読書からえたものは生涯の伴侶
2004/07/21 01:51
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投稿者:ろこのすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
司馬遼太郎の膨大なエッセイから厳選した七十一篇。
その中でも「学生時代の私の読書」は司馬遼太郎の原点でもあり、氏自ら読者諸兄に
「何を読むべきか、どう読むべきか」の提言がなされていておおいに参考になった。
先ずは司馬さんの読書歴はと言うと、
中学の頃は徳富蘆花全集、漱石、鴎外、正岡子規などを読み、小説、随筆を読む楽しみ以上に、「明治人の心」というものを身近なものとしたようだ。
ここで司馬さんは「是非,諸兄に伝えたい」と特筆,提言する。
それは「明治文学をぜひお読みなさい。江戸中期から明治時代というのは世界史の中でも、めずらしい精神がぎっしり詰まった時代です。江戸期といういわば教養時代が、酒で言えば蒸留されて、度数の高い蒸留酒になったのが、明治の心というべきものです。諸君は異国の文学でも読むような気持ちで読んでゆくとよい。きっと発見があります。それを生涯の伴侶になさるとよいと思います」とある。
また兵役時代は、死を覚悟し『歎異抄』を音読。
ここでまた氏は提言する。
「日本の古典や中国の古典は音読すべし。音読すると、行間のひびきが伝わってきます。自分の日本語の文章力を鍛える上でも実に良い方法です」とこれまた懇切丁寧。
軍に入っては『万葉集』を繰り返し読み、「いはばしるたるみのうへのさわらびのもえいづるはるになりにけるかも」は、「死に直面した時期に、心をつねに拭き取る役目をしてくれた」と述懐するに及んで、文学、読書が精神の浄化の役目を為し、支えでもあり、まさに生涯の伴侶というべきものであったと言えよう。
末尾の解説に「文を書く上で気を使っていることは何か」という質問に
「一台の荷車には一個だけ荷物を」という答えがあった。センテンスを荷車に例え、関係代名詞を持たない日本語の不自由さも、この訓練によって道をひらくべしと啓蒙している。
人間にたいしてあふれる愛情とユーモア、卓見に満ちた司馬さんの世界も、こうしたたゆまぬ素地があったればこそと感嘆と畏怖の念を抱く読後感であった。
(エッセイ「学生時代の私の読書」初出:「読書のいずみ」第三十号,1987年3月刊)
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司馬氏のエッセイ集です。親交のあった様々な作家さんの評価なども含まれており、また小説とは違った楽しさがあります。
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没後5年に刊行された単行本が、この度文庫化されました。
膨大な量のエッセイから厳選して集められたエッセイの数々・・・。
司馬さんについて知るのにいいかもしれません。
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司馬小説のあとがきのあとがきといった感じの本ですね、これまで書いた様々な小説のバックボーンや司馬さんの意図などが良く見えてきますよ。
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読めば必ず面白くためになり血肉になるとわかっていてもだいたい娯楽本に手を伸ばすこと多しで、しばらくぶりに読みました。司馬さんの本。文明と文化について、浄土思想について、さまざまな方への追悼文や思い出を語った文章などなど、膨大な量のエッセイから厳選された1冊。
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司馬遼太郎の文体は、読んでいると影響されるから困る。
でもなんか好きなんだよなあ。
キザっぽいからかな。このタイトルとか、もろに。
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・2/15 久しぶりの司馬遼太郎だ.それにしても厚い文庫だ.また同じようなことが何度か出てくるのだろうか.何回読んでも知らないことが多すぎて覚えられないのは、やはりもどかしい.
・2/23 後もう少しで終わりに近づいてきたが、なかなか終わらないものだ.何故か後半には弔辞が多いように思う.いろいろ雑多な内容が含まれているだけに、興味のあるものと無いものとが混ざっている.興味のあるものはすごく面白いしためになる.そんな都合よくはいかないということか.
・2/24 読了.やっぱり俺の知ってる密教や仏教、正岡子規なんかの話の方が面白いな.うーん、難しい.そのうち分かるようになるんだろうか.
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エッセイ集。「司馬遼太郎の考えたこと」に掲載の重複があるが、あらためて宗教面の造詣の深さに感心した。抹香くさくなく、仏教に興味を覚える。11.8.15
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司馬遼太郎が書いてきたエッセイ71編。色々なテーマが取り上げられており、読んでいて飽きない。その中でも、人物についてのエッセイがいいかな。
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エッセイ集。氏の文章は小説にしろなんにしろ門外漢にもわかるよう懇切丁寧に書かれているのが特徴だが、唯一仏教関係だけは背景説明が薄い。真宗とか密教とか全然わからん。でも、それだけ氏は仏教に深い思いがあるんだろうなぁと思ったり。
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司馬遼太郎という人間の人との関わり方が記されている。現在の価値観では極端と思われる人が多いが、凡庸でない人とはそういうものであろう。
こういう文章をリアルタイムで、読むことができたらと想像してしまう。
司馬さんが存命であれば、21世紀をどのように見られるのかが、妄想が膨らんでしまう。
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それぞれいろんな時期に書いた随筆の組み合わせ。
ジャンルごとにまとまっている気が。
街道を行く
みなきゃだめか。
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司馬遼太郎について語るのも何ではありますが、故人を顕彰する文章や弔辞にも趣きと気品がありますな。思わず読んで、観て観たくなります。個人の器の中に溢れんばかりのというか溢れる知識と思想を抱えてた時代の風景を感じます。
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司馬遼太郎の厳選された七十一篇のエッセイ集が本書である。知識量の膨大な作家の思考をなぞる事で、俗世界から一時的に開放されたような癒し効果がある。
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まったく知らない人とかの弔辞など、非常に何回に読めてしまいますが、知っているとたいへん興味深い内容なのでしょう。
朝鮮半島との関係、言語の生い立ち、ふいに関心をあてられる地域や人など(宇和島人、バスク地方)、読んでいると飽きないのと、それまでもちえなかった視点がもてる気がします。