親ガチャ、反出生主義…若者たちは「人生のネタバレ」に絶望している

現実はリセマラできないから

「親ガチャ」

――という、見るからに不穏なワードが流行している。

「親ガチャ」とはようするに、自分の両親や生まれた家庭環境は選べない、いうなれば完全な運任せであることを、ソーシャルゲームの「ガチャ(=クジ引き)」になぞらえたネットスラングである。

 
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〈2021年9月7日、「親ガチャ」という言葉を取り上げた現代ビジネスの記事『格差拡大、貧困増大...それでも「若者の生活満足度」が高いこれだけの理由』が話題を呼んだ。

内容は若者の間で「親ガチャ」に外れたことを嘆く声が聞かれる一方で、若者の生活満足度は以前よりも高まっている、というものだ。筆者の筑波大学教授・土井隆義氏は、相対的貧困率の上昇を受けた、人生に対する「諦観」の高まりから、現状を受け入れる若者が増えている、と考察している〉
(J-CAST『「親ガチャ」は不謹慎ワードなのか ネットで連日激論、芸能人も続々「参戦」』(2021年9月13日)より引用)

このワードの賛否や是非をめぐり、ネットは連日にわたって大荒れの様相を呈している。

「『親ガチャ』という言葉を肯定的に使う人は、自分の現状を他人のせいにしようとしている」という批判的意見があったり、一方で「『親ガチャ』という言葉を否定する人は、自分が恵まれていることに無自覚な人間だ」といった反論も聞こえる。こうした論争に各界の著名人から学者といった知識人たちも参戦して、波紋はますます広がっている。

「親ガチャ」というワード流行の背景分析として、前出の社会学者・土井隆義氏は、若者たちが自分たちの置かれた貧困状態に対してある種の「諦念」をもったから――と考察する。

たしかに一理ある分析であるが、しかし2020年代に20歳代を生きる若者たちからすれば、いまひとつ納得感に欠ける説に思えるかもしれない。というのも、いまの若者は、自分が客観的・相対的に見て「貧しい」かどうかを想像すること自体が、もはやできないからだ。ようするに、かれらはそもそも生まれてからずっと、このような社会経済状況を当然のものとして生きてきている。

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