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ここ最近、最早、何が発端なのか、分からなくなってしまった程、食系の漫画は氾濫しつつある
漫画家の先生方は苦心して、その作品を世に出しているから、私ら“読むだけ”の側が、適当に「ありきたり」だの、「似たような作品がある」と言っちゃいけないんだろうが、それでも、やっぱ、各々の作品に大きな差があるかっつーと微妙になってきたのは現実じゃないだろうか
なればこそ、この『クミカのミカク』は、やや食傷気味なのを感じ出していた私にとっちゃ、衝撃的だった。まだ、連載が開始したばかりで、コミックスこそ出ていないが、今現在、月刊アクションで連載されている、ぽんとごたんだ先生の『桐谷さん、ちょっ、それ食うんすか!?』も結構、インパクトがあるっつーか、既存の概念をぶち壊す食漫画だが、私のハートをブッ叩いたパンチ力、それは、この『クミカのミカク』も負けていない
興奮しすぎて、前置きが若干長くなってしまったが、ぶっちゃけ、『クミカのミカク』には目新しい料理は出ない!!
私に斬新だ、そう感じさせた理由、それは言うだけ野暮だろうが、ヒロインのクミカだ。表紙で、これでもかってくらい、大口を開けて食事をしている彼女を見れば、一目瞭然だが、異星人(個人的には、宇宙人よりかは異星人って呼称の方が割りかし好きだ)である
クミカは基本的に、経口で食事をせずとも、大気中から自分にとっての栄養を補給できる種族なので、これまで、地球の食べ物を口にした事がなかった。そんな彼女だからこそ、とある理由で地球の食べ物を口にし、その美味しさに身を貫かれた瞬間のリアクションが、これまたっ、もうっ、カワイイんですわ!!
お約束通り、クミカはたちまち、食事って行為に夢中になっていくんですが、食べていなかった期間が長かった分、その反応の良さがちっとも色褪せない。むしろ、知らなかった味を覚えていく度に、可愛さが増していくっっ
私ら地球人が当たり前すぎて忘れちゃっている、食事がどんだけ生きていく上で大切か、を教えてくれる、気付かせてくれる、思い出させてくれる、心が満ちる食系の漫画
ちょっとばかし、内容が違うけど、『たべるダケ』(高田サンコ)が好きな人は、確実にハマれるんじゃないだろうか
また、単にクミカが「美味しい」を知って可愛くなっていくだけでなく、それまで、ギスギスとまでは行かないが、無自覚に壁を作っていた職場の同僚らと、食事を一緒に取る事で仲良くなっていく、そこも食系漫画の定番をしっかり押さえていて、小野中先生への好感度が上がった
加えて、チヒロさんとクミカのラブコメ(まだ、未満かな?)要素も、ストーリーに組み込まれており、読み手を飽きさせない
やや不憫なトコもあるにしろ、チヒロさんがクミカより“大人”だからか、二人の距離の縮まり方には、イイ感じのヤキモキを感じられる。まぁ、餌付けしている感はあるが、チヒロさんは、しっかり、クミカのハートと胃袋を掴めてるし、不安はこれと言ってないな
お勧めの話は、第7話「いただきます」だ。食系漫画としてもラブコメとしても掴みとしてバッチリで、クミカの初体験にエロかわいさすら滲む第1話「あの子がご飯��食べたなら」や、子供が苦手な野菜の筆頭であるピーマンを主軸にし、なおかつ、私が大好きな青椒肉絲が美味しそうな第5話「嫌い嫌いのそのあとに」も面白いが、やはり、地球人だって、一度は直面する、食と命の問題に、クミカがしっかりと向き合う、このエピソードは一巻の中でも厚みがある。これを一巻に入れた小野中先生、やるなぁ
この台詞を引用に選んだのは、『クミカのミカク』を語る上で外せぬに加え、チヒロさんの人間的なカッコ良さが、特に滲み出ているからだ。普段、何気なく言っている、もしくは、たまに言う事も忘れてしまっている事すら気付いていない、「いただきます」、しみじみと、この言葉に、どれだけの重みが宿っているか、を感じ入る