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タイトルと表紙買いです
物語が主にホームレス探偵視点、女刑事視点と
視点を切り替えて進んでいきます
人としての善し悪しは共通する二人ですが
価値観の嚙み合わなさが面白いと思います
読み終わった後「さて私はどうするか」と
前向きになれました
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警視庁刑事課に配属された夕子は、いきなり迷宮入り間近の家族3人が惨殺された羽田事件を任される。しかし、まったく手がかりもなく聞き込みをしている最中、かつて警察学校で指導を受けた椎葉が、代々木公園のホームレスの炊き出しにいるところを発見。椎葉に近づこうとした矢先、羽田事件の重要な関係者である女子高生が殺される…。
樋口有介らしい、事件よりも日常感の充実したミステリ+αなドラマ仕立ての1本。夕子と元刑事で、事件と見ると虫のできない椎葉を中心に、解決に向けているんだか向けていないんだかという、人間の動きを見ることが中心の作品。
まあとにかく、思っていたよりも長い。そして全然解決に向かっているんだかいないんだかわからない状況を眺めるようなところが醍醐味。
実際に、事件の真相はと言うと、良く言えば予想外だが、はっきり行ってどう着地しても文句のいえない程度のワタワタ感で、なんとかしようとしている部分はあまり要求されていないのだろう。
逆にヤキモキする部分が多いともいえ、なんでその描写をいちいち取り上げるかなあと思ってしまうのは、ミステリとして読みすぎているのではないか。
読むべきところは多分そこではない。椎葉のホームレスとしての生活であるとか、夕子のセクハラに対する対応であるとか、美亜の鬱屈して入るが、あっけらかんとした生き方なのだろう。
難点としては、自然と切り替わっているとはいえ、夕子と椎葉の両方の視点でみてしまっているので、見えない部分がわからずボケているような感覚は有った。
どこまで純粋なミステリとして楽しむか、読む側のスタンスで印象が異なってくる1冊だ。
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表紙に惹かれ手に取りました。お恥ずかしながら初めての作者さんでしたが、2021年ご逝去とのこと、続編を待ち望むことは叶わないんだな、というのが読後の最初の感想でした。面白かったー!
ハードボイルド、の言葉が裏表紙にありましたがそこまで硬すぎず、かといって本格ミステリでもなかったと思います。筋としては殺人事件の新犯人捜し、なのですが、超推理や謎解きはあまり複雑に無くて、椎葉という主人公の人生をなぞるような場面が私は読んでいて心地よかった。ブレない諦念、というんですかね…30過ぎにしては人生悟りすぎでは、と思わなくもないけれど、元妻との境遇の対比が(暗に元妻が悪く描かれているような気がしなくもなかった)ラストにつながっているんですかね。きっと椎葉は幼い頃から孤独に慣れさせられすぎていて、一人でいる自分に違和感は無いのでしょう。それでもまるっきり誰もの存在がない世界観で生きるには寂しがりすぎて、ホームレスという特殊な社会は息がしやすかったのかもしれない。
椎葉が座間味まで無事たどり着いて、トメさんの遺骨をご親族にお渡しできて、その後 暖かくゆるやかな時間が過ぎていく島で、無理せず暮らしてほしいと親のように願ってしまいます。