1976年「別冊少女コミック」12月号~1977年2月号
本作が掲載された時のことを覚えている。
いきなり絵が丸っこく可愛くなって驚いたのだ。話も前作と違って長くなった分甘くなったと感じたのだ。
しかし今回再読してまったくそんなことはないじゃないかと自分にあきれた。
いったいなにを読んでいたのだろう。
あの時、失望したのはいったいなんだったのだろう。
丸く可愛くなってしまったと思った絵はやはりとても美しく物語は本作から以降のSFの基盤ともなっているように思われる。
よく作者が変化すると「駄目になった」「つまらなくなった」と思い込んでしまう読者の声が多くなるが自分もまたそのひとりだったのだろう。
ネタバレします。
とはいえ。
この作品にはもうひとつ個人的な思い出がある。
ある時
「空から落ちて来る人間を超能力で止めたが自分自身も止まってしまった」
という「映画」の一場面を観た記憶があるのだが何の映画だったのだろう、とかなり長い間苦しんでいたが見つからない。
見つからないわけである。
「映画」ではなく本作「マンガ」であった。
どういうわけか記憶の中ではリアルな人間の動く映像として存在していたのだ。
飛行物体から落ちて来る男をタダが超能力で空中停止させる場面なのだが、どうして自分の頭の中ではリアル人間として動いていたのだろう。
もちろん人の声も聞こえていた。
さすがにそんなにしょっちゅうマンガを映画として記憶してしまうことはないがこの記憶の魔術は自分自身だけで驚いた。自分の中だけの出来事なのでどうしようもない。
そしてこの一点でこの物語の持つ魅力を自分自身は感じ取っている。