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つい最近柳田国男の著作権が切れたらしい。このタイミングと関係ありそうだが、角川ソフィア文庫で、絶版だったものも含めて柳田国男の諸著作を新装版として出した。本屋の店頭にずらっと並んでいたので、数冊買ってみた。
本当はちくま文庫で「柳田国男全集」が出ていたので、これはもう絶版だが、中古品をちょこちょこ買っていこうかとも思ったのだった。けれどもそれはなかなか面倒だし、余計に高くなってしまっていたりもするし、ちくま文庫は表紙が汚れやすいので、さすがにあまりにも貧相な見た目だとがっかりしてしまう。
それに柳田国男は各社から出ている文庫をバラバラに買ったり、図書館で読んだり、青空文庫の無料版をiPhoneで読んだりもしてきたので、もはやどれを読んだのかわからない部分もあって、混沌としている。
とりあえず今度の角川ソフィア文庫で、何冊かまとめて読みたいと思う。
さて本書「雪国の春」であるが、これは東北特集である。けれども、民俗学的な文章と言うより随筆、旅行記のようなものが多く、たとえばオシラサマに関してもちらっとしか出てこない。
相変わらず名文(しかし読みにくい)ではあるが、民俗学的な知の高揚が、今回は残念ながらあまり感じられなかった。
東北を実地に旅しながらこの本を拾い読みすると、楽しいかもしれない。当時とは全然風景が違うだろうけれど。
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文化論ということだけど、その当時の東北各地を旅した気分になれる紀行文としても楽しめた。
柳田の目に移った自然、土地土地の植生の変化とそれがみせる美しさや物悲しさ。
人間についていえば、今に通じる三陸大津波や豪雨後の様子、それに巻き込まれた人々、旅先特有の哀しさ。
特に目は口ほどに云々を如実に語る「子供の眼」は悲惨な境遇・体験に面してしまった子供の状況とその眼が語る様が、ひどく胸に迫った。
ほかの著書の口碑・伝承などから考察を巡らす内容は最後の「東北文学の研究」になるけれど、ここでの海尊系の話と八百比丘尼伝承との結びつきは面白い。
紀行文?と考察が楽しめる点ではお得な感じの一冊。
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東北文化論。
特に「雪国の春」、「雪中随筆」、「豆手帖から」、「東北文学の研究」を興味深く読んだ。