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経済政策で最終的になんとかして欲しいのは、結局は物価と失業率。
MMTは経済理論の一つではあるけれど、どこまでも貨幣理論(=理論の中軸は政策じゃない)だから…は詭弁では。
ともあれ「税金は財源ではなく貨幣価値を保証するもの(確かに「これからはこの紙っぺらをお金としましょう」ったって、何らかの権威づけがないと回らないわなー)」「納税より政府支出が先」は、目からウロコでした。
でもMMTって自国通貨の存在が大前提だから、EU
諸国は適用外。今日びのグローバル経済でEU抜きの経済理論って意味があるのかなあ。
ところで、イタリアの「ミニBOT」ってどうなったんでしょうか。
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主流化ケインジアンはニューケインジアンと呼ばれている。マンキューやクルーグマンなど。新古典派に近い。
ポストケインジアンは、マルクス経済学に近い。
ニューケインジアンをケインズ右派、ポストケインジアンをケインズ左派と考えられる。
MMTの主要な論点。
財政的な予算制約はない、金融政策は有効ではない(不安定である)、雇用保障プログラム(JGP)を導入すべし、の3点。
JGPを抜きにして拡張的財政政策を正当化するためにMMTを利用するのは本筋ではない。
貨幣は、万年筆マネーまたはキーストロークマネーになっている。トービンの造語。
貨幣は実物貨幣と名目貨幣に分かれる。
実物貨幣は商品貨幣と金属貨幣。
金属貨幣は、鋳造貨幣と秤量貨幣。鋳造貨幣には信用の部分が入っている。
名目貨幣は、預金や紙幣。鋳造貨幣も同じこと。信用部分がなければ、製造コストを負担できない。
貨幣国定説=貨幣の価値を担保しているのは国家による強制力。紙切れにそもそもの価値はない。
MMTは貨幣国定説の一種である租税貨幣論に依っている。税金を納められるから。
「モズラーの名刺の逸話」価値がないものでも、納税のために名刺を欲しがるようになる。租税は財源ではない。政府が使うお金はキーストロークで生み出せる。
政府が支出してから国民は納税する。=スペンディングファースト。
租税がなければ貨幣は価値を持たない。租税の目的は財源ではなく貨幣の流通にある。税金として集めた貨幣を燃やして、あらたに印刷するかキーストロークでお金を作って、それで政府の仕事をするのでも同じ。「租税駆動型貨幣(タックスドリブンマネー)」。
租税貨幣論と信用貨幣論に立脚している。
主流派経済学では、銀行は預金をもとに貸し出しをしている=又貸し説。MMTでは、貸出の際に預金が想像される。万年筆マネー論と同じ。貸し出しの際にマネーサプライが増えるのであって、マネーサプライを増やせば貸し出しが増える、のは逆。
とすると、預金が国の借金の限度、ということはなくキーストロークマネーを借金すればいいことになる。
マネタリーベース(ベースマネー)は中央銀行が直接発行できるお金。マネーストック(マネーサプライ)は世の中に出回っているお金。
マネタリーベースの割合を信用乗数、信用乗数が一定ならマネたりーベースを増やせばマネーストックが増えるはず。しかし、信用乗数は一定ではない。
超過準備=ブタ積み、が存在する。
貨幣は債務証書=発行者から見れば。金利がなければ国債も貨幣と同じ。
イタリアがミニBOTという国債を発行する計画を発表。=無利子永久債=貨幣と同じ。納税や決済に使える。=ユーロではない貨幣と同じ。ユーロの意味がなくなる。名目は国際だが、第二貨幣。
国債は、ちょっと変えると貨幣になる。貨幣は、決済と納税が可能な無利子永久債。国債は決済と納税には使えない有利子貨幣。インフレが起きなければ、どちらも流通する。
国債発行は預金の増大と同じ。政府部門の赤字は民間の黒字。��トックフロー一貫モデル(SFCモデル)。これを踏まえれば、民間の貯蓄が政府の借金の限界、ということはない。
租税の役割は、インフレの抑制、悪行税、再分配。
国債を廃止することも可能=明示的財政ファイナンス=日銀の直接引き受けと同じ。中央銀行がキーストロークで作ったお金を政府が支出する。
インフレになるのでは?インフレにならない程度に。
MMTでは景気のコントロールは、JGPによる。
政府支出は貨幣量を増大させるので金利を低下させる。日本の財政赤字は金利を上昇させない。
ラーナーの「機能的財政論」。MMTは赤字フクロウ派。長期的の時期の見方による。インフレにならない程度、とは結局均衡財政になるのではないか。
内生的貨幣供給論=中央銀行の金融政策で貨幣量を決定することはできない。MMTでは金利を固定すべきだ。景気対策は金利ではなく、JGPで行う。
金融調整=アコモデーショニズムによれば、預金準備が増えた分売りオペで資金を吸収して金利を調整するので、マネタリーベースも決定できない。日銀理論と似ている。
金利が決まれば貨幣量が決まる=ホリゾンタリズム
貨幣が決まれば金利が決まる=ヴァーティカリズム
中央銀行が決めるのは金利であって、貨幣量ではない。
マネタリズムは、貨幣量をコントロールしようとしたが失敗した。今は利子率をコントロールしている。=「新しい貨幣的合意(NMC)」
貨幣量がコントロール可能か。
主流派は可能と考えていて、MMTとポストケインジアンは可能ではない、と考えている。マネタリーベースでさえ、金利を一定にしようとするとコントロールできないことになる。
金融不安定論(ミンスキー)によると貨幣量はバブルの前後で勝手に拡大縮小するので、中央銀行のコントロールから外れる。金利は景気の変化に素早く対応できない。=金利政策によって貨幣量や景気をコントロールすることは難しい。
新しい貨幣的合意では、自然利子率があることを想定している。ここからテイラールールによって目標インフレ率をコントロールするという考え方が生まれた。
ポストケインズ派は自然利子率を否定する。
金利政策によってインフレ率をコントロールできると考えるかそうでないか、が主流派とMMTの真の争点ではないか。
JGPは、かつてのニューディール政策と似ている。
JGPは、完全雇用を直接的に目指す。失業対策だけではなく、景気や物価を調整する機能ももつ。ビルトインスタビライザーの役目がある。
「ハーヴェイロードの前提」ケインズが生まれた地の名前。エリート主義、哲人政治、反大衆主義の意味。
JGPが最低賃金の役目をする。ブラック企業も排除できる。
インフレはデマンドプルとコストプッシュ。モノ不足はあり得ないので、これからあるとすればコストプッシュ型インフレ。エネルギー価格の上昇など。
ボルガ―の金融引き締めでインフレ率が低下したと考えられているが、カーター政権が天然ガスの規制緩和を行って、石油価格が落ち着いたため、という説もある。
JGPの仕事は誰にでもできること。掃除など。介護などの専門職ではない。
日本でJGPが実行されても、キャリアを考えると申し込まず、就職活動を続けるのではないか。
無駄な仕事をGPでさせるなら、ベーシックインカムでよいのではないか。
ババ抜き貨幣論=人々がお金をありがたがるのは、それを受け取ってくれる人がいるから。=貨幣の自己循環論法=貨幣に一般受容性があるのは一般受容性があるから。
このような自己循環に入るためには、最初の一撃があったから。たとえば、金や銀を含むから、納税に使えるから、給料がそれで払われてほかに価値のあるものがない、国家が強制するなど、なんでも。
これも、貨幣が政府の債務証書であることの傍証。
貨幣が一度自己循環に入ってしまえば、流動性選好の対象になる。
国家は個人と違って寿命が限られていない。=借金を踏み倒すことはできない。政府の借金は民間の資産=永久債と同じ。利払いだけがある。それを目当てに購入する。
無限期間では、永遠の未来における資産の割引現在価格は、ゼロに近づく=横断性条件。これを満たせば均衡財政と言える=金利より経済成長率が高い必要がある。
貨幣的成長理論=成長率以上の貨幣成長率を維持しないと長期的にはデフレとなる。平成に入ってからの貨幣成長の低迷がデフレの原因ではないか。
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MMTについての概略が書かれた本。
①財政的な予算制約はない
②金融政策は不安定である
③雇用保証プログラムを導入するべき
この3点が主要な論点だが、個人的にはMMTは全面否定できず、従来の主流派経済学よりも現況をリアルに捉えてる部分もあると思う。もう少し詳しく知りたくなった。
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文章でユニークさを出そうとしているけど、好みではありませんでした。
ただ平易にわかりやすくMMTとアメリカの主流派、ヨーロッパの主流派、日本の主流派を対比させながら解説している点は素晴らしいと思います。
著者個人のMMTのレンズを利用した時の経済政策、金融政策提案がなかなか腑に落ちてはきませんでした。
少なくともMMTがベーシックインカムを明確に否定している旨は記載しながらも自分の理想であるBI導入に関する提言にしても良いのではないかとは思います。
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極端なインフレさえ起きないように注意する必要はあるが金融機関は事実上無限に国債を受け入れることができるという話は面白かった。中央銀行が操作できるのは金利であって貨幣量ではないという点は主流派とMMT論者で概ね共有しているらしく、争点は金利操作のような金融政策によってインフレ率や失業率のコントロールが可能かという点にあるというように理解した。
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回りくどい言い回しが多くて読みづらい。口語文に近く、誰かちゃんとした編集者がいなかったのかと思った。著者にはかっこいい言い回しなのでしょうね。
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何冊かMMT(現代貨幣理論)の本を読みましたが、その中では、これが一番。
これまで読んだMMTの本は、MMT派の人が書いた本だったこともあり、「MMT最高!」的な論調でしたが、本書の著者である井上氏は、主流派の経済学をかなり尊重した立場で書いていることもあり、MMTに対する客観的な目線を非常に大切にしている印象を受けました。
また、井上氏から見た、MMTについて「納得できるどころ」「納得できないところ」を理由付きで説明しており、好感のもてる書き方になっていました。
MMT派が主張するジョブ・ギャランティについては、井上氏がベーシック・インカム推進派ということもあり、その欠点が、かなり明確に示されています。
これまで読んだMMTの本から、「MMTの良し悪しはよくわからんが、ジョブ・ギャランティだけは、もしかしたら良い施策かも」と思っていたのですが、井上氏の指摘を読んで、「やっぱりベーシック・インカムの良いかも」と思い直しました。
ジョブ・ギャランティとベーシック・インカムの成り行きについては、今後もしっかり追っていきたいと思います。
なお、MMTについては、まだまだわからないことがいっぱいですが、「そもそも貨幣とは何か、貨幣はどのように発生したのか」を理解することが、MMTを理解する上でのカギだという気がしてきましたので、そのあたりを考えつつ、他のMMTの本にも当たってみたいと思います。
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政府は財政が逼迫していることを理由にケチ臭くなり,研究や教育などの重要分野にも十分なお金を投じなくなっています。こうした緊縮主義は,政府のデフレマインドによるものと言えるでしょう。
政府が基礎的な資金である「運営費交付金」を十分に提供しなかったために,地方の国立大学が資金難に陥り,科学技術に関する研究が困難になりました。それが論文数減少の主要因の一つです。(pp.12-13)
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MMTが主流派と論争を起こしているのは、主に以下の3点。
・財政的な予算制約はない。
自国通貨を持っている国は、キーストロークで無からお金を作り出している。よって利払いや借金の返済に充てられる。ただし、国債を発行しすぎるとインフレになる恐れがあるので、インフレにならない程度に。
・金融政策は有効でない。
両派とも中央銀行が利子率をコントロールできることは認めているが、貨幣量をコントロール可能かどうかが一つの争点(主流派は利子率に基づいて貨幣量を決められると主張)。それ以上に、金利のコントロールで物価をコントロールできるか。
・雇用保証プログラムを導入すべし。
賃金の体系や職務内容に課題あり。