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投稿者:飛行白秋男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の言葉がとてもすごい。なぜこんな発想ができるのだろう。
頭の中がぶっ壊れそうになる作品で、初めての感動です。
他の作品も必ず読みます。
ノーベル賞に一番近い日本人などとも呼ばれる作者の、2014年に出た本の文庫化。
2024/02/06 00:40
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投稿者:L療法 - この投稿者のレビュー一覧を見る
なぜか初出がついてないが、書き下ろしなんだろうか。
ロバート・キャンベルの解説に、作者が、311語の被災地で目にした景色について描いた文章が綴られている。
あまり良い解説とは思えない。
献灯使というのは、灯火、それも大切な炎、光を、運ぶ、公式の使者のことだろう。
ここに収められた、長短の短編は、灯火のリレーの様子であるとも取れる。つまり、一つの出来事を、さまざまな角度から捉えて描く。
筒井康隆のいくつかの作品が、脳裏に浮かぶ、『霊長類南へ、』『幻想の未来』『暗黒世界のオデッセイ』『虚構船団』『驚愕の曠野』
マルチカメラによる年代記。
作者は詩人であり、イメージの連なりのような文章は、町田康のように飛躍を重ねていく。
しかし、二つの詩集で見られる、リズミカルな調子とは、趣が違い、時折言葉が絡みついてきたり、流れが切断されるような気もする。
普通に小説を読んできた人には読みづらいかもしれない。
実験的というよりも、シュルレアリスムなのかもしれない。
日本について結構辛辣な言葉も吐いているのだが、ネトウヨには高度すぎたのか、そういった批判は目にしてない。
面白いけど、人に勧めるにはちょっと特殊な小説。
Zなど予言めいた言葉も拾えるがそれは多分偶然。
この本を英訳できる人がいるなんて信じられない
2022/05/04 22:42
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「献灯使」、ふしぎなお話、日本は大災害に見舞われて自動車もネットもない社会に変り果て鎖国状態にある(どのような災害が日本を襲ったのかは、同じくこの本に収録されている「不死の鳥」で書かれている世界と似たようなものだろう)、この世界の仮設住宅に住む義郎はもう100歳を超えている、死ねない体になっている、その曾孫の無名は、義郎と反対にいつ病に倒れるかも知れないひ弱な少年だ、でも、読み進んでいくうちに、どんどんとこの子が可愛く、愛おしくなる。この作品が全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞していると知って驚いた、著者の多和田が受賞の知らせを受けて、「日本語でしかできない言葉遊びがとても多いので、いろんな技を使って英語に訳してくれた翻訳者の功績が大きいです」と述べているように、この本を英訳できる人がいるなんて信じられない
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の将来を暗示したようなディストピア小説。書いているのがあの多和田葉子さんということで、期待して読み、まさに期待通りだった。
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デストピア文学の傑作、待望の文庫化!
大災厄に見舞われ鎖国状態の日本。老人は百歳を過ぎても健康で子どもは学校に通う体力もない。身体が弱い曾孫の無名は「献灯使」として日本から旅立つ運命に。話題を呼んだ表題作など近未来小説5編を収録。
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2014年刊行の単行本を文庫化。
『群像』掲載時に大半を読んでいたので、結果的に再読になった。
収録作の中では『韋駄天どこまでも』が一番好きだ。
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面白かったです。
多和田葉子さんは初めて読みましたが、不思議な世界でした。
お話が進むにつれ、大震災、鎖国、政府の民営化、元気なお年寄りと弱い子どもなどと大きく変容した日本のことがわかってくるのですが、描写にリアリティーがありました。
滅びつつある世界、それから人類が滅んでしまった世界…寓話のように感じてしまいます。
改めて、ディストピア文学好きだ、と思いました。
するする読めるのですが噛み砕くのにはまだまだ時間がかかりそうです。何度も読みたい。
平成最後の読書でした。
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大災厄に見舞われた日本。政府は鎖国を宣言してのち、国際社会から姿を消した。技術が後退し、外来語の使用も憚られるようになったこの国で、つましく暮らす老人義郎とその孫の無名。不死を得た義郎は、翻って日に日に衰えていく無名を見つめながら、過去と未来に想いを馳せるのだった。舞台を共有する5つの短編からなる本作。一番長い表題作はお爺さんと幼い孫、という誰もが微笑む構図であるものの、そこに隠された悲劇に胸が締め付けられてしまう。ただ、明らかに3.11をモチーフにしているこの話、自分が福島在住、且つ年若い子供がいたとしたら、決して書けなかっただろうと思う。どこまでも他人事、他人事で。そういう意味でも哀しくて切ない気持ちになりながら読みました。しっとり幻惑的な文章は非常に好みなので、筆者の他の作品も手にとってみようと思う。
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老人は死ねない。曾孫は歩くことも食べることもままならない(オレンジジュースが胃を、腸を攻撃する)。
ゴーストタウンのような東京。
鎖国して、外国語が禁止され、言葉がどんどん変わっていく。
駆け落ち(ジョキング)できるのは老人だけだ。
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何もはっきりとは語られない。
何か国が国の体を失うような、それまでの当たり前をなくすような、そんな事態に見舞われた日本。
立ち上るのは、個々が抱える思い。それだけが手触りを持たせて読者を引き込む。
あとは、文章のグルーヴに身を任せるだけ。
この文章がたまらない。
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いつか遠い未来、とは思えないディストピア。
多和田葉子の本は文体が気持ちよくて、扇風機にあたるみたいに読んでしまう。
書名になっている「献灯使」は古びた日本家屋の頼りないガラスのような危なっかしさと透明感。
「韋駄天どこまでも」はもうとにかくするするするするっと淀みなく読んでしまった。内容、というより、文字を、意味を解体していく気持ち良さ。
なめらかな夜をひとり楽しみたい気分の日に。
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献灯使
韋駄天どこまでも
不死の島
彼岸
動物たちのバベル
全米図書賞翻訳部門
著者:多和田葉子(1960-、中野区、小説家)
解説:ロバート・キャンベル(Campbell, Robert, 1957-、アメリカ・ニューヨーク、日本文学)
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ウソホント、正誤、善悪。驕らず流されず考えて見極めることの大切さを思う。ファンタジー要素もあるけど、訴えかけてくる本だった。
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前半は物語に必ずしも不可欠とはいえない状況説明が長すぎてしんどい。あくまで義郎視点で描かれるのかと思いきや、無名や他の人物の視点も入り混じる。が、人物間の関係性をうまく描けているようには思えない。
原発事故を思わせる何らかの大転換が起こった後の東京という設定とか、言葉遊びとか、アイディアはいいと思うんだけど、好きなタイプの小説ではない。
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群像で表題作だけ読んだ。
老人は100歳を超えても元気だけれども、三世代後の子どもは体が弱く面倒を見てもらいながらでないと生きることができない。日本は鎖国しているし、産業はほとんどが停滞している。環境汚染もひどい。
震災やら原発事故やら高齢化社会やら、その他の現代に見られるしょうもないいろいろをそのままにしておいたらこんな未来になってしまうよということを半分冗談みたいな感じで書いているけれども、意外と本当にそうなるかもしれないと頭の片隅で考えてしまい恐ろしくなる。
説明的ではなく、主人公たちの見える範囲の事象だけが描写されているので、そのようになった原因や経緯はよく分からない。けれど、その霧の中にいるような雰囲気が、実際の当事者だとしてもすべては分からずにそう見えているんだろうなと逆にリアルに感じられてよかった。
ラストの脳を抜かれるみたいなシーンは何だったのかな。よく分からなかった。