今読まれています、昔の作品ながら
2023/10/31 16:43
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近新聞の書籍広告に有吉佐和子さんの名前をよく見かける。
有吉さんが亡くなったのは1984年だったので、さすがに新刊ということはない。
ちなみに有吉さんが亡くなったのは53歳だったというから、なんとも惜しい死であった。
で、書籍広告だが、有吉さんの代表作ともいえる『恍惚の人』でも『紀ノ川』でもない、
『複合汚染』でも『華岡青洲の妻』でもない。
1976年に「文藝春秋」に連載し、その後1977年に単行本化、
その後1980年に文庫化された『青い壺』である。
新聞広告によれば、37万部超売れているという。
『三千円の使いかた』の作者原田ひ香さんが「こんな小説を書くのが私の夢です」という
推薦文を書いているが、そのせいだけとは思えない。
ただいえることは、抜群に面白いということだ。
ある陶芸家が生み出した青磁の壺。
その壺をめぐる13篇の連作短編集で、壺がどのように次の話とつながっていくのか
それ自体面白い。
お祝いに届けたり、譲られたり、盗まれたり、骨董市で売り出されたり、
果ては修道院の修道女とともにスペインを渡っていくことになる。
最後には著名な美術評論家とともに戻っていくのだが。
その場面場面に人生の苦みが描かれている。
ただその苦みは嫌味ではない。
人生はそんな苦みを隠し味にしておいしくできあがっている。
決して古びない。
有吉さんの筆はそんな人生を楽しんでいるかのよだ。
だから今でも読み継がれる、名作だといえる。
投稿元:
レビューを見る
一つの壷の冒険と、それを取り巻く人々の人間模様。連作短編集。
昭和のお話だけど、人の心はほんとうに今とさして変わりは無いなぁと。
もしかしたらそう言う部分は太古からずっと変わらないし、これからも同じ事を繰り返していくんじゃないのかしらん。などと思ってしまった一冊。
投稿元:
レビューを見る
人の手から手へ渡っていく青い壷。受け取る人たちの、1つ1つ独立しているのに鎖のように繋がっている、それぞれの物語。青い壷のような傍観者になると、人の生活ひとつひとつにドラマがあって、けれどそれはきっと、当事者にはただの日常なのだ。
投稿元:
レビューを見る
青い壺の行く末に絡めて、あの時代の様々な人生のひとこまが描かれます。何とも懐かしい…。増上寺前のフレンチレストラン、はあそこね、と分かるのも嬉しいし、焼物と桐箱作りを趣味としていた祖父のことも思い出しました。少し時代が古いけど、また読んでみたい作家さんですね。
投稿元:
レビューを見る
青い壷が転々と渡されていき、その先の家庭の模様が描かれていく。
戦後・結婚・定年・子育て・老人・・・・・経済成長期あたりの家庭(女性視点)の実情がよく分かった。
焼き物って価値が判断しにくいから揺れ動く物事や心情に寄せるのにびったりなのかも。
投稿元:
レビューを見る
青い壺。美しい砧青磁の数奇な巡り合わせは、その壺を手にする様々な人間の人生に関わり全く異なる意味を与えられる。
物言わぬ青磁は、物言わぬからこそ美しく神秘的な魅力を持つ。
物語が繋がってゆく時間は、戦後色が色濃く入り込むのに少し時間を要したけれど、家族の気持ちの錯綜や文化への目のやり方は理解できることも多い。
十三篇の物語は鮮やかにテンポ良く、十年を駆け抜ける。
どの人の手元でも必ず“特別”、黙ってその扱いを受けてきた青磁の壺はこれからもまだ留まらずにゆくような気がする。
初めての有吉佐和子さん。
とても素敵でした。
投稿元:
レビューを見る
本の帯には”幻の名作、復刊”とありますから、話題作を提供し続けた有吉さんの著書をその昔随分読んだ読者としては、読まないわけにはいきません。 その陶芸家が作った青い壺は自分でも思ってもみなかった出来栄えになり、人々の手を渡り歩いていきます。 お話は発端となる創作の経緯で始まり、その後の変遷が13話に区切られて繰り広げられます。読んでいくうちに途中でやめられなくなり、ついつい最後まで短時間で読み切ってしまいました。 市井に暮らす人々の平凡な日常生活を壺は見ているのですが、そこには人間の持つ本性(善悪両方)が垣間見えてスリリングな展開となっています。 この本の初出は昭和51年からのようですが、老婆(今でいう高齢者)が結構登場します。今読んでも遜色のない書き方ですから、あの時代に先がけて「恍惚の人」を世に出した有吉さんの片鱗を見た気がしました。
投稿元:
レビューを見る
一つの青磁の壺が、いろいろな人の手にわたり、様々な戦前、前後のエピソードが紡がれていく様がよかった。主人公は初老の女性が多く、老いてこその人生観が読めた。上品で、たおやかな作風。
時折登場する食事は、とても美味しそうだった。
投稿元:
レビューを見る
無名の作家が作った青磁の壺が売られ盗まれ十余年後に作者と再開するまでにその壺に関わった人たちの話。
壺の行方が気になってなかなか読むのをやめられません。
投稿元:
レビューを見る
新聞の書評から。
ひとつの美しい青い壺が次々と様々な人の手に渡っていく。
渡っていった先のそれぞれの人々の人生が描かれる。
恋愛、夫婦関係、仕事などなど人の営みの悲哀はいつの時代も不変なのかもしれないけど、残念ながら自分が共感できる物語がなかったな。
ちょっと、古いかなと思ってしまった。
病院で掃除婦をしているおばちゃんが、病室でいらなくなったバラの花を乾燥させて枕を作り、その枕に頭を乗せて「幸せだ」と眠りにつく。
これはいい話だったなぁ。
投稿元:
レビューを見る
美しい名も無い青磁の壷。その青い壷がさまざまな人々の手に渡り、その人生に関わっていく人間模様を描き出す。美しい青い壷は主役ではなく、その人々に物言わず脇役のように寄り添って、人間ドラマが連なっていく。秀逸な小説。
投稿元:
レビューを見る
物は産まれるときにも物語があるが、人の手に渡って使われていく事で物語が広がっていく。
時に製作者の意図とかけ離れたとしても、そういうものなんだろうな。
それにしても、それほど昔の話じゃないのに登場人物の生活スタイルや考え方が今とかけ離れている気がしてそら恐ろしさを感じた。
投稿元:
レビューを見る
やはり有吉佐和子にはずれなし、という感じ。青い壺を「主役」にした連作短編集。つながり方がうまい。特におばあさんたちの京都旅行の話が好き。有吉佐和子の、女の世界、どの世代を描いても面白い。本当にもっと長生きしてたくさん書いてほしかったと思います。
投稿元:
レビューを見る
青い壺をめぐる13篇の人間模様。喜びも悲しみも全てが人生である。
有吉佐和子さんといえば、私の記憶では「笑っていいとも」を番組ジャックしたとんでもないお婆ちゃんという印象しかなかった。今回初めて作品を読んでみて、気品ある人間ドラマの面白さに感服した。是非、他の作品も読んでみたい。
投稿元:
レビューを見る
手元を離れていった私の作品はこれからどのような人と巡り会うのだろう。もの作る人間として読んでいてとてもおもしろかった素敵な作品です。