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神の恩恵。
2004/03/26 14:58
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:川内イオ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「絶対良いことあるから」
自分がまだ大学生だった頃、友人であった
バイト先の女の子が新興宗教にはまった。
彼女は何かに取り憑かれたかのように、
突然信仰心に目覚め、先輩信者を連れて
あらゆる友人・知人を熱心に勧誘する。
そして、入信したらどれだけ良いことがあるか、を切に説いた。
「人気バンドの売れ切れ必至のチケットが取れた」
「いつも座れない電車で最近よく自分の前の席が空く」
他愛ないことのように思える。
しかし、それは彼女にとって神の恩恵を授かった、
かけがえのない、神聖な瞬間だった。
行方不明になっていた幼女の遺棄死体が
発見されたことから『慟哭』は始まる。
捜査に当たるのは、己の血に囚われたエリート警視。
利害、怨恨どちらの線も消され、遅々として進まぬ
捜査に警察は危機感を募らせるが、それに追い討ちを
かけるように、別の行方不明女児の遺体が発見される。
いわゆる「オタク」系の犯罪を疑う捜査本部と、
それを煽るマスコミ、翻弄される世論。
しかし、警視は犯人像を限定することで
捜査対象が狭ることを懸念し、対立する。
そして、警視はひょんなきっかけで「新興宗教」
の可能性に辿り着く……。
この物語に描かれている、連続幼女誘拐殺人事件、
拡大する新興宗教渦、エリート警視の絶望。
この3つのテーマに深く共通しているのは、
現代人が抱える底知れない「孤独」だ。
頻発する動機の見えない殺人事件だが、
殺人者本人の中では動機は完結している。
増殖する新手の宗教が説く救済は、
「生きがい」という名の、孤独の中和だ。
また、例え警視のように、誰にも頼らない「自立」の道を
選択したとしても、結局人は一人では生きてはゆけない。
私の友人は本当に神を信じている風だった。
神の恩恵に深く感謝してもいた。
それでは、救いは得られたのだろうか。
あれだけ煙たがれながら、彼女が
勧誘を止めなかったのはなぜだろう。
物質的な欲求には限りがないこと、
例え手にしても温もりがないこと、
その虚無に彼女は無意識に気づいていたのかもしれない。
そして、自分を信じ、神をも共有できる
「本当の友人」を叫び求めていたのかもしれない。
彼女の笑顔の下の慟哭はしかし、
決して彼女特有のものではない。
茫漠とした荒野は、きっと私の前にも広がっている。
ありえなくも無いのでは
2003/09/22 02:32
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投稿者:うさこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
正直、読後感は嫌な感じが残りました。だけれども、こういう書き方もあるのかと驚きました。
私は読みながら感情移入する傾向があるのか(大半の方もそうかもしれませんが)、冷徹な主人公の内に秘めた激しい感情が見えた時は、すごく感銘を受けました。結果、悲しい結末を迎えますが、誰の裏側にも潜む狂気。それは、常に私達がいる世界とは紙一重で、何かのきっかけがあり、背中を押されたら誰もが足を踏み入れるかもしれない。
人の心って強いようでいて結構もろいですよね。助けてくれる術が無い時に、優しくしてくれるものに出会ったら、思いがけない方向に進んでしまうのも否定できないですよね。
「慟哭」では、思いがけない方向っていうのが「宗教」だった訳だけれども。それだって別に現代において珍しい事柄では無いですよね。信仰は自由だし。だけどそこに狂気が重なった時の恐怖。そして正気がだんだんと壊れていく様(本音はその様をもう少し細かく描写して欲しかったような気もしますが)。
しかし、最後がどうしても気になります。かゆい所に手が届かないっていう感じです。
はっきりして終って欲しかったです。
好き嫌いと評価が分かれる作品だが、「ドンデンガエシが巧く決まった本格謎解きミステリー」なのである。
2003/05/06 11:22
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
白装束に身を包み、トラックを連ねて迷惑を省みない宗教団体がいる。執拗にタマちゃんをとらえようとする宗教団体がいる。クローン人間を誕生させたという宗教団体もいる。なんとなく薄気味が悪い世の中になったものだ。
幼児誘拐殺人事件の背景に、悪魔にいけにえを捧げることで救済が得られるとする狂った神の教義があったとすれば、これはいかにも新興宗教全般を誤解させることにもなりかねないきわどいテーマだ。しかし、オーム真理教といういかがわしい教団の猟奇的連続犯罪が実証されるとやはり悪魔を崇拝するような現実遊離の狂気的集団が日本にも存在するということなのだろうと思わざるをえない。だからこの『慟哭』を読み終えて、この小説のドンデンガエシの核になっている犯罪者の心理を推測して、まさかそんなことは現実にあるわけがない、だからつまらない小説だと単純に批判的には言い切れないものがある。
これは「本格謎解きミステリー」である。つまり読者を最後まで煙に巻いてストンと追い落とすのが作者の腕の見せ所とされるジャンルの小説である。
にもかかわらず、警察小説としても読み応えを感じさせるところがある。また新興宗教のもついかがわしさの分析という点でも関心をひきつけるものがある。
しかし、じっくりと読めばそれらは作者の仕掛けた巧妙なワナのためにある飾り付けに過ぎない。結局警察組織や新興宗教教団を描写したところに著者の深い洞察や批判精神があるわけではなく、むしろ皮相的解説にとどまった内容でしかないことが理解できる。本格謎解きであるからそれでいい。しかも背景が現実とまったく乖離しているわけではない。この微妙な折り合いを評価したい。
そして………
肝心の腕の見せ所であるドンデンガエシはうまい! あざやか!
書評集「よっちゃんの書斎」はこちらです。
面白かったけど、途中で展開が読めてしまってどんでん返し感はあまり感じなかった。
2017/06/19 19:53
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投稿者:えんげ - この投稿者のレビュー一覧を見る
【ネタバレ】
社会的に立場がある人が「そりゃバレるだろう!」とうい脇の甘さで不倫してたりするところは終始気になった。
が、それが冷静さ欠かない彼の隙や弱さを象徴しているのかなとも思った。
コンプレックスはちゃんとコンプレックスとして認めることも大事なのかな。。
無理に鎧で固めてしまわずに、弱いところは弱いと自分で認められていればこんな踏み外し方はしなかったかな。。
寂しさって凶器だな。
デビュー作
2016/11/15 20:48
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投稿者:nazu - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の存在は以前から知っていましたが、なんとなくきっかけがつかめず一冊も読んでいませんでした。ふと読んでみようと思ったのがこのデビュー作。ほかの方が言っている通り、完成度高いです。が、仕掛けは早い段階で気づきました。
面白いけど
2016/04/03 22:09
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投稿者:栞ちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
かなり早い段階で、オチの予想がついてしまった。それでも最後まで、興味がさめることなく読むことができるのは、作者の力量なんでしょうね。それにしても、登場人物誰ひとりとして救いがない結果というのが、つらい。
ううーん
2013/06/21 17:44
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投稿者:jkj - この投稿者のレビュー一覧を見る
途中から予想通りの展開っていうか…
「あーやっぱりねー」って感想…
あんまり評価いいから期待し過ぎちゃったのかな。
微妙だ…
2003/03/26 06:03
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投稿者:茶太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
エリート刑事の心の葛藤、最後にあっと言わせる構成力…、読み応えはあった。でも、根底にある新興宗教というテーマがやや陳腐。いかにもありそうなテーマだ。新鮮味を感じない。また最後に犯人が挙がらない事で読後感がすこぶる悪い。科学捜査が進んだ現代で、犯人の尻尾を全くつかめないのは有り得ない展開。話の展開が警察内部の人間関係やマスコミとのばかし合いに終始している。もの凄い傑作という触れ込みで読んだが、傑作と言えるかどうかはもの凄く微妙だ。
交錯する二つのストーリー
2001/11/25 01:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひいろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
連続幼女誘拐事件の捜査を指揮する、捜査一課長佐伯。 そして新興宗教「白光の宇宙教団」に徐々にはまっていく男。交互に語られるこれら二つの物語。 果たして行き詰まった誘拐事件は解決するのか?そして男は宗教にどこまでのめり込んでいってしまうのか? 二つのストーリーが交差するとき、全ての謎が明らかになる!
貫井徳郎さんのデビュー作です。 全般的に暗い雰囲気が作品を覆っているのですが、二つの物語が進むにつれ、 どんどん引き込まれていきました。そして最後に明かされる、まさに衝撃の事実。 思いもよらない結末でした。読み終わって、満足です。
それにしても、新興宗教のストーリーはあまりにリアルでちょっと怖かったです。 カバラとかって本当にあるものなんでしょうか? しかし、宗教にはまってしまう人達の心境がちょっとは理解できたような気がします。 誰もが、「見返りを期待して」入信するんですね。なるほど。
やられた!
2000/09/12 18:55
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投稿者:いっちー - この投稿者のレビュー一覧を見る
警察や新聞社のやりとりに新興宗教がからんできて社会派推理小説?かと思わされますが,最後の1ページに驚きが凝縮。やられた!という感じです。
どちらかというと読後さわやかじゃない系か? 余韻が残るとも言うけど。