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正直微妙な話も含まれてる短編集だが中編「ジンジャーブレッド・ガール」はガチ。
幼い娘を亡くした痛手から立ち直れない女は、ある日ふと走ることに興味を持つ。何の脈絡もない行為ではあったが「取り憑かれたように」走り始めた。倒れるまで走る彼女を夫は理解できない。
夫婦は「冷却期間」を設けることとなり、エミリーは父親の別荘がある島へ移った。
普通に予想される展開としては、人々と触れ合い心の交流を果たすうちに傷が癒え、人生と前向きに付き合っていく決意を固めたところで夫と和解して終わりだろうが、そこはキング御大。まったくこちらの期待どおりにならない。
エミリーは頭のイカれた殺人鬼に遭遇する。死体を発見してしまったのだ。一度は彼に捕まったエミリーだったが隙を見て逃げる。そして彼女は走る、走る、走る。なぜ走るのか。これまで自分でも分からない衝動に突き動かされてきた彼女は、今度はハッキリと「生きるために」走る。その中でエミリーは再生していく。その姿が実に感動的。
小難しい哲学や宗教、通り一遍の感傷的なスタイルに用はない。エミリーはガムテープを剥がし、肉切り包丁を振り回し、椅子の肘掛けで男を殴打するのだ。そして追いかけてくる男を振り切るため走る。そうした具体的でサスペンスフルな行動の積み重ねがエミリーを再生させる。
説明してしまえば1行で終わることを1ページ、2ページかけて語り尽くさねば気が済まないキング御大の執拗な描写も今回は冴え渡っている。
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大好きなキングの短編集です。7編収録。大好きなキングがあの「9.11」を題材にしているなんて、それだけでどんなものか心躍らせて読み始めました。
「ジンジャーブレッド・ガール」
ローズマダー的な怖さ。追われる恐怖、逃げる女性。すごい緊迫感で次々読み止まらなかった。
「ハーヴィーの夢」 、「パーキングエリア」、「卒業の午後」
世にも奇妙な的な。しかし描写が緻密。
「エアロバイク」
すごくドキドキした。自分の体という工事現場でカロリーと糞の処理に働く4人の男たち。画家の想像の産物にすぎないはずだった彼らは、「ダイエット」によって自分たちの仕事を奪う「体の持ち主」に憤りを感じ始めていた。
絵が動く、自分が自分に殺される。現実か夢かわからなくなっていく構成が良い。
「彼らが残したもの」
9.11を偶然回避した男。しかし彼の部屋にはなぜか死んだ同僚たちのデスクにおかれた”遺品”が現れ…
アメリカに大きな衝撃を与えた9月11日のテロ。少し怖く、ミステリアスに、しかし暖かく短編にまとめているのは素晴らしいと思う。いいエンディングだった。
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今の日本を覆う音楽がプログレなら小説は恐怖の帝王S・キングでしょう。
この短編集は2008年にアメリカで出版された原書の前半部分です。
330pの短編集としてはアンバランスなほど長い「ジンジャーブレッド・ガール」などに、その元の大きさを想像させるものがあります。
読み終えて感じることは、やはり文章全体に漂う老い、です。
若き日に、勢いのままロックンロールしていたような文章とはやはり違う。
病気を抱え、深刻な交通事故にも合い、その辺は仕方なきことなんでしょうが、老いることもまた悪くはない、とも思わせるのが流石なんです。
フィクションは落ち着いた味わいとなり、老成した噺家の古典を聴くが如しで、実際、テーマはキングファンならお馴染みのモノばかりではあります。
でも「ジンジャーブレッド・ガール」の水準で楽しめる作品はそうはないでしょう。
特筆すべきは幕切れのシーンですね。
リアルアクションの恐怖譚だと思っていたら、最後はどこか宗教的な感慨すら漂うのは何故?
これがキングという大魔導師の力というモノなのか。
他には、10pと短くとも極めて鮮烈な印象を残すヒロインの独白である「卒業の午後」、ロマンティックで美しい「ウィラ」
出だしこそ読みにくいモノの、ラストの味わいが良好だった「彼らが残したもの」も長く覚えていられる作品じゃないかな。
「パーキングエリア」も良かった。
そう人生は、気の持ちよう(笑
タフだと思えばタフになれるんです、きっと。
キングもそう思っているんじゃないかな。
後は、「ジャニス・何とかスキー」というお嬢さんのメンタリティがあれば、黙示録的世界でも、サバイバル出来るでしょう。
キングの恐怖の根本は愛、だからね。
ps
最近のキングはどうも、という貴方にもおススメです。
私もそうだったのですが、やはり時代の雰囲気って恐ろしい。
今の日本だとスラスラ読めます。
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スティーヴン・キングは「悪夢のような話」が本当にうまい。
日常生活に、カチッと悪夢スイッチが入る瞬間。
あるいは、気づいたら悪夢に浸食されていることに気づく瞬間。
現実(リアル)の生活や登場人物自身のリアリティがあってこそ生きる、その怖さ。
でも、ただ怖いだけじゃないところがこの人の小説の面白さです。
列車の脱線事故で田舍の駅に取り残された乗客たち。デイヴィットは婚約者のウィラを探しに町へ向かう――「ウィラ」
子どもを亡くしたエミリーはランニングに没頭するようになる。夫と離れて訪れたオフシーズンのリゾート地でも走り続ける。そこでふと目撃したのは――「ジンジャーブレッド・ガール」
老年にさしかかった夫婦。ある朝ジャネットは夫の口から昨夜見た夢の話を聞かされる――「ハーヴィーの夢」
小説家であり英語の講師をしているダイクストラは、ある晩トイレに行こうと立ち寄ったパーキングエリアで切迫した事態に遭遇する――「パーキングエリア」
肥満気味の商業イラストレーター、シフキッツは、医者からの忠告を受け、エアロバイクでの運動を始めた。ダイエットは順調に進んだのだが――「エアロバイク」
NYのアパートメントで暮らすスコットの家に、見覚えのある物たちが突如出現する――「彼らが残したもの」
NY近郊のハイスクールを卒業した日、ジャニスはボーイフレンドのバディの家にいた。そこで目にしたものは――「卒業の午後」
中編短編織り交ぜての7編。9.11の同時多発テロにまつわる話も。
キングの巧さといろいろな怖さ、面白さが楽しめるので、長編に手が出ないでいる人におすすめかもしれない。
個人的には、「ジンジャーブレッド・ガール」の怖さと面白さが、群を抜くと思うのです。これぞキング!だと。
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いかにもキング作品といった感じの「ジンジャーブレッド・ガール」があるけど全体的な印象としては「彼らが残したもの」や「ウィラ」のじんわりしんみりするような話が心に残った。
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1312 久しぶりのキング作品。どれもキングらしく恐怖と遊びの混じった短編集です!どれも良い味出してて一番は決めにくい。。。
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スティーブンキングの夕暮れをすぎてを読みました。
哀しい不思議な出来事を描いた短編集でした。
ホラーの味付けのある物語もあって興味深く読みました。
最初の短編(ウィラ)と最後の短編(卒業の午後)は気に入ったのですが、暴力をテーマにした物語もあって全体の読後感としては自分とは肌の合わない物語だったなあ、というふうに感じました。
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2016年2月10日読了。キングの短編集、全部読んでいると思っていたらこれが抜けていた。力の入った中篇「ジンジャーブレッド・ガール」(『ジェラルドのゲーム』やいくつかの短編などの「女性受難もの」はキングの一ジャンル?)や9・11直後のアメリカ人の心情を描いた「彼らが残したもの」など、するする読めるけど読み応えのあるいつものキング節で楽しませてもらった。「パーキングエリア」の「人生では、いつどこで何があるか、どのような決断を迫られるか分からないもの」という感覚、「エアロバイク」の「はたから見るとアホらしいようなことが、当事者にとっては超切実」という状況など、単なる絵空事ではなくて面白い。
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短中編が収められた本書は、面白い作品と難解な作品の起伏が大きすぎる。途中で断念した難解な作品もある。巻末の2作がそうだ。巻頭に置いたら売れないよね。
忘れた頃にキングの文章を味わってみたくなるときがある。今度そうなったときに再挑戦してみよう。
○ウィラ 旅の途中、駅からいなくなった婚約者。こんな経験あったなあと思っていたら・・そうだった。キングはホラー作家だったんだね 鳥肌が立った。
○ジンジャーブレッド・ガール 殺人鬼に捕らえられ、脱出が成功するまでの描写が長過ぎてウンザリ。途中で飛ばし読みした。
○ハーヴィーの夢 難しい。泉のように湧き出るどうでもいい脱線の中から話の筋を見つけ出さなければならない。辛抱強く読み通した。結局、オチは何だったのか?
○パーキングエリア この短編によく出てくる脱線が的を得て退屈させない。人物造形に優れているというやつか。最後まで読んだら、なあんだというオチなのだが面白かった。
○エアロバイク 最も難しい。健康診断に端を発した健康器具乗り。登場人物が絵の中の架空の人物。幻想なのか現実なのか。映画化したものを見たら面白いだろう。
○彼らが残したもの 話の本題からやたら脳内脱線する。書き直ししたら、本題は同じでも異なる脱線を読ませられそうだ。新人の応募作なら途中で次の応募作にスキップされるだろう。途中で読むのを中断。
○卒業の午後 これも途中でウンザリして読むのを止めた。読者を引き込むどころか、序盤から脈略なき脳内脱線についていけない。
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スティーヴン・キングは、映画では観てるけど、よく考えたら小説を読んだことがないなと思って読んでみた。
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外国人作家の書く短編は意味が良く分からんものが多いな。さすがのキングもご多分にはモレず(訳者の問題である点もなきにしもあらずだけども)。
よって、ほぼ文字を追いかけるに終わった印象。
「ジンジャーブレッド・ガール」の逃避行劇はマズマズ。
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著者初読み。
短編と中編が収録されている。
ジンジャーブレッドガールというサイコホラー系の話が1番面白かった。読むにあたり、サスペンスとミステリーの違いについて、ミステリーは犯人が誰か、なぜそんなことをしたかということに重点を置き、サスペンスは犯人がどのように相手を追い詰めていくか、もしくは主人公がどのように犯人に追い詰められていくかという「様」を描くものだとどこかで読んだことが、はっきりわかる作品だった。そういう意味では普段ミステリーばっかり読んでいる自分にとって初サスペンス小説となった。
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ちょっと不思議な話し集、ホラーが読みたかったが楽しめたのでOK。
お気に入りは「彼らが残したもの」
終盤に行くにつれ思わぬ方向へぎゅぃいいいんっと曲がるもんだから思わず泣いちゃったよ。ええ話しや。
「卒業の午後」は作者本人も言ってる通り、現実的にいつ起きてもおかしくないのがうすら怖い。
風間賢二氏の解説がこれまたキングファンには嬉しいもの。
今回も満足でした。