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長らく絶版だったのが、復刊されていたため興味津々で購入。この著者には「山荘綺談」でかなり鬱な読後感を食わされているので、興味ある反面戦々恐々とも。
とにかく皮膚感覚的に厭ぁぁぁな感じが延々と続く。それが例えメリキャットとコンスタンスの楽しそうな会話のシーンであっても、何かがズレているのだ。その歪みというかいびつさ、座りの悪さがどうしようもなく不安感を静かに煽ってくる。残虐なシーン、目を背けたくなるような描写は全編を通じて一つも出てこないにも関わらず、だ。
また、主人公が自分の最愛の人を“全力で護ろうとする”という点では……例えばC・ゴールデンの「闇に棲む少女」とほぼ同じなのに、一方は気恥ずかしくなるほどに情熱的で微笑ましく、一方は読み手の不安をちりちりと煽ってかくも禍々しい。
静かに描かれる狂気というものがこれほどに精神的にダメージを与え得るものなのか……うぅ、やはりシャーリィ・ジャクスンの作品はキツい。
名作に敬意を表するわけではないが、怖さという点で☆5個。
その一方、いつでも気軽に読める代物ではない(体調や気分がすぐれない日には読んじゃいかん)という点で、面白さとしての評価はイマイチ。決して駄作という意味じゃなく。
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甘やかでぞくりとする、傑作小説。少しおかしい主人公に気付けば感情移入して、私の甘やかな世界を踏み荒らすチャーリーへの恐れが募っていく。終盤の村人の態度にはっきり現れるように狂気が散りばめられているが、その魔術めいた猛毒の甘さが癖になる。本書は主人公そのものである。
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ねえ、あなたが私のこと嫌いなの、知ってるの。
あなたが私にどんな陰口叩いてるかも知ってるの。
あなたが私をどうしたいかも知ってるの。
ねえ、好きにして頂戴?
私もあなたが大嫌いだから。
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読んでいる間ずっと不安感・不快感・惨めさ、その他もろもろを感じて挫折しそうだった。これが絶妙なストーリーだと感じる方はしっかり読み込んでいるのだろうとか、頭が良いのか、好みが自分と違うのだろうなとか、半分諦め気味に。だけど何とか読み終えた。
姉のコンスタンスと妹のメリキャットとジュリアン伯父さんの3人で村の中でも大きな屋敷に暮らしている。6年前に姉妹の両親や兄弟、伯父さんの妻などが食事中に毒殺され、姉が疑われたが罪には問われていないよう。
終始、妹の目線で語られていくので全てが本当のことだか分からない。その通りに描写されているとは限らない。強烈な村人たちの悪意。対するメリキャットの憎悪。過去に事件が起きたとはいえ、女子供にここまで嫌がらせをするのか、それとも語られていない(メリキャットがあえて触れていない)事実があるからなのか。想像するしかないのが不安。私にはその想像が面白く感じられる余裕はない。ただただ彼女が感じた悪意に同調して打ちのめされて狂いそうになる。
従兄弟だというチャールズが登場し、(メリキャット目線では)財産狙いでしだいに家の主であるかのように横暴に振舞うようになる。メリキャットの幼児性というのか、少女の頃の独特の残酷さ・イタさにこれまた鬱々となる。それにしても、ふわふわと違う世界の住人のように描写される姉コンスタンスは実のところどういう人なのかな。
読み飛ばし,中断を繰り返したので再読したら理解は深まるのかもしれないけれど、今のところその気力はない。
やはり後味の悪い結末。それでも読了を目指したのは何かスゴイ真相が明かされるのを期待していたから。①真犯人は実は…?! とか②実は姉妹は中高年,③家族は実は生きている、もしくはジュリアン伯父さんはすでに死んでいた,④全てメリキャットの妄想,とかでも何でもいいから~。そういう作品ではないのだろうけど。はぁ~。
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最初の部分のつまらなさは何なんだろう。翻訳本をあまり読まないのはこういうことがあるからなのだが。中ほどから最後にかけては一気に読める。わたしは先の展開を読む勘はないけど、わかる人なら簡単にわかりそうな。お姉さんの年が意外と上でびっくりした。
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おばけ屋敷ができるまで??????
ホラー要素が一切ないのにホラーよりもうすら寒いお話
語り手の伝えてる一部始終は真実なのでしょうか?
信用できない
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美しい妄想の中に生きる少女の物語。被害妄想を含むとしても、美しい、としか言いようのない、少女の妄想。木には本を、地面には銀を埋め、キー・ワードを設定することで、いつか昔に起こった出来事から屋敷と美しい姉とおじさんを守ろうとする。おじさんは昔起こった出来事に頭をやられていて少女のことを死んだと思い込んでいる。よこしまな幽霊がやってきて「現実」-少女はそれを憎む-を振りまくが、結果的にそれは次の段階への世界へ少女と姉を連れて行くことになるだけだった。
物語はそこで終わるが、鬱蒼とした、壊れかけた屋敷の中で、年はどんどん経っていくだろう。少女は少女でなくなり、美しい姉は老いていく。それでも今度こそ彼女たちの世界に入ってくる侵入者はもうおらず、私は彼女たちが本物の、キリスト教から見た邪で、それこそが美しい魔女になっていくことを望んだ。
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ちょっぴり怖いけど可愛らしい唄!!
”メリキャット お茶でもいかがと コニー姉さん
とんでもない 毒入りでしょうと メリキャット
メリキャット おやすみなさいと コニー姉さん
深さ十フィーとの お墓の中で!”
自分達だけの妄想の世界で生きる少女だからこそ可愛らしく聞こえるのでしょうか?
この唄が可愛らしく聞こえたら、もうあなたは甘い猛毒に犯されてしまったのかもね。
ホラー程怖くなく。かといってファンタジーというには綺麗な話でもない。
これはドロドロとした人の悪意の中で生きるお話。
世の中には悪意はないと思っている人、または人の悪意を忘れてしまった人にはキツい話かもしれない。
僕自身、忘れかけていた人の悪意を思い出させられた。
まったく、不愉快な本だ!
それでもこれは読む価値がある。
メリキャットは悪意から身を守るために自分だけの妄想の世界を作って過ごしてきた。彼女の生き方は間違ってはいない(が、正しいとはいえない)。
人の悪意を真っ当に受け入れ、自分が悪いと自らに牙を剥けてしまっては、こんな世界では生きて行けないでしょう。
悪意を遠ざけ、自分達の生活を守り規律に従って生きている彼女達はとても美しい。
そして、その美しさは癖になる。これは…甘い猛毒だったな…。
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不健康だが美しい箱庭の話。
その箱庭を破壊したがる世間の不躾な好奇心や悪意や妬み、箱庭を守ろうとする少し狂った健気さ、まじないと毒と月の世界。
爽やかで愛らしいはずの場面であっても、どこか常に不気味さや不安のような仄暗いものが底を流れており、全編にわたって薄気味悪さが支配しています。
閉ざされた空間での充実など、箱庭的なイメージが好き人にはたまらない本だと思います。
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町から離れた古い屋敷という隔離された空間で、美しい空想にふけりながら暮らす主人公の、歪みを歪みと感じさせないあまりの純粋さに、はじめから終わりまで、不気味なような心地よいような奇妙な違和感を感じ続けたお話でした。
自然や光の描写は美しいのに、時折人間の悪意がむき出しになるエピソードは鮮烈で、よりその残酷さが際立って感じられました。
素直な悪意は主人公の心に潜んでいるだけではなく、その主人公を「異物」と捉える「正常」であるはずの町の人々にも潜んでいるということが一番の恐怖でした。
タイトルと表紙だけで判断して、メルヘンなお話だと思い込んで読んだので、とても驚かされた本です。
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12月22日読了。スティーヴン・キングがしばしば名作として引き合いに出す、シャーリイ・ジャクスンの代表作。お城のような名家に住むコンスタンスとメリキャットの姉妹。過去に起きた「事件」を巡り、彼女たちと村人たちの純粋さと善意、悪意が交錯する・・・。序盤から得も言われぬ、ゾクリとした感触が全編にみなぎっている。下手なトリックやどんでん返し、超自然現象や「実は精神異常者の見る夢でしたーー」的なオチはないが、描写と展開だけで怖く、心落ち着かない気分にさせられる。結末を読むまでページを繰る手が止まらなかった。
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家柄と秩序に誇りを持ち、家族が死んだ屋敷で生活を送るメアリ。姉と叔父以外の他者の介入を極力排除し、空想と閉じた世界で幸せに暮らす彼女が羨ましく思えます。大事なものだけを守り、他はとことん遠ざける。それがさらに大事なものへの終着を深める。変化はいらない、今の状態が永遠に続けばいい…。見方によっては今の生活を守るべくメアリが奮闘する姿は無邪気なだけに恐ろしくもあるのでしょうが、外界への恐怖と嫌悪が分かってしまうので、どうしてもメアリは被害者で彼女を怖いとは思えないんです。それより村の人達の思い込みと集団ヒステリーが怖い。人の心理はいくらでも変わるし、善意は後ろめたさの裏返し。それに比べて変わることのない閉じた生活はどんなに幸せなことでしょう。
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インターネットのレビューを読むまでメリキャットに何の違和感も感じなかった。
でもインターネットでのレビューを読んだ後に改めて読み直してみると、メリキャットが少しおかしいということが良くわかった。それから初めての時のようにこの世界を感じようとしても、何度読み返してもそれは出来なくなっていた。私は失うと二度と感じることのできない世界を失ったのだと思う。
メリキャットは永遠に、私が失ってしまった世界の中で幸福に無邪気に生き続ける。私は彼女が大好きで、羨ましい。
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お城の中のおとぎの世界と、お城を囲む村にひそむ悪意と、おとぎの世界に
ひそむ狂気との対比が、ゆがんだ甘い空間を作り出していて、独特の読み心地。
お互いを閉じ込めるようにして暮らす姉妹は、最後にはほんとうにおとぎの国の住人になった。
MVP:なし
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美しく病める世界という帯に惹かれて購入。残念ながら波長が合わず。繊細で美しく、紙一重で何かとんでもない事が起きそうな不気味さに期待しながら最後まで読み進んだ。ミステリー小説のくくりだと思ったので、何らかの世界が反転する驚きとか論理的な解決を期待していた。そういうのを期待する人には肩すかしだろうし、この文章と世界観で楽しめる人にはよいだろう。論理的に何かが説明され、物事の筋が通ることを期待していたので曖昧模糊としたエンディングに個人的にはがっかり。サラ・ウォーターズのエアーズ家の没落と似た落胆をおぼえる。この辺は個人の趣味だが。