これはすごい本になる。
2018/10/09 19:07
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投稿者:見張りを見張るのが私の仕事 - この投稿者のレビュー一覧を見る
経済学、貨幣論、歴史学、地理学、政治学、軍事学のあらゆる知見を総動員して世界を読み解こうとする著者の試みに敬意を表する。
今年亡くなった西部邁氏はインテグリティを大切にすることを説いておられたが、一つの学問の理論(例えば経済合理性)に拘らず全体に目配りが利かせ、あらゆる学問領域を渉猟し、その境界を軽々と越境してみせる教養と知性を備えた著者は、著者は、やはり西部氏の弟子なのだと感じた。
政治や経済は戦争と切り離すことができない。
2021/12/29 16:56
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投稿者:へもへものへじ - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本ではじめてMMTを紹介したこの本は、とても先見の明が有ったと言えるでしょう。
この本を読むと、いかに新自由主義が経済政策としてダメな政策かが分かります。
新自由主義的な政策を「改革」と称して推進してきた政治家や企業の罪は大きいです。
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現役官僚が著者とは到底思えないほど、専門的な本。本書の主題である、地政経済学とは、富国と強兵、すなわち経済力と政治力・軍事力との間の密接不可分な関係を解明しようとする社会科学。地政学なくして経済を理解することはできず、経済なくして地政学を理解することはできない、というのが地政経済学の大命題。
学生の頃、経済学を学んでいたが、それはまさに経済学の一部分でしかないことを痛感させられた。
そもそも、貨幣とは何か。領土との関係性は何か。政府債務とは、、など、分からないことだらけなのが分かる書籍。また、研究していた経済モデルの批判もあり、非常に勉強になった。そして、まだまだ勉強していかなければ、と考えさせられた。
以下抜粋
もしヘーゲルが言うように「ミネルヴァの梟は迫り来るくる夕闇とともに飛び始める」のであるならば、「大規模な戦争なしには経済的繁栄も社会的公正も実現できない」という不愉快な現実は、すでに過去のものになりつつあるということになろう。したがって、本書が示した認識が正しいとするならば、むしろ希望はまだ残っていると言うべきである。
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経済は集団行動。政治も同じく。地政学的環境による。
集団行動を科学するアイデアはマッキンダーの地政学から。
経済は地政学なしでは語れない。逆もまたしかり。なので地政経済学。
大きなトレンド転換は地政経済学の環境大変化が必要。
ケインズを再評価+新自由主義批判。
地政学、経済学、それぞれの国の実情を踏まえないとダメ。
19世紀は自由主義。
2度の世界大戦による戦時統制経済でケインズ主義が実現。
終戦後も体制が経路依存性で持ち越されて民政化した統制経済。
これによって高度経済成長期。
ケインズ政策の副作用がインフレ→これによりケインズ主義の人気が低下。
この戦後ケインズ主義は亜流だけど。
インフレ=富裕層・支配階級が損。
シカゴ学派の新自由主義、自由な金融、自由な貿易、グローバリゼーション。
成長率も技術革新も何かと低下している。
さらに金融恐慌が多い。
新自由主義のデメリットがデフレ。
デフレ=富裕層・支配階級が得。
すでに新自由主義は失敗が顕在化してるが集団行動は慣性の法則で動き続ける、すぐ止まらない、経路依存性で。なので続いてる。。
貨幣の信認は市場ではなく国家による=なんぼでもカネ刷れる。
→財政出動で需要をつからないとダメ=MMT系と同じ主張。
リチャード・クーとも同じ系の主張。
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本書を読むと経済学という学問がいかに人間社会からかけ離れた社会科学であるかが良く分かる。そもそも経済学が大前提としている「経済人(エコノミックマン)」という考え方自体が現実とはあっていないのだ。人間は合理性があるかどうかだけを基準に物理的に動く原子のような物体では決してない。人間は社会あるいは人と人とのつながりの中で能動的に行動する社会的生物なのだ。間違った前提のもとでいかに議論を精密化させ数式のみを弄しても決して現実に合った解答は得られない。ノーベル賞から経済学賞は今すぐ廃止すべきだ。
しかし、著者の中野剛志氏は膨大な学術書を読みこなし我々に分かりやすい言葉で解説してくれる。なんと頭の良い人だろう。
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自分にとって本書の意義は2つある。
まず、軍事と経済が両輪であることを古今東西の多数の事例とともに再確認できる。
次に、国際関係論と経済学双方のリベラリズムのバーチャル性がよく分かる。そして対案提示される、空間・時間・人間の3つの「間」のリアリティに則した学問群を学べる。主なものは地政学、現代貨幣理論、制度経済学だが、ほかにもリスト、ケインズ、ミンスキー、ポランニーほか、枚挙に暇がないほど知の巨人達の言説を知ることができる。
グローバリゼーション下で忘れ去られた、もしくは忘れたふりをし続けてきた「間」のリアリティ。コロナとウクライナ侵攻で一気に吹き出した今こそ、「間」の再認識を迫る本書は意味を持つ。