「カーネーション」 
第139回～第24週 「宣言」

 

 

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「日々のダダ漏れ」

 

 

昭和61年（1986）7月20日

 

（オハライトコのブランド発表会）

 

ブランド発表会当日は、

朝から晩まで、てんやわんやでした。

 

（優子、直子、聡子、それぞれの写真、

 そして全員の撮影をするカメラマン達）

 

ｶﾒﾗﾏﾝ）　明日の見出し分頂きます、はい！

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

（グラスを手にステージに上がる糸子）

（拍手）

糸子）　皆さん、今日は、

　ほんまにありがとうございました。

　おかげさまで、オハライトコ、ブランド

　発表会、大盛況のうちに終わらせる

　事ができました。ささやかな用意しか

　ありませんけれども、どうぞ、楽しん

　でいって下さい。ほな、乾杯！

一同）　乾杯！

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

譲の父）　いや先生、この度は譲が

　えらい世話になりまして。

糸子）　やめて下さい。

　世話になってんのはこっちですわ。

譲の父）　先生にしごいて頂いてる

　おかげで、あいつもこのへんが、

　やっと締まってきました。

糸子）　ああそうですか。アハハ。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

優子）　里香。

（里香にジュースを差し出す優子）

（受け取り、一口飲む里香）

里香）　私…帰るよ。

優子）　え？

（優子を見る里香）

里香）　帰って…高校行きます。

（涙をこらえる優子）

優子）　そう…。

（笑顔で客と話す糸子を見つめる里香）

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

糸子）　何やあんたら、もうへたってんけ？

譲）　ああ先生。いや～疲れました。

栄之助）　もうへっとへとですわ。

糸子）　ご苦労さんやったな。

守）　いや～けど先生、こりゃいけましたよ。

　オハライトコ・ブランド、ひとまず成功です。

糸子）　うん…。

守）　お客さんの数、報道陣の数見たでしょ？

　明日の朝刊にバ～ンって載りますよ。

　他のよっぽどでかいネタに押されない限り。

糸子）　うん…。

 

ちゅうて、守が言うたよって。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

＜小原家＞

 

ドキドキしながら、

翌朝の朝刊を開きました。

 

（一面には、「歌舞伎役者中村冬蔵さん、

人間国宝に」の見出しの記事）

（隅の方に小さく出ている糸子の記事）

 

糸子）　う～ああ、ハハハハ…。

　う～うんくっそ～！ 春太郎～！

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

そんでも、おかげさんで、

ブランド・オハライトコは、

快調な滑り出しで、

店にも、新しいお客さんが、

どんどん来てくれるようになりました。

 

客）　こんにちは！

糸子）　いらっしゃい！ （孝枝に）採寸して。

　今混んでるさかい、ちょっと待っとって。

客）　うん。

浩二）　先生…先生。ほな、そろそろ…

　里香ちゃん送ってきます。

糸子）　うん。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

＜リビング＞

糸子）　行くか？

里香）　（頷く）

糸子）　悪いけど、うちは、

　見送り行かんよってな。

　忙しいさかい。

里香）　うん。

糸子）　駅で浩ちゃんに、

　お弁当買うてもらい。東京は

　優子が、迎えに来んやろ？

里香）　うん。

糸子）　気ぃ付けてや。

　優子によろしゅう言うといて。

　ほなな。

里香）　おばあちゃん！

（足を止める糸子）

里香）　ありがとう…ございました。

（頭を下げる里香）

里香）　また来ます。（泣）

糸子）　うん。ほなな！

（店へ行く糸子）

里香）　（泣）

（頭を下げる里香）

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

＜夜＞

（一人で食事をしている糸子）

糸子）　ごちそうさん。

　テレビでも見よけ。

（電話の呼び出し音）

電・糸子）　はい、オハラ洋装店です。

電・里香）　もしもし、おばあちゃん？

電・糸子）　ああ、里香か。

　今どこや、東京か？

電・里香）　うん。今東京駅。

　あのさ、おばあちゃん。

電・糸子）　うん？

電・里香）　私、９月のだんじり行くから。

電・糸子）　はあ～。うん、分かった。

電・里香）　そんだけ。じゃあね。

（電話を切り、お茶を飲む糸子）

 

東京へ、帰ってしもたから、なんや。

あっちへ、行ってしもたから、なんや。

寂しいんは、うちがほんなけ、

相手を好きなせいやないか。

 

糸子）　うちの人生、フフフ…

　もう、好きな人だらけで、困るちゅう

　こっちゃないか。ヘヘヘヘヘ。（涙）

　ああ～結構な話や。へへへ。

（北村の写真に目をとめる糸子）

糸子）　いや、あんたん事、違うや！

（チャイム）

糸子）　はい。ああ～。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

＜表＞

糸子）　はれ。

篠山）　すんません。おばあちゃん、

　たい焼き食べますか？

糸子）　たい焼き？ 食べる食べる。

篠山）　さっきお客さんにもろたんやけど、

　僕、こんな食べきれへんし。

糸子）　フフフフフ、おおきに。

　せや、あんた、ごはん食べたか？

篠山）　いや、まだやけど。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

＜リビング＞

篠山）　うまいっすわ。

糸子）　食べ、いわし。

篠山）　ああ、いわし？

　うん、これうまいっすわ。

糸子）　うちはず～っと食べてんのや。

篠山）　ふ～ん。

糸子）　しょうがと炊いて。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

昭和61年（1986）9月14日

 

今年もちゃあんとやって来ました。

祭りです。

 

直子）　お母ちゃんうちわどこ？

糸子）　うちわ？ そこにあるで。

優子）　あれがそうや。

（台所で料理を作る糸子たち）

里香）　おはよう～。

３人）　おはようさん。

直子）　あれ、あんたええのん着てるやん。

里香）　聡子叔母ちゃんが送ってくれた。

糸子）　へえ～このごろの子ぉは、シュッと

　してるよってこんなんよう似合うでなあ。

優子）　あんたな、聡子のばっかし

　着んと、ママのも着いよ。

里香）　ママのは嫌だ。

優子）　何で？

里香）　聡ちゃんのセンスの方が好き。

優子）　は～生意気。

糸子）　ハハハハハ…。

里恵）　おはよう。

　修ちゃんが起きましたよ～。

糸子）　はれ～修ちゃん、おはようさん。

　だんじりやでえ。ヒヒヒヒ…。

　男前起きたん？ だんじりや、だんじり。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

（お囃子）

（２階からだんじりを見ている糸子たち）

糸子）　来た来た～！

（拍手と歓声）

糸子）　ええなあ。

優子）　うん、ええなあ。

里恵）　里香、どうしたの？

里香）　だんじりって、

　こんな格好よかったっけ…。

直子）　何を言うてんや今頃。

里恵）　でもこの子、

　小さい頃見たっきりだから。

里恵）　怖いだけかと思ってた…。

　こんな格好よかったんだ。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

＜リビング＞

譲の父）　先生、こないだテレビで、

　えらい別嬪に映ってましたで。

糸子）　いや～ほんまですか？

男性）　僕も見ましたわ。いや～堂々として、

　とても初めてには見えませんでしたわ。

糸子）　いやもう、あない緊張すると思て

　ませんでした。もう二度と嫌ですわ。

男性）　いや、そらもったいない。

　どんどん出て下さい。

男性）　そうや！ おもろかったわ。

（笑い声）

優子）　里香、あんた、氷買ってきて。

里香）　ああ、うん。

優子）　そこのコンビニ分かるよね？

里香）　うん。

優子）　行ってきて。

里香）　行ってきま～す。

優子）　行ってらっしゃい。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

＜表＞

（店の前を通る法被姿の正志）

（里香に気付き足を止める正志）

（見つめ合う里香と正志）

（店に戻り、エプロンを外し、

 鏡で髪の毛をチェックする里香）

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

＜リビング＞

糸子）　あんたらのおかげやな。

譲）　いや～そんなん先生に

　言われたら僕うれしいわ～。

栄之助）　アホやからこそ思いつく

　新しい事があったちゅう事ですね。

糸子）　ハハハハ、

　調子に乗ったらあかんでえ。

　土台がアホやねんから。

　油断しとったら、

　すぐあかんようなるで。

栄之助）　そんな怖い事言わん

　といて下さいよ、先生。

 

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

 

夏木糸子になっても出てくる春太郎ネタに

笑った。図太く頑張ってるね～春太郎～ｗ

糸子が新聞の一面を飾るはずだったのに。

 

そしていよいよ里香が帰り、糸子は一人に。

 

東京へ、帰ってしもたから、なんや。
あっちへ、行ってしもたから、なんや。
寂しいんは、うちがほんなけ、
相手を好きなせいやないか。

 

寂しいのは相手を好きなせい。好きだから、

好きな分だけ寂しくなる。う～ん…切ないよ。

 

 

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