日本一易しい核兵器と原子力の解説本
2015/10/11 12:58
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:瀬戸内在住の猫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
物理学者で研究機関の准教授でもある著者が書いた「物理学から見た核兵器の仕組み」の解説本。
核問題の議論では常に前面に出ている「政治的・倫理的な観点」からの解説は一切無い替わりに「核兵器はどうやって核爆発を起こすのか、そしてどんな危険があるのか」を物理学的な観点からきちんと易しく解説しています。
本書の本題は核兵器ですが、内容的に原子力と重なる部分が多いため、本書を読めば「原子力と核兵器はどういう仕組みで動いていて、どの様な危険があるか」を一から理解する事が出来る点で、日本語で読める本としては最高の一冊だと思います。
以上の点で、本書は反核・反原発推進論者にもおすすめできます。一読しただけで原子力・核兵器に関する議論のレベルが間違いなく向上するでしょう。
と言う訳で、文句無く星5つの評価をさせて頂きます。
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講演を基にしたかのような平易な口語体で、これまた極めて平易に核兵器の物理学的な原理について説明している。
核兵器への賛否によらず、核兵器の科学的な基本知識を身に着ける上で呼んでおいて絶対に損はない内容だと思う。
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原発と原爆がどう違うのか、素人の僕でもとても分かりやすかった。
まだまだ核兵器は進化し続けていることを知り、使うことが無いような世界であることを願いたくなる
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素粒子物理学者による,核分裂・核融合とその暴走,それを実現する仕組みの解説。広島に落とされたリトルボーイから,洗練された水爆W88まで,譬喩を交えつつ明快に説いていく。
イニシエーターはどうやって中性子を解き放ち,核分裂を起爆するのか,コアを包むタンパーが,中性子をいかにして閉じ込めるのか,燃焼速度の異なる火薬を使った爆縮レンズの仕組みはどんなものか,ガンバレル型はなぜ安全性や反応効率が悪く,現在では爆縮型のみ採用されているのか,ウラン濃縮にはどんな手法があるか(化学的手法があるとは知らなかった),重水炉や黒鉛炉でいかにしてプルトニウムを生産するか,核分裂爆弾には出力の上限があり,熱核爆弾には上限がないのはなぜか。こういった素朴な疑問が氷解するはずだ。一般向けの講演をもとにして基礎から説き起こしているので特別な前提知識は要らない。この分量でこれほど核兵器の核心に迫れるのは,この本を措いて他にないだろう。(あったら教えてください)
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核兵器は弾頭【爆弾)本体そのものよりも、その運搬手段の方がより重要。核兵器が初めて登場した時、爆撃機に搭載して、そこから投下するしかなかった。
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『すごい実験』 や『すごい宇宙講義』など、素粒子物理や宇宙論を分かりやすく説明する多田さんが原子力発電や核兵器の原理について説明したもの。はっきりいってとてもよく分かる。
原子力発電や核兵器が現在ある形である理由がよくわかる。天然に含まれる同位体の崩壊のしやすさや物質の中性子の吸収のしやすさなどが制約条件となり、そのために原子力発電所にせよ核兵器にせよ多大な科学的・工学的努力とコストをかけて作られていることが分かる。
たとえば、原子力発電なり核兵器のコアとしては、ある程度資源として安定して存在し、あとは中性子を与えるだけで分裂するくらいに適度な不安定さを持った元素である必要がある。この条件に合致するものは、天然ではウラン235、人工的に製造することができるものでもウラン233、プルトニウム239、プルトニウム241しかないと。ウラン233はトリウムサイクルで利用されるが、プルトニウム240は分裂しやすすぎるとか。
連鎖反応の必要条件は中性子によって引き起こされた反応で、引鉄となった中性子よりも多くの数の中性子を放出することである。そして、臨界状態とは中性子1個に対して1個の中性子が放出されるに至った状態をいう。この放出される中性子は、速い方がいいのかと思ったら、遅い方が反応しやすいらしい。この反応速度を、制御棒やホウ酸などで吸収をすることで制御する。チェルノブイリの事故では、この制御棒の操作の失敗が原因だった。また臨界に達したという点では、福島の事故とは違うらしい。
最後は、原子力発電の話から核兵器の話になり、ウラン燃料を用いた原子力発電からプルトニウムが生産でき、これが核兵器に使うことができるという。実はウランを核兵器に使えるくらい濃縮するのは大変で、プルトニウムを作る方が簡単だという。実際、長崎で使用されたプルトニウム型はロスアラモスの砂漠での実験で使用されたが、広島のウラン型は濃縮ウランがもったいないので、爆発実験は行わず実戦で初めて爆発させたのだということを初めて知った。
原子力発電所内で核兵器に使えるプルトニウム239を効率的に作るためには、中性子を吸収しにくい材料を使う重水炉や黒鉛炉の方が好ましく、これらの炉を持っていると核兵器開発が疑われるという。チェルノブイリも黒鉛炉であった。そのため、原子力発電所を建設する場合は核拡散を防止するため軽水炉を勧めるのだと。この辺りの話、北朝鮮やイランで出てきたような気がするが、初めて腑に落ちた。
ついでに、天然のウラン238からたくさんプルトニウム239を作るための高速増殖炉の話にも触れられていた。日本のもんじゅはどうもダメだったが、ロシアでは臨界も実現して、2020年に稼働させるらしい。
福島の事故以来原子力についてはいろいろな言説が生み出されたが、どうもよく分からなかった原子力発電を持つことが、核兵器開発の能力を持つこととつながっているといった話が論理的にやっと分かった気がする。講義がベースになっているようだが、この人分かりやすく説明するのがうまいんだなと改めて思った。
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理系音痴にもわかる物理学による核兵器の解説書、おおむね解りやすいという書評が多いが、どうしてどうして凡人には結構ハイレベル、それでも読書前より少しは理解力が高まって夷るような気になれる本。
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核融合
高温にして電子が取れてプラズマに。
1億℃くらいに高温にして運動速度を上げると原子核がくっつく。
核分裂
ガソリンの燃焼の100万倍、TNT爆弾の1000万倍のエネルギー。
中性子を減速材でゆっくりぶつけ不安定にし、分裂させる。
制御棒
中性子を吸収。
消費される中性子=生成する中性子:臨界状態
中性子が増加:超臨界状態。極めて短時間に行うのが核爆弾
ウラン235と原子炉で作られるプルトニウム235のみが制御しやすい実用燃料。
ガンバレル型原爆
砲身状の構造でウラン235のコアどうしを離して詰め、片端の起爆剤でぶつける。反応効率低い、安全性に劣る。広島に投下。
インプロージョン型原爆
球状で内側に向かって爆薬を爆発させ、押し固め、過早爆発を防ぎ、ベリリウムの中性子がプルトニウムを臨界にさせる。長崎に投下。現在のすべて原爆の方式。
水爆
原爆を起爆装置にした重水素の核融合。
中性子爆弾
中性子は金属を透過し水で出来た人間にて吸収される。
核融合による中性子のほうが高速のため水爆型になる。
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最後の章の「核兵器」にまで展開する話の進め方が秀逸だ.連鎖反応を制御する減速材や冷却材の所はよく理解できた.重水と軽水の話は良かった.長崎に投下されたインプロージョン型の原子爆弾の説明は,現役時代の仕事で一部の部品に馴染みがあり,楽しく読めた.このような知識は常識として持つべきで,知ろうとしない輩がとんちんかんな議論をしている場面が多々見られるのは,嘆かわしいことだ.
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核物理学の精髄である核兵器の原理を噛み砕いて、説明。原子力発電、IAEAなどについての知識も得られた。本当に無知だった。
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核兵器の原理を解説している。
著者のこと全く知らなかったのだが、画像を見て愕然としてしまった。金髪のロン毛。全く似合ってない。
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題名に思い切り『核兵器』とあるが、80%位は核分裂反応の仕組みの解説と、原子炉の解説。最後の20%位が、核分裂反応と核融合反応の核兵器への応用の解説。
今まで読んだ中で一番、原子核、核分裂反応、核融合反応についてわかりやすかった。要約わかってきた気がする(また後で読み直そう<講演と違って書籍になると読み直せて便利
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核分裂反応と核融合反応の仕組み、制御の仕方、チェルノブイリや福島の事故の違いなど、どの説明もとても分かりやすく、テンポがいい。
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多田将 「ミリタリーテクノロジーの物理学」
原子の構造から 原子炉や核兵器の仕組みまで わかりやすく説明した本。文系でも 原子炉と核兵器の相違点、エネルギーの正体、核兵器の原理を理解できる良書
環境や安全性への不安から 国際社会だけでなく日本の世論も脱原発や核不拡散の流れにあると思うが
物理学的な原理だけを知ると エネルギー技術としての魅力はある。
この本を読む限り、民事利用の原子炉と 軍事利用の核兵器(原子爆弾)の原理は同じ。
核兵器を持たずとも、原子炉を持ち、原子炉の臨界点管理について 豊富な技術と経験を持っている日本は 原子爆弾を持っているに等しいように感じる。
潜在的核保有としての外交的脅威はあると思う。
開発と商業化の途中にあるニュートリノに期待するより、原子力の暴発を防ぎ、暴発を止める技術はこれ以上進まないものかとも思う。原子より小さいニュートリノを使って 破壊できないのだろうか?
強大なエネルギーの正体、核分裂や核融合といった核兵器の原理は 原子の構造がわかれば 単純だった
*エネルギーの正体=陽子と中性子をくっつけている 原子核の「強い力」と電磁力の結合エネルギー
*核分裂=大きくなりすぎた原子核を分裂したもの。核融合=小さな原子核が合体したもの
原子爆弾と水爆の違い
*原子爆弾=核分裂させる核兵器〜 高濃縮ウランを燃料とすることにより、一瞬で超臨界状態をつくる
*水爆=核融合させる核兵器〜超高温プラズマ状態を作り融合させる。核融合の方が手間がかかるため、核兵器や原子炉は核分裂型が主流
原子の構造
*原子核は中性子と陽子の組合せでできている
*陽子と中性子を結合させる力と陽子の電磁力のバランスがとれていなければ原子核として安定しない
*原子核の「強い力」〜電磁力より強い力を意味〜陽子と中性子を繋ぐ力
*電磁力は陽子にしか働かない反発力〜強い力は陽子、中性子とも働く繋ぐ力
*強い力は、少し離れると強くなり、近すぎると弱くなり、離れすぎると働かなくなる