週末の過ごし方
食道楽が夢中になる
鮨カウンターのある酒造と復興
【センスの因数分解】
2025.01.08
“智に働けば角が立つ”と漱石先生は言うけれど、智や知がなければこの世は空虚。いま知っておきたいアレコレをちょっと知的に因数分解。
純米の辛口で食通からの支持も厚い日高見。蔵元は宮城県石巻にある平孝酒造です。当主の平井孝浩さんは、東京での会社員生活からUターンし事業を継ぎました。
「見据えたのは東京市場です。当時は新関という銘柄が看板でしたが、新たなブランド戦略が必要と生まれたのが日高見です」
その後北陸で訪問した鮨体験が転機となり、鮨店に通い詰めるようになります。しかし「なじみの親方にうちの酒を“合わないね”と言われた」ことをきっかけに鮨にふさわしい日本酒を見据えるように。こうやって現在の日高見の「超辛口純米」が生まれたのです。
「おかげさまで支持をいただきましたが、ここからという矢先に震災があったんです」
酒造りに必要な麹、酛、造りの部屋が全て使えなくなりました。しかし平井社長は「ここから進化してこそ復興」とすべてを再建。従来の二期から三期醸造が可能なシステムを導入します。この震災復興に力を貸してくれたのがほかでもない、懇意にしていた鮨職人たちだったのです。
現在は蔵に鮨カウンターも造り、有名店主が腕を振るいにやって来ることもあるそうです。さらに全国を訪れている経験を持つ蔵元ということで、若手たちから酒や文化に関わる相談を受けることもあるとか。
困難のなかからも酒への探求、好きな鮨への探求をやめず、歩みを続ける平井社長。「やりすぎと思われるかもしれませんが」と笑いますが、その姿を頼りにする若者は決して少なくないはずです。
平孝酒造
宮城県石巻市清水町1-5-3
0225-22-0161