壮大なる蜃気楼政治
2015/04/03 20:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
「私たち政治学者は政治についてあれこれ好き勝手に評論していますが、自分の政治学を現実の政治世界で実現してやろうなどともくろんでいる人は、いないと言っていいでしょう(82ページ)」
私は評論家なんて、コバンザメだと思っていましたが、「政治評論家は、いい加減だ」と自らが吐露している本を見たことがなかったので、驚きました。昔、北野たけしさんが「オレなんか海外で評価されて賞をもらったらクルっと変わった。まあ、(評論家は)いい加減なやつだよ」と批判していましたが、どの業界も評論家は、しょせん評論家だということですね。
さて、本書の内容ですが、安倍政権の今と将来を、昔の自民党体制を織り交ぜながら、政界裏話を語っています。時代の変化を考慮しない「昔は良かった」的な論調は、64歳(初老)の方の感覚だなあと思いました。
ただ、第五章(164ページ~)の無責任な小泉政治や、終章(198ページ~)の安倍批判は同感するところが多かったです。
例えば、「取り戻す日本が、一体どこにあるのか(198ページ)」・・・確かに、安倍が具体的に説明しているのを聞いたことがありません。「アベノミクスの行く末さえわかりません(199ページ)」・・・確かに、日銀の金融緩和以外、安倍は何をしたでしょうか?
また安倍の政治は「蜃気楼政治」というのは言い得て妙だと思いました。「安倍政権は次から次へと蜃気楼を見せるためのテーマを今後もぶち上げ続ける(209ページ)」のですが、「蜃気楼政治に対して「それは夢だ」と怒鳴っている民主党こそが、その前に夢を壊した張本人ですから、これまたまったく説得力がありません(208ページ)」という政治の惨状です。
「六年間、一年ごとの総理で飽き飽きした国民は、アベノミクス効果を自ら実感できなくても「何となくうまくいってる感」があれば、ある種の高揚感に包まれます(207ページ)」。安倍政権は危うさを孕みながらも、まだまだ安泰のようです。
投稿元:
レビューを見る
今の安倍政権の強さを支えいる大きな要素は、総理大臣に帰り咲いた戦後憲法下ただ一人のカムバック総理だということ。
投稿元:
レビューを見る
御厨さんがしゃべるのを聴いているようでわかりやすく、あんまり政治に詳しくなくてもすいすい読めました。とくにここ10なん年の流れからひもといていてくれて、おもしろい。
アベさんはカムバック総理だからこそできる冒険をしている。スガさん、とは。げんざいの官邸と党のかんじ。コイズミさんはぶっ壊してなにもつくらなかった。自民党の行動のウラにある心理とその行く先。アベノミクスと憲法改正の蜃気楼効果。などなど。私がそう思ってるとかでなく御厨さんが書いてることです。
投稿元:
レビューを見る
自民党を中心とする戦後政治史は結構面白く読めた。
著者の立ち位置からして、一刀両断かと思ったら、強さを認めているような表現も多々あり、ちょっと弱気になられてるのかと首をかしげる点もある。
投稿元:
レビューを見る
私は安倍くんが嫌いだが、わりと世間では受け入れられている(自分の今の利益しか考えていない人たちが支持していると思っている)ようだし、何より強運そうだ。そんな安倍政権について論じた本。
読んでみて、安倍くんに対する印象が若干よい方向に変わった。というのも、安倍くんはただただ愚直なまでに自分の道を進んでいるだけなんだと思ったから。それがたまたま時流にはまっているわけ。
でも、そういう意味では自分の考えのままにやっているがために、軌道修正や折り合いをつけるのが苦手なんじゃないだろうか。また、意気軒高なために何となく同じ方向性の人たちが虎の威を借りて過激な振る舞いをしていることによるリスクもありそう。それがタイトルにもある「盤石ゆえに脆い」ということだろう。
そしてこの一文には深くうなずけた。
「私は安倍政権、あるいはそれに近い勢力の信条体系を「『右』寄り」と呼んできました。彼らを「保守」とは呼べません。彼らは何も守っていない。「守るべき何か」を持っていないからです。」(p.211)
安倍くんは保守を自認しているようだけど、これまでの体制から「脱却しよう」「打破しよう」としていると。だから、保守ではなく右傾派(右派でもなくか)なのだ。「傾派」ということは「何となくそっちを向いている」ということで、そこもフワフワ感であり、イコール「脆さ」と解していいだろう。
投稿元:
レビューを見る
「時事放談」の司会を務める御厨さんが安倍政権を分かり易く解説してくれています。
現政権だけにとどまらず、戦後からの政権の系譜等、興味が惹かれる内容です。
投稿元:
レビューを見る
歴代総理との比較や現在の自民党の状況が分かり易かった。小選挙区後の党運営や議員の動きから、政治ニュースを見れば理解出来る。
投稿元:
レビューを見る
歴代総理大臣を総括しながら安倍政権を見直すというのは興味深かった
特に小選挙区制になって政局が大きく変わるようになったのが分かった
取っ付きにくい話題だけに軽い感じの書き方も読みやすかった
ただ本書ではちょっと経済政策を軽く捉えすぎなのが気になった