緻密な世界観を堪能できる
2004/05/15 22:10
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオトリさま - この投稿者のレビュー一覧を見る
「星界シリーズ」で人気の森岡浩之さんのメジャーデビュー作の表題作をはじめ8編の短編集。
どの作品も短いながらも緻密な設計図が準備されているような緻密な作品世界観にうならされる。
「夜明けのテロリスト」が一番印象に残った。
「メディット」という名の小型コンピューターが進化した近未来。かつては人間だけのものとされた知性・創造力の必要な仕事もメディットがこなすようになる。
ごく一部のエリートと、肉体労働やセールスのような人間相手の仕事だけが人間の仕事となっている。
作品が発表された1998年には、まだSFの感があったが今読んでみるとほんの少し未来の話に感じられる。
携帯型のメディットをウエストポーチに入れ、メディットと脳をコードで直結させている「背負い族」は、携帯にすべての情報を入れて片時も携帯を離さない現代の若者を連想させるし、自分で考えているのかメディットに命令されているのかわからなくなってしまう悩みなど、明日の日本の姿のような気がする。
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代表作「星界の紋章」シリーズや表題作「夢の樹が接げたなら」など、独自の言語を創作し、テーマとする作者の短編集だが、ぜひ読んでいただきたいのは短編「スパイス」。
この読後感、最高である。
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『星界』シリーズの作者の短編。
SF要素が随所に散りばめられている短編が多数入っており、面白い。
個人的には「スパイス」が印象深い作品。カニパリズムを連想させる。
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素晴らしかったです。星界シリーズとはまた違った趣きで、本当に楽しめました。
表題作「夢の樹が接げたなら」と「ズーク」が、私の中では特にお気に入りです。言語というものが私たちの大部分の形成に寄与していることが、疑いようのないことに思える。SF的世界構築の緻密さは他のSF作家にもいえることですが、この言語に対する洞察の鋭さは、他に類を見ないものではないでしょうか。
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デビュー作である表題作を含む8本の作品を納めた、短編集。
初めてトライする作家さんでした。
SFを小説で読むのは苦手なんですが読んで正解でした。
『夢の樹が接げたなら』
会社や家族単位で、他の人とは通じない個人言語を持つことが
当たり前の世界で、言語デザイナーという仕事をしている主人公。
偶然にも、これまでのものとはまったく構造の異なる言語に遭遇し
調べ始めた主人公がたどり着いた結果とは・・・
他に「普通の子ども・スパイス・無限のコイン・個人的な理想郷・
代官・ズーク ・夜明けのテロリスト」
技術が進歩してたどり着いたところが、すべて素晴らしいとは
限らないってことなんだなぁ〜
SFが苦手という人も、面白く読めると思います。
「スパイス」には、やられました。最後の最後まで
何をしたいのかがわからなくて、そしてゾっとしました。
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独自の言語を設計する言語デザイナーの主人公は、奇妙な偶然から、これまでとは全く構造の異なる言語に遭遇する。
言語理解と人間の認識能力、その未来を描いて弟17回ハヤカワ・SFコンテストに入選した表題作など、氏のエッセンスがちりばめられた珠玉の短編集。
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樓主が取り上げるのはとっても珍しい、短編集。
星界の紋章でおなじみの森岡氏の、初期の作品。デビュー作も入ってる。
全部SF。
この人は言葉が好きなのね。
この人の本を読むと、自分の描くSFの拙さを見せ付けられるようで、痛かったりする。
一番、インパクトが強かったのは「スパイス」。
どんでん返しを樓主は期待したが、けっきょく路線はホラーっぽくなってしまった。
好きなのは「無限コイン」と「夢の樹が接げたなら」。
「スパイス」は人工的に作られた女の子が中心に置かれた話。彼女はとあるサディストに食われるために作られた。牛の細胞などを使って作られているから彼女には人権がない。
ニュースキャスターである主人公はその少女の姿を世間に伝えて、世論を動かし彼女を救おうとする。
「ズーク」という作品はなかなか興味深かった。一般名詞という存在がポイント。
短編だから読みやすい。
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SF作品の短編集。
こんな風になっていったら怖いなぁと思う作品ばかりで始終ぞわぞわとした感覚がしてました。
苦手かも・・・と思いながら、途中から夢中になって読んでしまいました。
「普通の子ども」と「無限のコイン」がお気に入り。
「ズーク」は妙に惹かれました。
必要があるから、名前をつけるんだよなぁ・・・。
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とても久しぶりに森岡浩之を読んだ。「星界」とも違う短編集。中学のときに一度読んでいるもののかなり捕らえ方言うか理解は変わった小説である。いくつか方向性は神林長平に似てるのではないかなと思う。特に最後の「夜明けのテロリスト」なんかは「死して咲く花実の有る夢」に人間の意識の捕らえ方は似ている部分がある。いくつかの短編を通して共通しているのは「言葉が世界を認識する術の一つ」ということであり、この「道具」を持ち変えることによって大幅に今見ている世界は変わるのではないかということである。特にその意味では表題作なんかは正面からその論を描いているのではないか。題名もまとまっており面白い。しかし、途中の論の展開だけはいささか納得のいかなかった部分であるがそれは私の理解力のなさが原因と付記しておく。
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久し振りに珍しくSFを読むと、いつもと違う頭の中の回路が刺激されて面白いですな。特にこの短編集に収録されている作品は、こと細かに事象の説明が成されていないので、考えつつ読み進めたので余計にそういう感覚が強かったのかも。
人工的に言語を作り出す世界を描いた表題作や、名付けるという行為について考えさせられる『ズーク」など、言語に関した作品が気に入りました。
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宇宙だって人の夢だって結局は他のものに寄生して接いでいるだけ。自分自身では自律できないし自立できない。
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好みです。時間を忘れて読みふけってしまいました。ディテールを掘り下げていけば立派な長編小説になりそうなネタをあえて短編でコンパクトにまとめているので、想像力を刺激されます。
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冒頭の「夢の樹が接げたなら」を読んだ時点で、すごいSF作家を見つけてしまったと驚いた。飛び抜けた発想と世界観の作り込みには感動するし、文章も読みやすい。ただ全体的に同じようなテーマで書かれているため一気に読むと若干あきる。表題作と「ズーク」が重くて面白い。
星界の紋章はとりあえず買う。
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昔、書評に載っていて興味をもち古本で探して買った一冊。理解にし難い面もあるが、著者の言葉に対する想いが伝わる。本自体は読みやすい。SF好きにはお勧めの一冊。
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森岡氏といえば、「星界の紋章」のイメージから”スペースオペラ”というイメージが定着してしまっているが、なかなかどうして、本短篇集では、氏のハードな一面を見せくれる。
もっとも、ここでみれるようなアイデアが十分「星界の紋章」のシリーズにも発揮されているのは言うまでもない。