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偉大な人物も権利争いで無駄に消耗し、不毛な時を過ごし老いていく歴史は古くから変わらず、それが人の性なのかと少し落胆しました。しかし、そんな偉大な人物も人間らしい部分を持っていることに親しみを感じ、すこし安心も感じました。
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【本の内容】
天才中の天才ニュートン。
ニュートンの「プリンキピア」を12歳で読破した早熟の天才ハミルトン。
ヒンドゥーの女神のお告げを受け、新定理を量産した神がかり的天才ラマヌジャン。
天才はなぜ天才なのか。
才能ゆえの栄光、が、それと同じ深さの懊悩を彼らは抱えこんでいたのではなかったか。
憧れ続けた3人の天才数学者の人間としての足跡を、同業こその理解と愛情で熱く辿った評伝紀行。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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自ら数学者でもある著者が、特に尊敬する3人の歴史上の数学者の生涯を追う旅をする。3人とは、イギリス人のニュートン、アイルランド人のハミルトン、インド人のラマヌジャンである。時代は違うが、皆ケンブリッジ大学で研究をした。
私は数学に明るくないので、この3人の学問的なすごさは正直なところ分からないが、著者がどれほど敬意を抱いているかが十分に伝わってくる。ニュートンは、重力の法則が知られているが、微分積分学の生みの親といわれる。ラマヌジャンも短い生涯のうちに、独学時代を含め3,000を越える公式や定理を発見したという。その一部をインターネットで見てみたが、めまいがしそうな数式だった。
彼ら天才の日常生活や、どう処遇されたかなどが功績とともに紹介されていて、著者がそのゆかりの土地や人を訪ねる。想像を絶するほどの天才は、その能力を正当に評価できる人がいなかったりして、なかなか発見されない場合も多いという。特にインドの片田舎にいた高卒のラマヌジャンがたまたまその才能を見出されたのは、奇跡なのだろう。著者がラマヌジャンのノートブック現物と対面したときの、興奮がよく伝わってきた。学問に人生をかけて打ち込む人は、分かってくれる人も少なく、とても孤独なのだという。
カーストのトップのバラモンに属するラマヌジャンをひらめきに導いているのは、ヒンズー教の女神だというところも、興味深く読んだ。インドがイギリスの植民地だった頃の話や、インドとイギリスの関係や、イギリスのフェア精神によって無名のラマヌジャンも見出されたという著者の考察も面白かった。
私は、数学や物理といった自然科学の分野の天才は無条件に尊敬してしまう。サイモン・シン「フェルマーの最終定理」にも鳥肌が立ったが、本書も数学の知識がなくても、読みやすくてお勧めである。
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著書の尊敬する三人の数学者、ニュートン、ハミルトン、ラマヌジャンの伝記及び取材旅行。特にラマヌジャンの話は心に残った。毎朝半ダースの定理をもってくる異次元の天才。アインシュタインの発見は二年後ほかの人が見つけていたかもしれないが、ラマヌジャンの定理の発見はそんなレベルの発見ではないという。ラマヌジャンがいなかったら100年たった今でも見つかってもいないかもしれないらしい。
コンピュータ化やロボット化とか最近言われるけど、こういった数学者の地道な発見による賜物なのだろう。本の中でこの発見がなかったら世界は50年遅れていた、との記述に感銘を受けた。
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天才数学者ニュートン、ハミルトン、ラマヌジャンの足跡を、家庭・家族、生活、地理的条件、宗教等から迫ったエッセイ。内容は興味深く、数学者の繊細さや孤独をうかがい知ることができる。本書の大筋と関係ないが、「ケンブリッジ大学の卒業試験では、最良の頭脳訓練として数学が最重要視された」こと、「四日間ぶっ通しで問題を解かされ、一週間おいてから…四日間難問を解かされるという、学生にとっては精根尽き果てるハードなもの」であったという。現在の日本の大学や大学生の時期にこのようなハードな試験が課されることがあるのだろうか。
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偉人の発見が、その人間的・環境的背景を含めわかりやすくまとめられている。何より文学作品には少ない、数学者の視点というのがいい。でも全く難しくない。おすすめ
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おもしろかったけど、これ読んだら世にでることなく消えていった天才もたくさんいたんだろうなーって思った。
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数学史上最高レベルの栄光を手にしながらも、悲劇的な人生を送った日本人好みの世界三大数学者を、自身も数学者である著者が紹介。
この板の人にとって特に興味をひかれるのが、3人目のラマヌジャン。著者は、数学の天才と言えど、生まれ育った環境、文化の影響はあるはずと考え、3人の一生をそれぞれ現地へ飛んで取材しながらたどるが、3人ともその神への信仰が力の源泉になっていたことに気づく。
独学の天才だったラマヌジャンは、夢占いの専門家でもあった。ヒンズーの戒律を犯して渡英する決断をしたのは夢でまばゆい光を見たためだったし、夜中に起き出しては夢で見た公式をノートに書き留めていた。
ラマヌジャンは、「我々の百倍も頭がいい」という天才ではない。「なぜそんな公式を思いついたのか見当がつかない」という天才だと著者は述べる。特殊相対性理論はアインシュタインがいなくても、2年以内に誰かが発見しただろうと言われる。数学や自然科学の発見のほとんどは、ある種の論理的必然、歴史的必然がある。だから、10年か20年もすれば誰かが発見する。ラマヌジャンの公式群のほとんどは必然性が見えない。ということは、ラマヌジャンがいなかったら百年後も発見されないということである。
ラマヌジャンの独創の秘密を、著者はインドの数学者に聞くと、彼はチャンティング(詠唱)を一因として挙げた。詠唱とは、詩文などをメロディーに乗せて唱えることで、インドでは古代から数学と文学が混淆していた。例えば12世紀の数学書『リーラーヴァティ』には、次のような詩が書かれている。
ミツバチの群れが遊んでいました
その半分の平方根のハチたちは
中略
ミツバチ全部で何匹いるのでしょう
インドでは、伝統的に教科書までが詩文で書かれていた。あらゆる教科で、九九のように丸ごとリズムに乗せて覚える方式が取られてきた。子供の頃から、折に触れて得られた知識や概念をもてあそぶことが、ひらめきにつながる。イギリス支配下で屈辱的な思いをしていたインドで、ラマヌジャンはヒーローになるが、確かに彼のようなタイプこそ、インド人の心をつかむ英雄なのかもしれない。
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偉大な数学者ゆかりの地を巡りながら彼らの人生に思いを馳せる物語。メインストーリーに登場する天才数学者たちもさることながら、出自や職業に関係なく天才を天才と正当に評価して処遇した数学者たちも同様に素晴らしいと感じた。
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「良かった頃」の藤原正彦氏の傑作と私は思う。もっとも20年ぶりに再読したがいささか情緒的で決めつけすぎる著者の記述は鼻につくが。
ともあれ、本書はインドの天才数学者ラマヌジャンを知りたい人は真っ先に手に取ると良いと思う。ラマヌジャンが何故かわかった定理たちの凄さはやはり数学者にしかわからない。藤原さんのおかげで人類の生み出した真の天才であるラマヌジャンを知ることができたわけだが、彼を知ると知らない人生では大きな違いがあると私は信じている。ありがとう藤原正彦氏。
ちなみにニュートンのひどさとアイルランドの数学者ハミルトンの数学者的純粋性も知ることができますよ。