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あー、なんて楽しい時間だったんだろう✨
紫式部がまだ宮中に仕えていない時から物語は始まり、最後は彼女の死後となります。
そのなかで源氏物語の謎である『かかやく日の宮』や『雲隠』などの謎解きの言葉が最高に面白かった(*^^*)
続きも気になりますが、この作品は凄い!
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平安朝の人間模様を下敷きにしたコージーミステリー。紫式部が安楽椅子探偵。ゆっくりした気分で読める。
藤原実資の述懐の部分も効いてて面白い。
「かかやく日の宮」の巻を道長が誰を使って葬ったかの種明かしは、あーー!そうかそうか!という感じ。
后になるのは源氏の姫ばかりで藤原氏の息女が時めかない源氏物語を、左大臣道長から守る方法として紫式部が彰子のもとに出仕し、ついには道長も執筆の援助者(パトロンとしてだけでなく)として引き入れ『雲隠れ』決着をつける下りは、したたか。
イメージより明るく晴れやかで、強く闊達とした、一貫した紫式部。
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本を手にしたときは厚さにちょっとビビりましたが、読んでみるとあっという間でした。
紫式部が主人公なのか、それとも光源氏がそうなのかと思って読み始めたら、猫好きの女童(めのわらわ)、12歳の少女「あてき」目線で話が進む。
あてきの仕えている御主(おんあるじ)が藤原の香子(かおるこ・のちの紫式部)である。
当初は知る人ぞ知る程度の作品であった『源氏物語』。
しかし宮廷生活を知らない彼女の書く物語は、貴族の暮らしぶりの細かな部分がまちがえているとのそしりも受けていた。
だから、喜んで宮中に出仕したのかと思いきや、道長からの出仕要請をかたくなに拒み続ける香子。
ではどうして紫式部は中宮・彰子に仕えることになったのか。
というのが大きな謎として、消えた猫の謎とか、誰もいない密室から聞こえてきた笛の音とか、文箱の中身紛失事件とか、日常の小さな謎を、洞察力に長けた香子が推理していく。
そしてこれらの謎を繋ぎ合わせたとき、大きな謎が解けてくるという壮大な仕掛け。
あてきは、自由に動き回ることのできない貴族の女性である香子の目となり手足となって、その推理を支えるとともに、彼女にも解決しなければならない問題があって、私としてはこちらの方が面白かった。
木登りやかけっこが得意なあてきが、初めて負けた相手が岩丸。
それ以来岩丸のことが気になってしょうがないのだけれど、彼は何か問題を抱えているようで、なかなかゆっくり言葉を交わすことができない。
追いつめられているように見える岩丸をなんとか救おうと、あてきはあちこち岩丸を捜しまわる。
あてきは気づいていないけど、それを「恋」というのだよ。
かわゆい。
あてきの行動からすべてを推察した香子は、ことの顚末を伝えるべく彰子の元へ行く。
彰子とつながりを持った後も、出仕を断り続ける香子の本心とは。
”自分の主のためには他人をおとしめることもしなければならない。わたしにそんなこと、できようはずもないのに”
え?
『紫式部日記』で結構人の悪口書いていませんでしたか?
この作品の紫式部は口が堅く、人を嫌な思いにさせることは絶対に言わないし、しない。
ある時届いた手紙を読んで、ショックを受けたらしい香子にあてきが「誰が何と書いてよこしたのか」を尋ねても答えようとはしなかった。
”どこからのとも、何が書いてあるとも、話してくれる気はなさそうだ。使用人がそれ以上ねだるわけにもいかない。阿手木(あてき)は部屋を出ながら決心した。あとで見てやろう。”
ブラボー。
『源氏物語』の失われた一巻『かかやく日の宮』。
私はこのタイトルに、ずっと違和感があった。
だって長いでしょ?
『桐壺』とか『若紫』とか『明石』とか『末摘花』とか『花散里』とかに比べると、明らかに。
だから『かかやく日の宮』なかった説を取っていたのだけど、この本を読んでいる時ふと思ったの。
『輝日宮』なんじゃね?
なら、ありかも。
せっかくそこまで思ったのに、この作品では『かかやく日の宮』という表記であることが肝心なのね。
むむう。
12歳の少女として作品に登場したあてきは、物語の最後、夫に先立たれ寡婦として今は亡き紫式部の娘と再会する。
道長の剣呑さや彰子の賢さもいい味出してます。
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紫式部が探偵役を務める平安ミステリー。中宮定子の消えた猫の謎、堀河院真夜中の笛の音の謎、といった「日常の謎」を解決しながら、自身の作品の失われた一帖「かかやく日の宮」にまつわる大きな謎の解明に挑む。すごく面白かった。
なお、紫式部という呼び名は本書では使われないが、ややこしくなるのでここでは紫式部と書くことにする。
三部構成の第一部は、紫式部のもとで働く女童(めのわらわ)あてき視点で進んでいく。十二、三歳くらいだろうか。西の京のはずれで生まれ、母を早くに亡くし、ばばさまに育てられ、十歳のときに紫式部の屋敷にきたというあてきは、猫好きのおてんば娘。お食事を運んだり、お手紙の取り次ぎをしたり、御主(おんあるじ)の話し相手になったりとお仕えしながらも、迷い猫を見つけては屋敷に連れてきて飼い慣らしたり、こっそり屋敷を抜け出して遊びに行ったりと、意外にのびのびと暮らしている様子が面白い。
あてきの初恋のゆくえと、中宮定子の消えた猫の謎解きとが第一部の本筋だが、それらを楽しむうちにすーっと物語の世界に入り込めていて、紫式部の人となり、左大臣藤原道長の政治力、後宮の人間関係などがわかってくる。それがこの後に控えるメインディッシュを楽しむための綿密な仕込みになっている。
紫式部年表(ただしどれも正確なところは不明)と、本書で描かれている年代は下記の通り。
九七三 誕生
九九八 藤原宣孝と結婚
九九九 賢子誕生 ←【第一部】
一〇〇一 宣孝と死別
一〇〇五 彰子宮に出仕 ←【第二部】
没年は、一〇一四年説から一〇三一年説まである。本書では、【第三部】で語られる一〇一三〜一〇二〇の間に、出仕をやめ、亡くなっている。
第二部、第三部と時を経るに従って、紫式部もあてきも、人生のステージが移り変わっていっているのがわかる。第二部ではついに、失われた一帖「かかやく日の宮」の謎に迫り、紫式部と道長の関係性にも変化が見られる。そして第三部は「決着」。紫式部は自分の作った物語が見舞われた運命に対しどう決着をつけたのか。また、「事はどのように成し遂げられたのか」という謎に対するミステリーとしての決着も鮮やか。見事としか言いようがない。
丸谷才一と同じ問いを立てながらも、全く異なるアプローチでの解決を見せてくれた。今この瞬間の気持ちとしては、森谷明子さんの描いてくれた世界の方が断然、断然好きだな。でも、人々の「読む楽しみ」や物語作家の「書く苦悩と覚悟」に対する強い思いはどちらにも共通していると感じた。
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あの紫式部が安楽椅子探偵!
3章の時間の流れも良い。
もちろん源氏物語のあの巻とあの巻の謎への解釈が良い。
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毎月参加している横浜読書会 KURIBOOKS で2020年から始まった源氏物語の読書会。
1年で源氏物語を読み通すというのを三年続け(つまり、3回読んで)、今は4年目(4週目)
ここにきて、だんだんわかってきた気がする。
というか、源氏物語の周辺本を読む余裕が出てきた。
紫式部の生きていた平安時代を舞台に、
行方不明になった中宮定子の愛猫探しなどの小さな謎を、紫式部がホームズ役となって解決していく、連作短編でありながら、各短編を通して「源氏物語」の研究者の中でも意見が分かれる 失われた帖「かかやく日の宮」は存在したのか?という謎も追う。というか、作品としてはこっちの謎に挑むというのが本編かな。
実際には「かかやく日の宮」の謎だけではなく、なぜ「雲隠」の帖が、題名だけが残り、本文が無い謎も解いてる。
源氏物語を読んでいなくても、読めるけれども、読んでいたら、「かかやく日の宮」の帖がなぜそんなに重要視されるのかがわかるかも
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平安時代の謎解きにどっぷり浸かった鮎川哲也賞受賞作。紫式部がその名になる前、源氏物語を紡ぐその裏で何があったか、物語がどう伝わったか。源氏物語や紫式部を巡る謎解きも楽しく、全てわかった時には人の心や事情や立場、色んなことがこの時代にもあり深さを感じ取れる。知らないことばかりの平安時代の人々の背景も含めた物語が雅で華やかで、なのに人間臭くもあって読むのが楽しかった。失われた一帖、「かかやく日の宮」への解釈が特に素晴らしい。そしてあの時代、本はみんなで写本したことがとてつもない労力で想像するだけで舌を巻く。