投稿元:
レビューを見る
ボクさんは知能に少し障害がある。四十歳、アパート「幸福荘」の管理人。
住人や近隣の人々に支えられ、自然を愛し人を愛し、幸福な日々を送っていた。
ところがある日、アパートで殺人事件が起きてしまう。それを目撃したボクさんは驚いて梯子から落ち、次に目が覚めた時は病院のベッドだった。
そして彼は気づいた。自分の知能が正常に戻っていることに。
善良だと思っていた住人は全員失踪したという。ボクさんは一人、真実を追うため動き出す。
「僕がみんなに親切にして、僕がいい人になれば、まわりの人もみんないい人になるよ。」
人からは苦笑されてしまうような、この信条。
これは本当に、のちのボクさんが分析するような「逃げ」の生き方だったのか?
ここが気になって仕方ないです。
これは極端だけど、ある種真実を衝いていますよね?いわば、彼は自覚的なムイシュキンですか。
作中で遊都子も「大家さんが薄バカでもお利口でも、あたしは大家さんのファンです」って言ってたしね。
白痴と純粋さを嘲笑わければならない社会が一番哀しいなあ。
この本を読んだわたしの考えはそんなところに着地したのでした。
ミステリとしては読みませんでした。だってミステリの書き方をしていないもの。
あとちょっと気になったのは老人ホームで働く文子の愚痴の内容かなあ・・・。
「老人ホームに来るような人たちはずるい」。これを彼女の若さと正義感のせいだとボクさんは言ってたけど、どうなんだろう。
わたしも大人になれば、そうやって人を呪ってまで生に拘泥する人たちを笑って許せるようになるのかね?
投稿元:
レビューを見る
「ジャケ買い」ならぬ、「タイトル買い」。
また樋口有介だった。
この人の付けるタイトルについつい手を伸ばしてしまう。
読んでみると、いつもまあまあ。
ハードボイルド口調は、むしろ苦手。
投稿元:
レビューを見る
語り手の視点がうまくつかめなくて、読みにくかった。
最後のおどろきを狙っているために、そうしているんだろうけど、読み疲れて、あまり「おぉ!?」ともならなかった。
2009.2.16〜3.3読了
投稿元:
レビューを見る
なんて哀しい話しなんでしょう...。
もちろん泣きましたよ...でも...心地良い涙ではなく
本当になんか哀しくて...ね。
このストーリーってどう評価するのがいい事なんですか?
決してイヤではないですが、大事で大切なことを
突きつけておいて、フラっていなくなってしまうような...
しかもわざとね。そんな感じの寂しい気持ちになって
しまいます。
決してファンタジーなんかでなく、凄い毒をかけられたような
気分です。でも決して...悪いとは思いませんが。
投稿元:
レビューを見る
知能障害のあるアパートの管理人がアパートで起こる殺人事件を境に知能が戻る。面白いかったけれど、ん・・・切なさがあるんだけれど、面白い。
投稿元:
レビューを見る
小学生程度の知能しかない「ボクさん」は母の残してくれたアパートの管理人として暮らしていた。そのアパートで殺人事件がおこり、それをきっかけにボクさんは、知能を取り戻す。
見えすぎること、わかりすぎることは不幸だといわれる。
まさに「ボクさん」は、わからないことでたくさんのことを見ないでいたし、感じずにいた。それが、薄皮がはがれるように気付いていく切なさ。
「幸せと不幸せは、結局、差し引きでゼロなのかもしれない」」と、わかってしまう悲しみ。
事件そのものは、単純であっさりと解決されてしまう。
だからこそ、ボクさんの得たもの失ったものの、大小が、哀れに感じる。
結末は……。
けれど、ああいう結末にしたことこそが、樋口有介の慈しみなのだと思う。
読後しばらく、月を見るとなんか切なかったよ。
投稿元:
レビューを見る
帰国中に読んだ本。
知能は小学生程度だけれど心優しく親切なボクさんが経営していたアパートの一室で起きた殺人事件。死体を目撃したボクさんが驚きのあまり梯子から落下して、様々なことに変化が起こる。
言ってしまえば有り得ないSF的な展開。でも、人の後ろ暗い部分や悲しみを淡々とした口調で語る文体がいい。
投稿元:
レビューを見る
『アルジャーノンに花束を』のテーマをハードボイルドミステリ調にしたらこんな感じかも。ただ著者は『アルジャーノン・・・』を未読だそうです。自然と思い浮かびますが、似てるかと言われれば全然違います。殺人事件が起こるミステリですが、それよりもミステリを題材にして語りたいことが大きいような気がします。面白かったです。読後感は爽やかです。
投稿元:
レビューを見る
知能は小学生程度だが、死んだ母親が遺してくれた小さなアパート「幸福荘」の管理人として、平和に暮らしていたボクさんこと福田幸男、40歳。
ところがある日、アパートで殺人事件が起きたことをきっかけに、ボクさんとその周辺に変化が起こりはじめる。
知らないほうが幸せであり、知ってしまった時にどう思いどう行動するのか。
樋口有介らしくない設定、切ない話だった。
投稿元:
レビューを見る
小学生中学年程度の知能のボクさん40歳は
亡き母の残したアパートの管理人をして暮らしていた。
ボクさんが梯子から落ちて頭を強打したことで
バカが治るが、アパートでは殺人事件が起きていて
住人全員が行方不明に・・・。
更に、自分を取り巻くものが善意だけではなかったことを知る。
「アルジャーノンに花束を」を連想するけど、違ってました。
でも、殺人事件が解決して、アパートに幸福を訪れるのに
用意されていた結末に愕然としてしまう。
最後の3行でファンタジーになるけど、あんまりだわぁ~(p_q*)
投稿元:
レビューを見る
読了後、なんとコメントすればよいか正直迷います。
数十ページを残し判明する犯人。サスペンスを幾度か読んだ方ならば解説にある通り、この後どんでん返しがあるのではないかと期待してしまうことでしょう。
しかし待ちうける期待とは異なる結末。
知力の回復により世界は鮮明になり、知りたくなった真実を知ってしまう。
しかしボクさんは目を背けるのではなく、突き詰めることで無意味な平和と人生の至福を実感するに至る。
きっと見えた事実は残酷だったかもしれないけれど、その引き換えに得たものは大きいに違いない。
それを考えるともはや、現実はどちらか・知力回復の原因など真実はどちらでもよい気がしてくるから不思議。
投稿元:
レビューを見る
知能は小学生程度だが、死んだ母親が遺してくれた小さなアパート「幸福荘」の管理人として、平和に暮らしていたボクさんこと福田幸男、四十歳。ところがある日、アパートで殺人事件が起きたことをきっかけに、ボクさんとその周辺に、驚くべき変化が起こりはじめる...。哀切に満ちた長篇ミステリー。
投稿元:
レビューを見る
感動を狙ったものだろうが、どうも感情移入できなかった。作風を逆手に取った有効な仕掛けだとは思うのだが。密室もお粗末に過ぎる。
投稿元:
レビューを見る
知的障害のある主人公が管理するアパートで起きる事件を巡り、温かみのある雰囲気で展開されていくミステリー……というのが、読了直前までの感想だった。
人々の描き方が良く、又、主人公が自然に興味を持っているために自然や色彩に関しての描写も多いので、辛い現実も描きつつ、終始平和な日常への愛を感じる物語。
脳味噌がぎゅっと絞られるような神経に迫る急展開はほぼあらず、事件の謎は勿論追うのだが、そういった雰囲気が、ミステリーには珍しい展開だという印象。
とにかく最後まで読んで欲しい。
実は、読んでいる最中は、面白い小説だが推理物だし、お金のない今は売りに出そう、くらいに思っていた。
ところが読み終えてからは、まだ手元に置いておきたくなってしまった。
この物語の重要なエッセンスなので語れないのがもどかしいが、最後の最後に心にぎゅっと迫るものがある。
投稿元:
レビューを見る
小学生並みの知能しかない、主人公のボクさん。
周りの人たちの優しさに包まれながら、日々を平和に送っていました。
…その平和な日々が、ある事件がきっかけで壊れて行きます。
ラストは「ええー」って感じでした。