしいわ！

　糸子先生に褒めてもろたて

　親父に言うときます。

譲）　先生、こいつもこう見えて老舗の

　跡取りなんですわ。15代目。

栄之助）　いやいや、親父にちょっとでも

　点数稼がんと、勘当されてしまうんで

　すわ。ハハハ…！

糸子）　かなんなあ。

　世の中アホぼんばっかしやな。

栄之助）　先生、僕また、相談に寄せて

　もろてもよろしいですか？

糸子）　あかん。

栄之助）　何でですのん？

糸子）　相談相談て、

　このごろの若い男は、ちょっと甘い

　顔したらすぐ甘えてきよんや。

譲・栄之助）　いやいやいや…。

糸子）　あかんで。来なや。

 

…ちゅうて、

しっかりくぎ刺しといたにも関わらず。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

＜数日後＞

栄之助）　こんにちは～。ごめんください。

浩二）　いらっしゃい。

栄之助）　先生、いはりますか？

 

さすがアホぼん、

なあんも聞いてません。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

糸子）　５分やで。忙しいんやさかい。

栄之助）　そらもう、分かってます。

　いやね、譲から、先生の話はよう聞い

　てたんです。先生あれでしょ？ 戦争中、

　譲のひいじいさん、助けてあげはった

　んでしょ？ 金糸の入った生地100反、

　さばいてあげはったんでしょ？

糸子）　古い話やな。

栄之助）　感動しましたわ。世の中には

　立派な人もいてはるもんやな思て。

（糸子の前にお茶を置く里香）

糸子）　お客が先や。

（栄之助の前にずらす里香）

糸子）　あんたはよせな、５分終わんで。

栄之助）　あ…そらあかん。

　あの…ちょっと、

　見て頂きたい物があるんです。

（白い生地を広げる栄之助）

（生地に触れる糸子）

糸子）　へえ～。おもろい生地やな。

（土下座をする栄之助）

栄之助）　糸子先生！

　お願いします！ 助けて下さい！

糸子）　何や？

栄之助）　僕、間違えてこれ、

　100反も仕入れてしもたんです。

糸子）　はあ！？

 

また100反かいな。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
 

グレ気味の孫・里香とアホぼんたち。

さばききれない100反の生地再び…。

歴史は繰り返すものなのね…（苦笑）

 

 

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