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ラブコメ要素が強めの人狼系ライトノベルです。中学2年生の時、交通事故で実の家族を亡くし、記憶喪失となった主人公の利孝は高校2年生となったある日、養父に「自分の娘がこの中の誰か見抜くこと」という条件で利孝を次期当主にすることを告げます。教育実習を通して、4人の小学生の中から、実年齢16歳の養父の娘を見極めるという、人狼系のストーリーです。近年のタイトルでは『六花の勇者』や『この中に一人、妹がいる』に近い属性です。当主の地位には興味がない利孝ですが、非人道的な手腕で家を育て上げてきた養父から少女らを救うという決意を持ち、養父の条件を呑みます。
問題となる4人の小学生たちはいずれもプロの野球選手、ゲーマー、数学者、イラストレーターで、社会的に所得を得ており、年齢以上の能力を持っています。さらに4人全員が利孝との結婚願望を抱いており「16歳」を公称することもあり、利孝の試練は難航してしまいます。
○少女たちはいずれも並の小学生離れした能力を持っていますが、利孝がそれらを度外視して「彼女たちの本質」を考えるシーンは良かったです。天才ゲーマー、天才数学者というのはしょせん表面的なものにすぎない(メタな言い方をすれば、単なる属性でしかない)と悟り、彼女たちの内面に迫ろうと振り返る場面は、キャラクター小説としてのライトノベルのテーマを突く、意欲的なものでした。
●こういったライトノベルをワクワクしながら読む推進力となり得る「特にこれ」といった要素が弱いように感じました。1章につき、1人の少女との1on1エピソードが描写されてゆく構成はやや単調でした。伏線や、謎掛けなどの要素もなく、クライマックスの対決もどこか言葉遊び・揚げ足取りが続いていたりと勢いがいまひとつ弱いという印象です。ただ、純粋にキャラクターどうしの掛け合いを楽しむジャンルへ持って行こうとしているのかもしれませんので、それならそれで完結しているかもしれません。