擁護でも切り捨てるのでもなく
2023/09/25 22:30
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
東ドイツというと秘密警察に象徴される暗い抑圧国家というイメージがまず浮かぶ。しかしそれだけではこの国家が40年続いたことや東ドイツを懐かしむ「オスタルギー」の発生を説明することはできない。本書は東ドイツを擁護するものではないが、ただ悪と切り捨てて終わりにするのでもない。また冷戦の勝者となった西側の傲慢さのツケというのも改めて問われるべきであろうことが確認できる。
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二次世界大戦後、東西に分断されたドイツの歴史がよくわかりました。特に、東ドイツに焦点を当てて、興味深かったです。
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投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
若い年代の人は、東ドイツ等という国は、知らない人が多いでしょう。しかし、まだその国で生きた人が、現在もいるのです。しかし、年月は、その東ドイツを過去に追いやり、いずれは、ヒッタイトや匈奴のように歴史にだけその存在を示すものとなるでしょう。しかし、まだまだ現在とつながっており、崩壊後30年、東ドイツを検証することも重要でしょう。中公新書の『物語○まるの歴史』シリーズの一冊となったことを歓迎するものです。
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1990年まではこの世にあったはずの東ドイツについて、国の始まりから終わりまでを一気に眺める本です。この本を見ると東ドイツは命じるばかりで何もくれない親分(ソ連)と隣にいる優等生の兄弟(西ドイツ)の間で背伸びを続けても兄弟に追いつけなくて飲み込まれてしまったように見えます。
それにしても監視社会を作りながらもガス抜きの陳情制度で意見を述べたり、抑圧されてもはけ口を作る手段はあるのだなと妙なところに感心しました
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若者にとっては世界史の1ページ分の知識すらない東ドイツ。しかし、この国は30年前までは存在し、現在ヨーロッパを率いるドイツの半分を形成している。
昨今、書店では資本主義の限界を語る本が多く見られるようになってきた。では、実際の社会主義国家の内実はどうだったのか。気になって手に取ってみた。
東ドイツの歴史について社会、経済、政治をわかりやすくも詳細に書いてあり、非専門家にはかなり丁度良いレベル。社会主義であってもそこには人々の生活があったのだということを実感できた。
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「東ドイツ」に関しては、社会主義統一党による独裁的な体制が続き、“シュタージ”と呼ばれた秘密警察が暗躍する監視社会であったと、「何時か解消されなければならなかった筈」な“ネガティヴ”な調子で語られることが多いのかもしれない。が、本書はそういう調子になっているのでもない。社会主義統一党による当地の体制が固まって行くまでの経過等を客観的に説こうとしていて、「東ドイツ」というモノ、その社会や経済の変遷を判り易く示している。
そういうことで、本書は「現時点で、日本語で誰でも読める本として、最も判り易い“東ドイツ”なるものの通史」と言っても差し支えないかもしれないと思う。
幾つかの“選択肢”が在った時期、“転機”となった幾つかの出来事、そうした色々な事を経て「あの体制」になって行った訳だ。そして、これは自身でも「国外からのニュース…」として触れていた記憶が在るが、「西が東を吸収合併」とでもいうような形で現在の「ドイツ」ということになって行った中でも「東ドイツ」では色々なことが在った訳だ。それらが判り易く纏まっている本書はなかなかに好いと思う。
自身でも「西が東を吸収合併」というニュースを覚えている訳だが、「東ドイツ」については「往時を知る、または知り得る人々」が未だ多いかもしれない。何か「歴史」と「少し生々しい人々の記憶」との中間領域のような場所に在る事象かもしれない。他方、「西が東を吸収合併」は「30年も前…」なので「“東ドイツ”を知り得ない人達」も非常に多い。だからこそ、本書のような「客観的に説くことを意識しながら綴られた通史」は貴重で、大きな意義が在ると思う。
現在、ドイツ現地でも「“東”とは??」ということで色々な論点が在るらしい。そういうことが本書の末尾の方で触れられている。未だ「歴史」と「少し生々しい人々の記憶」との中間領域のようでも在る「東ドイツ」かもしれないが、色々と考える題材たり得る存在ではある。「東ドイツ」は「遠い異国の過去の一時期の体制」で、どちらかと言えば「どうでもいい…」のかもしれない。しかし「本当にそう断言して構わないか?!」と何処かで感じながら本書に触れるという側面も在った…
何となく「好著に出会えた!!」と少し嬉しい体験をさせて頂いたと思っている。
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東ドイツ41年の歴史を網羅した本。ナチスが社会主義者・共産主義者を迫害していたことから、アンチ・ファシズム国家として前国家の責任を引き継がず社会主義国家建設を目指したが結局あだ花のように散ってしまった。ソ連影響下にありながらも満足な支援を受けられず、社会主義国家でありながら東欧圏国家との関係以上に西独を意識せざるをえず、重工業重視の経済政策で西独に対抗するも技術力・生産力とも劣後し膨大な対西独貿易赤字を抱えまた西独の借款に頼る。他方国内では基礎消費財などへの補助金体制、福利厚生の提供などで体制維持を図るも、実際には車や住宅を入手できるまで数十年を要し、一般市民は西独の親戚を通じて得た品物を売ったり相互に譲り有ったりする相互扶助体制を築いていく。41年の歴史で実質指導者はウルブリヒトとホーネッカーの二人でともに権力掌握後長期化の中で硬直化していく。変化に対応できない東独の指導部はゴルバチョフの登場によりソ連からの支援がいよいよなくなり、また足元で人々が西独へと脱出していく一方で内部にとどまる改革を求める声が起こっていることにも対応できず、最後はなし崩し的に西独に飲み込まれるように消滅してしまった。
自らをナチスに抵抗したアンチ・ファシズム国家と位置づけ、戦後補償について個人補償、イスラエルに対する補償を拒否し、こうした補償を行った西独と一線を画していたことは興味深い。
実は国家消滅の直前に東ベルリンに行ったことがあるのだが品物もなく、人々の表情も暗く、レストランなどのサービスも悪く、いかにも社会主義国家な印象を受けたし、映画やドキュメンタリーで描かれるシュタージに代表されるような秘密国家的監視のもとで人々が自分の意思を押し殺していたような印象が強いが、監視ばかりでなく国民が国家に要求できる「請願」制度もあったというのも意外だった。
筆者も指摘しているように統一後噴出してきた社会の矛盾(経済格差や右派の台頭など)を東独にのみ起因するとするのでなく、東西双方の負の遺産を等しく直視していくことが統一ドイツの歴史を語るために持つべき視点であろう。そのためにもこうした東独の歴史研究が新資料とともに深められていくことが望まれる。本書は本邦でその成果を見せた一冊。先行研究、新資料も取り入れられ、現時点で本邦で東ドイツについて確認できる最も網羅的な一冊・良書といえる。ただし(筆者の筆の癖なのか)、短い文章が五月雨のように続いていき、つながりがわかりにくいところもあったりして慣れるまで読み難さを感じるかもしれない。
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あまり東ドイツだけにフォーカスしてみてみたことがなかった。ソ連と西ドイツとの駆け引きがよく見える1冊。
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米ソ対立の最前線にあった東ドイツの四〇年を丹念に描き、非人道的な独裁政治や秘密警察による監視という負のイメージの真相に迫る。
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東ドイツが舞台の小説を読んでシュタージの事が気になり手に取ってみました。社会主義国家の不自由と秘密警察シュタージに監視され、息苦しい窮屈な社会だったんだろうとイメージしてましたが、この本からはそこまでの感じは受けず、それなりに生活は保証されていたように思えた。今の日本から比べたらそれは貧しく感じますが、住宅不足に対して集合アパートを建設するなど、昭和の日本と同じようなところもあり、体制は違えどすることは一緒なんだなと妙に納得。
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とても興味深く読んだ。多面的な視点で東ドイツの歴史や政策決定過程を解説しているところが特に面白かった