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高い評価の役に立ったレビュー
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2020/08/17 11:57
夏に読みたい
投稿者:UrusaiTwins - この投稿者のレビュー一覧を見る
先が気になって一気読み。作品全体に漂う違和感というか不思議感というか、何かがおかしい気がするけど何がおかしいのかわからないぞくぞくする感覚は、「シャドウ」を読んだ時にも感じた。そして、最後の最後でまたゾクッとさせられた。ちょうど季節設定も夏だし、夏に読むにはぴったり。
低い評価の役に立ったレビュー
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2024/05/14 23:29
☆自己の構築した世界観☆
投稿者:ACE - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは、主人公ミチオの、小学校時代の話。
一学期の終業式の日、この日も欠席したS君にプリントを届けるため、S君の家を訪れたミチオ。声をかけても応答がなく、家の中に入ってみると、何かが軋むおかしな音がした。
そして、S君はいた。呼んでも返事がなく、S君の首は、ロープに繋がっており、足は地に着いていなかった・・・
急いで学校に戻り、担任に伝え、ミチオは一旦家に帰される。
その後、岩村先生と2人の刑事が家に来るが、ミチオにもたらされたのは、《Sの死体なんてなかった》という衝撃の知らせだった。S君の死体を見たと懸命に主張するも、結局、行方不明事件として捜査されることとなった。
それから1週間後、ミチオの前にS君が《あるもの》に姿を変えて現れ、「僕は殺されたんだ」と訴えてきたのだ。
ミチオは、妹のミカと共に、S君を殺した犯人を探すこととなる。
この物語では、虫が、動物が、そして人が死ぬ。その描写が、事実を淡々と、無機質に、そして詳細に描写をしてきており、それがかえって気持ち悪さを引き立てているのだろう。
そして、物語が進むにつれ徐々に見えてくる、登場人物の嘘や狂気の世界。人は、どう足掻いても、《自己の構築した世界観》から抜け出すことができないのだと感じた。
ひまわりのさくころに
2009/05/20 12:58
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間が物事を見て感じて「認識」する際、最初の立ち位置が間違っていると視点がズレる。 ミステリーではこの読者の認識を完全に騙してスタートする作品と、話を進めるにしたがって段々と混乱させていく作品とがあり、本作を含め道尾の作品は前者が多いように思われる。
そもそも自分が認識しているこの世界は本当に存在しているのか?彼は本当に「彼」なのか?私は本当にここに存在しているのか?そういう基本的な、最も根本的な認識・・・つまり何を始めるにも必ず必要となるベースの部分、共通の情報、基準点・・・そういうものがずっとあやふやなまま最後まで引っ張られるのである。
今回の『向日葵の~』は特にその傾向が強い。何しろ誰が人間で、誰が「彼(だけ)にとっての○○」であるのか、誰が本当に存在しているのか?それが最大の謎、トリックなのだ。主人公の小学生ミチオの言動に薄々気がつきながらも、私達読者はその実体が解らないまま事件の真相に目を奪われる。
終業式の日に小学校を休んだ同級生S君の家にプリントを届けに寄ったミチオ。そこで見たのは首を吊って死んでいるS君だった。先生と警察とが再び戻ると、なぜか死体は消えていた。
しかも家に帰ると妹と僕の前にクモに生まれ変わったS君が・・・彼は自分が殺されたことを訴え死体を捜して欲しいと頼みだした。事件の真相は???
足の骨を折り石鹸をくわえさせられるという犬猫の惨殺事件も相次ぐ。
岩村先生のポルノ癖、死体の足を折る異常犯罪者、精神異常をきたしている母、「純粋」な妹、猫を死んだ婆さんと思い込む家人・・・異常な世界と異常な人間が渦巻いている。
はっきり言ってこの物語にマトモな人間はいない(笑)ことごとく優しく壊れている。
皆、傷ついて傷つけて、自分の罪を隠すために都合のいい世界をつくり都合のよい東城神仏を「見立て」て誰もに優しく生きている。
ここには人間のしようもない2つの性癖が描かれている。
周りからの重圧、抑圧、孤独、憎しみに押しつぶされそうになるとき、人間は自分より弱いものへその負のパワーをぶちかます。排出する。弱いものははけ口として犠牲にされる。
自分の所業に非があると気がついたとき、それがどうしようもなく取り返しの付かない過ちであり責められるべきものであることと罪の意識にさいなまれる時、人間は往々にして逃げる。
自分の都合のよい周囲と世界とに逃げ込み、何も無かったかのように「日常」を生きる。
そうやって起こってしまった事件と、犠牲になった被害者と、そうせずに入られなかった加害者とが自分に優しい世界を守ろうと必死になっている。そんな話だ。
単純に読了後の感想を言うと、キモイ。おぞましい。狂ってる。
とりあえず私が私であることを心から願う。
所詮主観でしか生きられない
2008/08/16 20:23
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投稿者:George - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリーなどほとんど読んだことのない私が、なぜか気になり購入し、一気に読んでしまった一冊だった。
消えてしまったS君の死体、それに対する自分の「これを仕組んだのはあの人に違いない、だとしたらわかりやすいストーリー」と思ってしまっていた先入観が裏切られたあの一瞬。裏切られたのはストーリー内の謎解きだけではなく、そのストーリーの土台までもがガラガラと崩されていくのを感じた。
騙されたのか?ありえないただのおとぎ話?いや、そんなことはない。人はきっと、多かれ少なかれ、自分の主観によって生きている。自分が見たものを信じ、感じ、考え、他との関わりによって他に対する自己というものを確立している。自分の主観でしか生きられないと言った方がよいだろう。自分が今「正しい」と思って生きているこの世界も、所詮私が作り出した世界でしかないのかもしれない…そんなことを考えさせられた。
それにしても見事にしてやられた。それが気持ちよくさえあり、もっとほかのミステリーというものも読んでみようかと思わせてくれたこの本に感謝したい。