強みは「人口」で、弱みは「面倒くさい文化」
2015/07/11 20:57
3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
「強み・弱み分析」という企業分析手法で、日本の強み・弱みを明らかにし、観光立国に向けた提言をしている本です。確かに日本の弱みにのみ焦点を絞り、巷に溢れる日本礼賛本との差別化を図っています。ただ、アトキンソン氏も自ら言っているように「いくつかの強みと弱みにまとめるというのはかなり強引な話(181ページ)」だったようです。
アトキンソン氏によると、日本の強みは「人口」だけ。つまり、日本の戦後復興は、相応の「人口」を擁していたから当然に成し遂げられたもので、「奇跡」ではない(第一章)とのこと。
一方、弱みはたくさん指摘されています。「効率の悪さ(第二章)」「無能な経営者(第三章)」「面倒くさい文化(第四章)」「ロジックに弱い(第五章)」等々。第二章、第三章は昔から言われてきていることで新鮮味はありません。第四章では、日本人は人口増に胡坐をかき、何も工夫をしてこなかったと指弾しています。それにしても「面倒くさい文化」で、何もかも一緒くたにぶった切られるのは、たまったものではありません。
第五章はもっと趣旨が分かりません。来日後のフラストレーションを一気に爆発したというところでしょうか。例えば「日本は四季がはっきりしている(124ページ)」と言うのは悪いことですか?別に他国の四季を否定している訳ではないと思うのですが。また「和食ブーム」と盛んに煽っているのはマスコミだけですし、一般国民はアレンジ力を自慢(130ページ)してはいません。挙句には「治安の良さ」にまでケチをつける始末(140ページ)。確かに、最近のマスコミの「日本礼賛」には鼻白むものがありますが、そこまで目くじらを立てなくても良いのではないでしょうか。皮肉屋の本領発揮です。
第六章(古いものが残っているという特徴)、第七章(個人主義が強い日本)での主張は、もっともだと思いました。
全体として、最近流行の日本礼賛本とは一線を画し、問題提起をしようという心意気だけは伝わってきました。
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日本文化を愛し、日本社会と日本経済の歪を鋭く、イギリス人らしくシニカルに撃つ著者の、ベストセラー『イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る』に続く第二弾!
ゴールドマンサックスのカリスマアナリストとして、バブル崩壊時、日本の金融機関の不良債権の本当の額をだれよりも早く指摘した著者が四半世紀見続けた日本社会の「強み」と「弱み」を指摘する。また、前著で説かれた日本論や観光立国による成長戦略に寄せられた批判にも応える。
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下アナリストで、元伝統建築の社長という移植の経歴を持つ著者。
日本は特別でも突出しているわけでもない。
なるほど、そこはその通りかな。
キーワードを「面倒臭い」にもって言ったところも面白いが、面倒臭いことを避けるために、もっと面倒臭いこともあるわけで、なぜそっちを選択するのかはあまり考察してないようだった。
アナリストの視点、というのも面白いが、なんとなく、違和感は残ったな。
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元ゴールドマンサックスのアナリストで現小西美術工藝社(文化財補修を行う職人大工)社長が、客観的事実を積み重ねた極めてロジカルに日本の現状分析と今後の課題を克服するための方策が綴られている。
主張をサポートする図表も的確だ。辛辣な指摘もあるが、読んでいても不快に感じることのない表現や言い回し。
彼によれば、日本人の面倒くさい文化やwooly thinking、客観的事実に基づかない感覚的施策が、様々な成長機会を妨げてきたのだという。(詳しい説明は著書にて)
論理明快、突きつけられる事実は事実であるがゆえに溜飲を下げるしかなく、日本の評論家や知識人と称する人々の意見もいかに散漫な思考が混じってしまっているのだろうかと感じずにはいられない。
また、教養がある人の書いた文章なのか、余談的な箇所にも情報が詰まっており、興味深く読み進められる。
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丁寧な言葉遣いで読みやすかった。そんなに丁寧で、謙遜しなくてもいいのにと思ってしまうほど。
デービッドさんの指摘は、共感や納得する部分は多い。なにより、わかりやすい数字的根拠を示してくれるので納得しやすい。
GDPは人口との関わりが深い、というのは確かだと思う。そりゃそうだ。
日本の強みは、他の文化を取り入れてアレンジすることではなく、足し算していく、というのも納得。とはいえ、近代、お城や寺を次々と壊した時期もありますが…
あとは、おもてなしを外国人に押し付ける、というのが新鮮でした。言われてみればそうかもしれない。
最近のおもてなしには私もなんだか納得できていなかったので、妙に腑に落ちました。
またここ最近の日本がすごい、という風潮は気持ちが悪いと思っていたので、勝てるところだけ見て判断するのは危険、というのに共感。
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日本人が一般的に「強み」だと主張しているところに、論理性が足りないこと(=wooly thinking)、客観性が足りないことが数字を基に検証されているのが面白かった。
こういったロジカルな議論が乏しい国で、今後グローバルに競争していくのが難しいのではとやはり感じてしまう。日本的な「井の中の蛙」は今後、様々な局面で日本を世界から取り残してしまうのではないだろうか。
日本人が実は個人主義が強い、というのは同感である。文句は言うが、自分ではやらない、自分に飛び火してきて欲しくない、というのは、税金、福祉、国づくり、様々な場所に見て取れる。
全体的に「強み」よりも「弱み」と若干の批判に重きが置かれている気がした。イギリス人ならではのシニカルさか。
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内容は面白いし提言もその通りなのですが、日本人としてうまく心に響かない内容だなぁ、と個人的には思った。非常に不思議な感覚に包まれた。文化の違いなのか、オイラが日本人の意識に毒されているだけなのか。
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著者の前著、「イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る」は、著者自身についてが8割、その他が2割であったが、こちらは著者自身が2割、その他が8割になりつつも内容は似たようなものです。
ただ、どちらにも日本を良くしたいと願う著者の考えがロジカルに書かれています。
彼自身を知りたいなら前著を。日本を良くしたいとの思いを知りたいなら本書を読まれればいいと思います。
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まぁ、参考にはなったが、何となく今ひとつの感想。
面白いのは、面白いのだけれど、もう少し文化的側面からのアプローチを知りたかった。
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人口こそが経済の原動力
ただし、先進国になるにはインフラ整備、高い教育水準、技術力が必要
日本の非効率性
完璧を求める国民性→不必要な業務量の増加
打ち合わせ人数の増加
日本のカレーは英国生まれ
英国の料理のレベルが低かったのは禁欲主義を掲げる清教徒の教え、質素を美徳とされた背景
観光業がこれからの成長産業→新興国の台頭、金持ちは海外旅行等の娯楽に金を使う
観光業を栄えるには量と質の問題がある
量。日本への旅行客数は世界26位。トップのフランスの1/8、香港の1/2。
質。お金を落とす外国人が来てない。日本に来る観光客は消費金額か少ない韓国人、台湾人が多いため。オーストラリアやカナダ、イギリス、フランスが消費金額の上位。⇆ただこれから伸びるのは韓国とか?
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ロジカルで分かりやすかった
ラーメン(中国)や天ぷら(ポルトガル)の日本流アレンジを自賛するのに
海外で寿司がアレンジされると否定的な日本人ってのは笑えたw
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この本の半年前に出版された同著者の本、「イギリス人アナリスト日本の国宝を守る」が私としては★★★★★だったので、この本も楽しみに購入。読み始めて唖然茫然。前著ととくに前半3分1くらい、GDPの話や興銀のことなど、まったく同じではないか。両書とも講談社アルファ新書なので、製本ミスかとも思ったほどだ。
日本を代表する超大手出版社、講談社でありながら、この体たらくは、どうしたことか。担当編集者の責任は重いと思う。こんな著者と本づくりをないがしろにして(読者もなめて)いるから出版界が地盤沈下する気がする。
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勤勉、礼儀正しいなど、型通りの日本人論に耳が慣れすぎて本質を自問すること無く過ごして来ました。「数字」、「面倒くさい」、「人口」などのキーワードで日本人の、私達自身の『強み弱み』について気づきを与えてくれる良書。
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今まで言われてきたのと同じことだったから途中辞め。
日本は国際比較(欧米比較だけど)が大好きで
外国は外国はというのが惨めだというのはやっぱり
そうなんだというのが解ったことは収穫
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とても考えさせられる。会議が長いとか、観光資源を活かしきれていないとか、耳に痛い。変化を受け入れること、効率を上げること(一人当たりのGDPという視点もおもしろい)を通じて、今問題になっている長時間労働は変えられるんじゃないかとずっと思っていた。それを改めて文字として、ちゃんとした裏づけを持って語られており、興味深い。