主役になりそうもない中華料理店家族が
2024/10/03 16:53
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタバレ
東京で中華料理店を営む藤代家・三代の物語、こうやって彼らは財をなしたという話ではなくて、こうやって彼らは困難から逃げ回ったという話、祖父母の泰造とヤエは満洲から、父、慎之輔は女性から、他の家族も勉強ができても世の中には馴染めずカルトにはまる者、いつまでも自分探しを続ける者と他人から見ると成功者とは言い難い人ばかり、そして唯一、逃げなかった泰造夫婦の末子・基三郎は「ごめんね」という遺書を残して(私は彼のことが一番好きだった、そして彼ら家族にも一番愛されていた)。孫の良嗣はヤエを彼女が暮らした旧満州へ連れていく、そこで良嗣は祖父母の若いころの姿を知る、逃げまわる根っこのない生活だけど希望はあったのだと理解する。「何か変な人たち」と思っていた彼らがだんだんと好きになってくる
もうひとつの現代史
2017/06/29 10:55
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投稿者:ペンギン - この投稿者のレビュー一覧を見る
突出した才能が無く、後ろ楯となる地縁血縁が無く、大したお金が無く、高い志が無いふつうの庶民が主人公の現代史という印象。寛容とも放任ともとれる家庭に受け入れられる家族と居候の姿には、妙なカルタシスさえ感じる。昔の人だってバカではないが、偉くもなかった。現在の我々と同じように、と。
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爺さんの死とバスジャックから物語が始まって、一家のルーツが語られていく。ってか。
永遠の0?なーんて思うも、まぁ、各々の人生に興味が持てたり。ただ、若干挫折感が多いかな。若くして死を選んでしまう人たちにメッセージを投げ掛けているのかな。そんな感じがした。
前に読んだ八日目の蝉だったので、そちらの方がよかったな。
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GWの休暇に入ったけど、仕事は沢山積み残されていて、この前就職した息子のことも気がかりで、相変わらず落ち着かない日々が続く。
いつになったら心安らかに人生を送れることだろうと思いつつ、生きてる限りずっとこうだろうねぇと、この本を読みながらつくづく思う。
そうした思いを引き起こすこの物語、満州から引き揚げてきた祖父と祖母が西新宿に構えた翡翠飯店に住む三世代の家族の年代記。
祖父の死をきっかけにして孫の良嗣が祖母と叔父とで中国を巡る話に始まり、祖父と祖母が出会い平成の現在へと至るまでを描いたパートが交互に語られる。
そこでは昭和・平成に起こった数々の事件を背景に結構ドラマチックの話が家族のそれぞれに降りかかり、しかし彼らはそこに積極的に関わりなく遣り過ごすことで歳を重ねていく。
作中、慎之輔は思う『母も自分も、もしかして父も一生後悔していくのかもしれないと。あのときこうしていれば。こうしていなければ。生きていくということは、人とかかわるということは、この苦い後悔をふやしていくことなのかもしれない』と。この気持ち、良く分る。
最後のほうで祖母は語る『だってあんた、もし、なんてないんだよ。後悔したってそれ以外にないんだよ、何も。私がやってきたことがどんなに馬鹿げたことでも、それ以外はなんにもない、無、だよ。だったら損だよ、後悔なんてするだけ損。それしかなかったんだから』と。この気持ちもまた良く分る。
もう少し若い頃だったら、あの時もっと頑張っていれば違った人生になっていたかも知れないと思うこともあったけれど、子供も独立し会社生活も残り僅かになった最近は、多分その時はその時なりに頑張っていた筈で、そう思うともしもう一度やり直したとしても大して違わない人生だっただろうなぁって、悔いは無いことはないけど、まあそれでも総じて悪くないって感じ。
私の気がかりな息子たちもそうして人生を生きていくのだろうな。それぞれに精一杯やってくれたらそれで良いさ。
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祖父が亡くなった。祖母を連れて孫の良嗣は祖父と祖母が出会った長春に旅行へ行く。旅行を通し自分の家族が他と異なる訳をだんだん知っていく。
「逃げる」ことしか教えられなかった祖父母。「逃げる」ことしかできない子供達。流される逃げではなく、抗うための逃げを祖父母は伝えたかったことを最後に良嗣は悟る。
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めまぐるしく時代と主体が入れ替わる中で三世代それぞれの生き様がどこか似ていて時代は違うのに重なるような背景が感じられて面白い。
始めは無気力な太二郎の存在がうっとおしく感じられた。
しかし元々は生真面目だった人間がどういった経緯で現在の人格へ変化していったのか経緯を知る事で不憫で愛おしく感じた。
角田さんの作品は文体が近すぎず遠過ぎず自分には丁度良い心地良さを与えてくれる。
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久しぶりの角田光代だったけど深入りしすぎず面白かった。満州時代の相変わらずのでれっと感はあったけど、家族の裏側みたいのいい。
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今までになかった角田ワールド。親子三世代それぞれから見た家族像。一見かなり壮大な物語に思えますが、どんな家族にもこの藤代家みたいにこういった「あれこれ」があるのだなという気がします。
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第二次世界大戦中の満州からつい最近の東京までを舞台にした、三世代にわたるある家族の物語。過去と現在が交差するように書かれる、一大叙事詩といった感。
自分という人間の中身は、生まれ持ったものと、自分自身が育った環境や経験で培われたものだと思っていたが、実はそれだけではなくて、上の代からずっと繋がってきたものもあるのかなと感じた。かつての祖父母の体験や想いがあって、今の私がいる。繋がり。
お互いによく知っているようで、でも各々別個の人間である『家族』について、そして、個々の人の人生や思惑を流していく大きな時代の力について、色々な感情が呼び起こされる物語だった。
時代の波にのまれて沢山の苦難に見舞われながらも生き抜いてきた人達の物語は、今のこの情勢の中で生きる私達に力を与えてくれると感じた。そして、観念よりも今現実にそこに在るものを大切にしたいと思った。
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通勤電車の中で読んで、駅で人の流れに押し出されがら歩く自分は、まるで祖母ヤエのようだなぁと思った。
植民地政策、そして引き上げ時にも、ヤエや祖父は事実を知ることなしに、自分の気持ちのまま群集の一員で動いていった。私も政策が出されれば、そのままそんなもんだろう、ってなってしまうだろう。
逃げるということの後ろめたさ、後悔。でもこの本では、取り敢えず逃げろ、逃げてから考えろって言っているようだ。逃げる=卑怯な行為、とばかり否定できない、むしろ今の時代ならば、この閉塞している場からは逃げることも必要、って受け止めた。
時代を生きていく手段だ。
昭和から平成へ、祖父から孫へ学園紛争、バブル期の地上げ、オウム事件etc時代の出来事がまたこの家族を流していくあたり、三世代の繋がりを思う。
ただ孫の良嗣としては、
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三代にわたる家族の記録といった形の物語。
何かに秀でて大業を成し遂げるわけでもなくまさに庶民の話だが、たった三代でもこうやって連綿と続いてきたのを時代の大きなうねりと共に書いてあると、地味ながらも圧巻。淡々としていて最初は退屈だったが。
一代目の祖父母は放任主義だが、子や孫が問題を起こしてもニートでもするりと受け入れてしまう。それは一見無関心のようだが、帰れる場所のなかった二人だからこそ、どんなになろうといつかは帰れる場所であり続けること(=希望)こそが家族の意義だと思っていたのではないか。
近代家族のイメージができつつあった時代に一代目ができ、不器用ながらもどうにかそれを作っていこうとした家族の歴史でもあると思う。今後、家族の在り方はどのように変遷していくのだろう。
逃げることが抵抗だった時代→逃げることが刹那的には楽な方へと流される時代。
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買ったもののなかなか手に取る機会がなかった本作。
読み初めてとても引き込まれた。
現代と過去から成り、ほどよいところでそれぞれの時代に話が戻る。
藤代家の人々の生き方がリアルで、起こっていく出来事も実際に起こった事件もありリアルさが増す。
ラストも良かった。
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中華料理店翡翠飯店を立ち上げた祖父が亡くなった。久々に集まった一家を見て、良嗣は以前から感じていた家族への疑問を募らせる。そもそも祖父母はどこから来たのか…。生まれて初めての強い欲求、それは家族のルーツを知りたいという思いだった。
物語は、語り手を変えながら一家の歴史を紐解く。一家に漂う一つの気質、それは本当に祖父母の辿った道から生まれたのか。終盤の祖母の語りが印象的だ。
長編だが、一息に読むのがおすすめ。私は少し飛び飛びで読んでしまったので、面白味が半減してしまった。
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私は祖父母、両親の昔の事をほとんど知らない。とても知りたくなった。この本のように、祖父母、両親共に色々大変な事があっただろう。それで、私がいる。なんか時間の流れにくらくらする。
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冴えない中華料理屋を営む「藤代家」の3代に渡る歴史小説。
普段何も考えずに当たり前の様に接している平々凡々な家族だけれども、ある事件がきっかけに家族に違和感を覚え始める主人公。
知っているつもりでいて、実は何も知らなかった家族の肖像が、祖父母の満州開拓時代からから遡って語られていく。
物語の中で祖母が「生きる為に逃げ続けてきた」という台詞に続けて、今の世の中で「逃げるとはオイソレと受け入れること」と語る台詞は喉に刺さった小骨のように頭から離れられない。
「闘うことも逃げることもせず、やすやすと時代にのみこまれんな」そういう風に祖母の言葉を受け止めた主人公。捉え方は様々あるかもしれないけれど、自分にはぐっと響いてくる台詞。
どの家族にもそれぞれの物語があり、知ろうとしなければ語られずに家族の死と共に消えていってしまう。
家族とは一番身近な存在だけれども、生々しくグロテスクで、正面から向き合うのが一番難しい。でも、語られずに消えていってしまう物語があるのであれば、勇気をもって向き合う必要もあるのでは無いか?最近父を亡くし、この作品を読む事でそのような想いを抱くようになった。