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昭和だなあ、という感慨も抱けそうな、濃厚な短編集。戸川氏というと、『緋の堕胎』を絶賛した筒井康隆氏が、女流作家というはどうしてこんな怖い話が書けるんだろうと記したように、女性性を強調されることが多い気がする。今の目で見ると、そういうのは感心しない、というべきだろうが、それより、戸川氏の側があえて男性が期待する「女流作家」を演じてたんではないかなという気もする。けれども『隕石の焔』みたいな話もある。これは好色譚の定番である「男日照りの村」の底を抜くような話だが、その抜き方が女にしか思いつかない、というより男はまず思いつかないような抜き方なのだな。面白い。
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戸川昌子の短編集。60年代末から70年代初頭にかけて発表された作品が収められている。戸川昌子を読むのは初めてで、作家というよりたまにテレビで見かけたカミナリ様みたいなパーマをかけたおばさんというイメージが強い。収録作はどれも純粋なミステリとは言い難い内容。かといって奇想とか変格という感じでもない奇妙な作品。いずれも性をモチーフにしているが、抑圧されてたり、倒錯していたり、あるいは支配や暴力であったりと様々。古い作品だけど、時代感はあまり感じさせない。
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これはホラーなのかミステリなのか…よくある昭和ミステリとは一線を画する、何かすごいモノを感じる。
江戸川乱歩が好きな方におすすめします。
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著者の小説は「大いなる幻影」と「猟人日記」しか読んだことがなかったが、代表作とは言えないこの短編集読んで改めてミステリ作家としての戸川昌子を見直した。
面白い!昭和感漂う男女の関係をテーマとした官能ミステリとも呼ぶべき佳作揃い。
もっと他の作品も読んでみたいのだが、ほとんどが現在古書でも入手が困難な状況。
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妖艶にして凄絶な異色ミステリ短編集。どれもが倒錯したエロティックさを感じさせ、ぞくりとさせられます。どちらかといえばグロテスクでもあるのだけれど。美しさも感じさせられます。ただし、一気に読むと酔いそう。
お気に入りは「ウルフなんか怖くない」。たぶん、現代だとこれはアンモラルだなんだって言われそうな気がします。ヒロインの浩子も不幸だというように受け取られそう。なのだけれど、実は収録された中でこの作品が最も愛情に満ちて幸せな物語なんじゃないかという気がしました。
一番ぞくりとさせられたのは「悪魔のような女」。本当にこれは怖い。男性が読めばさらに恐ろしく感じられるかなあ……。
短い作品だけれど「蝋人形レストラン」も怖かったなあ。シンプルに恐怖を感じさせられます。
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酔え、惑え。とはよく言ったもので、エロティックな描写で、人の心の暗い面を描いた上で行き着く結末に、どの短篇も心を惑わせてくる。短篇集だが続けて読むには精神的にきついものがあるが、読後には他の短篇も読みたいと思わせるくらいの傑作ばかり。装丁も内容もインパクトがあるが、短篇の中では『蟻の塔』『悪魔のような女』『蟻の声』が印象に残った。
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第8回江戸川乱歩賞を受賞した戸川昌子が68年から70年にかけて発表した短編14本を日下三蔵編集によりまとめた短編集です。ミステリーというジャンルに収まりきらない、エロやグロをふんだんに盛り込んだ作品ばかりが収録されています。読んでいても行き先が分からず濃霧の中をさまよっている感覚になります。どの作品もあまりに濃密すぎて、読んでいると胸やけします。怪奇小説や恐怖小説という括りの方があってますね。