江戸時代後期の戯作者で、大ヒットした滑稽本『東海道中膝栗毛』の作者として知られる十辺舎一九は、明和2年(1765)、駿河国(静岡県)の町奉行同心生まれ。そういえば「東海道中膝栗毛」弥次さん喜多さんも駿河の生まれだ。十代で江戸に出て武家に奉公するが上手くいかず、大阪や江戸でふらふらしたのちに30歳で有力版元(出版社)かつ地本問屋の蔦谷重三郎のもとに転がり込む。十辺舎一九は、文章を書くだけでなく絵も上手く、筆耕(文字の清書)まで一人でできたため、「蔦重」に大変重宝がられ、すでに人気作家だった山東京伝の挿絵などを手伝います。やがて「蔦重」に「おめえも書いてみな」と勧められ、寛政7年(1795)31歳…