著者のお家芸である「成果主義と年功序列」からして,ほぼ予想できる内容。
2009/10/01 00:45
10人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BCKT - この投稿者のレビュー一覧を見る
はじめに 「閉塞感の正体」を見きわめる
第1章 若者はなぜ3年で辞めるのか?
第2章 やる気を失った30代社員たち
第3章 若者にツケを回す国
第4章 年功序列の光と影
第5章 日本人はなぜ年功序列を好むのか?
第6章 「働く理由」を取り戻す
著者は1973年(山口県)生まれ。東大(法)卒。富士通入社(97-04年(24-31歳),人事部)。株式会社ジョーズ・ラボ代表取締役。本書は著者が33歳の時の刊行。手許のは,三か月足らずで9刷の06年印刷分。ベストセラーに,『内側から見た富士通 「成果主義」の崩壊』。本書は著者が33歳の時の作品。
本書副題が本書の趣旨。目次を見て内容をつなげると,“新入社員の若者たちが3年で退社してしまうのは労働意欲を失ったからであり,意欲喪失の原因は年功序列が彼らにツケを回しているからだ”という論旨。中高年の賃金を若年層が稼ぎ出しているという構図だ。
「近藤君は28歳のフリーターだ。現在は都内で進学塾講師のバイトをしながら暮らしている。月収は15万ほど。家賃が6万円だから,決して楽な暮らしではない。/実は,彼は東京大学法学部卒という学歴を持っている。/卒業したのが24歳の時だから,留年して年を食いすぎたわけでもない。成績も学内で上位二割には入っていた。」(128-9頁)
「『給与も仕事内容も新人並みでかまいません。』/日本ではこういうアピールがまったく通用しない。」(144頁)
要するに,学歴優秀でも,年齢が年功序列の枠組み(新卒資格)に入っていなければ,新入社員にはなれないし,他方で,転職に満足しているのは1割で,年功序列の賃金体系が壁となってほとんどの企業には横滑り的には入れない現状を著者は指摘している。
本書のカバーしている範囲(量も含む)と,新書という性格,なによりも著者のお家芸である「成果主義と年功序列」からして,ほぼ予想できる内容。残念なのは,(新書という制約のためであろうが)何らデータ的な裏付けがなく,感想文で終わっていること。成果主義と年功序列の基本特徴の著者による定義もない。これでは,本書は優秀な若手の恨み言だともいえる。
著作として,また学歴的に著者に不満なのが,本書の構造が,水月『高学歴ワーキングプア「フリーター生産工場」としての大学院』と類似していて,破綻していることだ。最終章では,年功序列制度下でも頑張っている若者もいますよ的な結論が導かれている。論旨構造からして,こういった結論が出てくるのは破綻だろう。編集者にせっつかれたからだろうが,こういうハッピーエンドを狙うよりは,賃金構造(=年功序列)変革提案もしくは代案があるべきだろう。「働く理由」を取り戻す(第6章)とは,(若年)労働者層の主体的な意識改革の勧めなんだが,当該層の意識分析は本書には皆無だった。
僕はもう中年(おっさん)なので年齢的には著者の攻撃対象だが,本当に若年層には現在の中高齢層労働者の30年前的存在がいないのだろうか? 30年後には30年後の20歳代に同じことを言う可能性が当該若年層にはないのだろうか? 私も転職経験者なのでよく分かるが,日本社会では転職は試練だ。よほどの人生的決算を出していれば別だが,私のようなほとんどの凡人にとっては地獄への階段ではあっても,十中八九,天国への階段ではない。年金をはじめとして政府の労働市場(転職市場)変革政策には不満もある。ミクロで見ても,私の会社の50代には平気で「昭和的価値観」(209頁)で自分より若い同僚に向かって仕事を丸投げする馬鹿もいる。一方で,20歳代は,まぁまず無責任で世間知らずだ。職歴が短いから大した業績はない。仕事への自分の態度を平気で棚上げできる図々しさを備えている。相手の人当たりが良いと見れば,職歴も年齢も上の同僚に平気で説教を垂れることができる。少なくとも私の「昭和的価値観」では考えられない。
(1,553字)
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めずらしく新書なぞを。
一応自分も3年目なので。
かなりわかりやすいし的確で良い本だと思います。
仕事していてなんかもやもやする人にオススメ。
ただし、基本的に救いの見えない展開なので問題の指摘はあれど解決策とかは載ってないのです。
精神状態が悪い人は欝になったりするかも・・・。
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年功序列という今まで日本を支えてきたシステムが、
結局、今まで我慢してた人たちが多くもらえる、という
実際に運用の段階にきたら制度そのものが疲労してきて
そのツケが若者に押しつけられていることに、若者が気づくから。
という主旨の、元富士通人事部のかたのお話。
問題点の指摘はするどいのだけど、解決策が提示されてないのが残念。
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年功序列賃金は初めのほう給料が低く抑えられている分、後になって回収するシステムであった。日本企業がこぞって成果主義を導入したのは、人件費削減が最大の目的であったため、その結果賃金は以前より抑制されるようになった。若者が会社を辞めるのは、定期昇給が廃止され後にも以前と同じ水準の賃金を得られなくなったことに不満を持ったからだ、というのが筆者の主張。
ネットストアの書評にもあるとおり、裏づけする証拠に乏しいため、説得力に欠ける。そもそも定期昇給を廃止した会社が多い、とはいったいどのデータを指していっているのか。
というより、現在の人事制度の問題点を突いているとは思うが(で、それはある程度感覚的に正しいとは思う)、それが若者の退職率の増加と結ぶついていると証明していないのが、本書の欠陥かと。
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==絶望の一冊==
元富士通人事部の著者が書いた「人事制度絶望の一冊」です。何故フリーターや既卒者が仕事に就けないのか?や年功序列制度の負の側面について鋭く論じています。なんだかイヤになっちゃいます・・・。
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仕事について日々思い悩む人が増えている今、年功序列という
言葉がいかにはびこっているか。。働くというコトについて考える1冊だと思う。。内容は多少堅いかな〜と思うトコロもあるが。。
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なんでやめるんだろうねぇ…。
なんで自分が会社やめたいのか、ご丁寧に説明されてる感じが。
転職に踏み切るためには、ためになるのかな?
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「自分の好きなこと」ならやめずに続けられる、と職探しの場ではよく言われる。
辞めるのはわがままでも我慢を知らないからでもない、一所にとどまる理由が無くなっただけ。
著者の認識は的を得てる。著者が若いだけあってか、若者の問題をよく見通してる。
ただ主張は極論気味かな。就職と言う選択肢をほぼ全否定。(否定しないって言いながら。)起業家か公務員になりなさいってこと?あんたみたいに。
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ここには日本の現代が映っている。学生や新入社員には見えていない会社の姿がある。大袈裟かもしれないが。
是非とも同年代に読んでもらいたい一冊。
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いかに一般的な会社の若い人に与えられる仕事がつまらなくて、未来に希望も持てなくて、これでは3年で辞めても仕方がない…と言うようなことが書いてある。これを読むと私はまだやりがいのある仕事を与えられている分恵まれているなあと思うのでした。
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これはいい本だ。特に高校から大学3年くらいの人にとって!!若者が数年で離職してしまうのは価値観と現実のミスマッチ、そんなことは誰でも予想がつく。この本はそのミスマッチが起こる原因は日本社会の根底に潜む問題に直結していることを訴えている。それは年功序列による「昭和的価値観」と筆者は述べているが、それが世代間格差、教育、少子化、福祉といった様々な問題にリンクしている。じゃあ我々はどうしたらいいのか?社会の価値観が変わっていくには時間が必要だ。特に若い世代にオススメしたのは新卒の時期がひとつの分岐点だと思ったから。どれくらいの会社が筆者の言う昭和的価値観に囚われているかは知らないが、既卒のチャンスは明らかに小さいし、就活してる時点で自分探ししてては遅い。時代に合わせた人生設計をするためにこの本が与えてくれる知識は大きいと感じた。(2006/12/3読了)
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富士通の元人事の人が書いてるだけあって、リアリティがあって、面白い。
わたしのトコも、まさにこの本に書かれているとおりの状況。(きっと富士通も同じなんだろーなと思った。)
日本企業の年功序列はそう変わらない。
会社を作るか、外資の会社に転職するしかないのか・・と考えちゃう本。
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今の若者がいかに駄目かと問う本ではなく、若者に優しくない「昭和的価値観」による労働制度の根底を問う本で、若者の考え方に影響を与えてくれる。一億総中流の時代は終わった現在の競争社会で、いかに生き残るか。僕は別に仕事に愚痴をもらすほど不満は持っていないが、先を見据えて警戒心を持っておくことは必要だと感じた。年配の人々の利権よりも、今後の日本を考えるならば、若い世代に託すべきだ。
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毎日残業してんのに明るい未来が見えてこないねえ。
自分のこの先を真面目に思い悩む今日この頃です。
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若者の離職を若者のせいにせず、
制度がわの問題として扱っている点が
新鮮でもあり、なるほどとうなずかされる点も多くありました。売ってしまったのは
ダンナも同じ本を買ってだぶったから。