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とても正しく、ピュアな主張。
例えば、電柱(電線)有無の写真を比べて感覚的に良さを訴えてくるあたりもよい。
おそらく小池氏も松原氏(『失われた景観』の著書がある)も、もともとは景観上の観点から無電柱を主張し始めたはず。それでも、おそらくあとから、防災を看板に加えたりオリンピックもきっかけに加えたりしている。
そして、実際本音は景観なのだとしても、それでよいと思うのである。これまでの東京の都市の歴史においても、例えばグリーンベルトが(本音はアメニティのためであっても)防火を看板にして主張されて実現したことがあった。プランナーは本音は大事にしつつも、時には工夫をして財政を説得するテクニックが問われてよい。
本書をよんでいて思い出したのは、東日本大震災のあと、復旧の過程で、早々にある通りに電柱がふたたび立ったことが、喜ばしいことのようにある新聞1面に掲載されたこと。そしてそのことを、六本木ヒルズで開かれたシンポジウムで、ときの国交省国土政策局長N氏が、批判的にコメントしていたこと、、。
この事例からも考えたのは、電柱は、「迅速に(拙速に)、効率的に(単目的に)」都市インフラを構築する場合の、象徴的な施設なのだろう、ということである。
本書の構成、論理展開等について述べておくなら、ストーリー展開がやや雑なのが残念。ヒアリング結果の長文掲載や、既往文献の長文引用も多いし、主張自体のクリアが展開がなされていないのが残念。ふたりの著書で分担執筆していることにも一因があると思う。
特に、各ステークホルダーのインタビューが紹介されているくだりでは、その結果から、もう少し丁寧に政策が紡ぎだされてほしかったと思う。いろいろ調べたわりに、単に「意識改革が必要」という抽象的な結論に頼りすぎだと思う。
※インタビュー結果のなかでは、電力会社が地中化のための独自の基準(「需要密度」)を持っているという話や、緊急輸送道路にかかる道路法改正のくだりは面白かった。
とはいえ、都知事となった小池氏に、ぜひともいま頑張ってほしいと思う。
19C仏国パリの大改造において、オスマンにより、ライフラインも地中化されたのだということはしらなかった。そしてそのときのように、為政者の力というものは都市づくりにおいて強力であると改めて思うのである。