1. オッペンハイマー(2023年 アメリカ)
監督:クストファー・ノーラン
キャスト:キリアン・マーフィー / ロバ-ト・ダウニー・Jr / エミリー・ブラント
評価:★★★(評価は5点満点。★が1点。☆が0.5点)
<短評>
2度目の鑑賞。今年の正月に観て期待外れの作品だったので「どこか見落としたかも」という懸念があり再鑑賞したのだが,評価は変わらなかった。モクロームとカラー画面を使い分けたり,時系列を頻繁に入れかえるなど,ノーラン監督らしい構成の妙は窺えるが,全体としてあまりにもあっさりしすぎているのだ。ノーラン監督のねらいは戦後,水爆開発に反対してソ連のスパイ容疑を受けて秘密聴聞会で追求されるオッペンハイマーと,過去にオッペンハイマーから受けた恨みを晴らすために暗躍するルイス・ストローズとの確執を描くことにあったのだろう。そうだとすれば,そこに至るまでのオッペンハイマーの研究履歴や女性関係を描いている前半がいかにも薄くそのために3時間の長尺になったのは残念だ。その箇所が薄いために,オッペンハイマーがなぜあそこまで水爆開発反対の立場を貫いたのかがイマイチ伝わってこなかったのである。
2. 丘の上の本屋さん(2021年 イタリア)
監督:クラウディオ・ロッシ・マッシミ
キャスト:レモ・ジローネ / コッラード・フォルトゥナー / ディディー・ローレンツ・チュンブ
評価:★★★★(評価は5点満点。★が1点。☆が0.5点)
<短評>
特に大きな出来事が起こる映画ではないが,イタリアの風光明媚な丘の上を舞台に少年と老人の本を媒介にした交流を描いた心落ち着く作品である。丘の上にある古書店の店主リベロと本が大好きだけれどお金がなくて買えない移民の少年エシエンに次々と本を貸し与え,二人で本の感想を語り合う話を軸に,リベロの店にやって来る顔なじみの人たち―ゴミ箱で拾った本を売りに来るボジャン,リベロの店の2軒先にあるカフェレストランのボーイで家政婦のキアラに恋しており,リベロと大の仲良しのニコラ,自分の著書を人にあげたり貸したままで自分の手許に一冊もなくなって,なんとか一冊だけでも手に入れたいと思っている先生など―との交流をも描いている。リベロがエシエンに貸し与える本はコミックから始まって,ピノッキオの冒険,イソップ寓話集,星の王子さま,白鯨,アンクルトムの小屋,白い牙,ロビンソンクルーソー,ドン・キホーテとだんだんと難しくなっていく。リベロは実は重病を患っており,死期を悟っている。そして,最後に彼は「この本は貸さない。キミにあげる」と言ってある本をエシエンに手渡す。その本とは…,ナ・イ・ショ。まあ,ユニセフ協賛の映画らしい本だが,その評価についてはあえて言わないでおこう。
リベロがエシエンに『星の王子様』を貸し与えるときに言ったセリフ。「注意深くお読み。本は2度味わうんだよ。最初は理解するため。2度目は考えるためだ」。本の好きな人にはオススメの映画かも。