人の寒村、人狼の隠れ里で同時進行する殺人事件
2023/11/30 16:26
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投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る
悪の結社夜宴とロイズとの腹の探り合いが続く第三巻。怪物絡みの事件をロジカルに落とし込む作者の手腕が光る。冒頭から魅せるアクション描写に心を掴まれたが最後、凄惨な連続殺人の起きる僻地で渦巻く三陣営の思惑、お色気、裏で進む事態など、盛りだくさんの内容にワクワクさせられた。肝心の推理は探偵の解説通りのものを読書中になぞってしまったのがたたって、あまり意外性は感じなかった。
異形の世界の推理は、人間社会のそれとどう異なるのか?
2023/09/12 10:46
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投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
前回投稿した最新作第4巻のレヴューで勘違いをしていたので、この場で修正したい。この物語が、登場人物の設定・プロットなどから、「鬼滅の刃」ヨーロッパ版?とあたかも二番煎じのように書いてしまったが、今回前3作を読んで誤りに気付いた。「アンデッド」の第1作は2015年発表に対し、「毀滅」連載開始は2016年とこの作品が先行していたのだ。時期的には近接しているが、両方オリジナルの作品である。大きな誤解をしてしまった。
一方でかつて見た映画で、ショーン・コネリー主演の『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』(2003)を思い出した。むしろこちらと似ている。似ているからどうこういうつもりはないが、映画では面白いことに悪の組織の首魁はモリアーティ教授なのだ。この組織はファントム、透明人間といった「怪人組織」。モリアーティ教授は、この組織に対抗する「超人組織」のメンバーの超能力を盗み、コピーして超人兵士の量産を目論んでいる、というストーリー。
本作では、モリアーティ教授率いる「夜宴」は、切り裂きジャックをベースに、鬼・吸血鬼、さらには人狼の血を混ぜ、これを輪堂鴉夜の不死の体の体液を免疫として使って合成獣キメラを創り出そうという計画。映画は異形が多く登場するわけではなく、並外れた能力を持つ人間中心に構成されているので、違いはあるが、よく似ている。歴史・文学のユニークキャラの人物を組み合わせれば、面白い物語ができるということだろう。
第3作では、第2作フィリアス・フォッグ氏所有のブラックダイヤモンド「最後から二番目の夜」に隠された「人狼」、ここでは「狼人間」として満月を見ると変身するのではなく、自在に変身する、の里を舞台とする事件。第2作は、相手が人間ルパンなので、推理の主役はホームズ/ワトソン・コンビ。「鳥籠」は、異形の特性を活かした力仕事がメインで推理はあまりなかったが、第3作では、怪物専門の探偵の本領を発揮し推理も展開する。鴉夜が人狼の里と人間の村で同時多発的に起こった少女誘拐殺人事件を解決する推理のプロセスは、異形、人狼の特性を知った独特のもの。通常の推理小説の推理を考えるのも大変なのに、異次元の推理を考えるとは著者の力量には驚く。また、ルール違反かもしれないが、既に第4作を読んでいたが、本作でフラッシュバックのように現れる過去の意味もよくわかる。
人狼と切り裂きジャックとのハイブリッド化を目指すモリアーティ教授率いる「夜宴」と保険目的物を守る表向きの仕事と裏の異形狩りの秘密の仕事をするロイズ保険の諮問警備部は引き続き登場するが、第3作では、静句と「夜宴」吸血鬼女カーミラ、そして津軽と諮問警備部とのデュエル、その津軽と「夜宴」人造人間ヴィクターとの奇妙な友情?など今後の展開の伏線になるような出来事がある。また、切り裂きジャックが新たに関心を示したのは、ジキル博士の二重人格論文。同じ半人半鬼として、モリアーティ教授との師弟関係に疑問を持つ津軽の予想はどうなるのか?さらに東洋の怪人フー・マンチューも登場、と今後の展開は予想が付かない。
物語最後でフォッグ邸で異形チームとの闘いで一敗地にまみれたルパンとファントム・エリックのコンビに、最強の人狼「終着個体」が加わってどのように動くのだろうか。そして人間ホームズの次の一手は?多彩な登場人物が増えて今後の展開が待ち遠しい。
【夜明け前の怪物は豹変する、群れに潜む狼を看破せよ】
2024/10/20 00:49
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投稿者:えびし - この投稿者のレビュー一覧を見る
ドイツの僻地の里に潜む人狼を炙り出す為に鴉夜達と夜宴とロイズが三つ巴を繰り広げる物語。
鴉夜を狙うモリアーティの真の目的。
世界中の怪物の標本を集め、最強の合成獣を創り出す事。
次なる獲物は人狼。
村民殺人事件と少女誘拐が相次ぐ人里で。
巧妙に偽装された謎と狡猾に群れに潜む人狼を、鴉夜達は看破していく。
霧に包まれた牙の森で、真相を解明した先で知る、ローザとユッテ、母と子の哀しき物語。
月下の元での推理は、残酷な真実を炙り出す。
善悪は立場によって容易に入れ替わるのだ。
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今回は人狼の村で起きた殺人事件。静句だけがはぐれてどうなるかと思いましたが、鴉夜と合流するまでドキドキでした。
相変わらずファンタジーとミステリーの兼ね合いが絶妙で、どちらの読み方でも面白いです。
まだまだ一筋縄ではいかない展開ですが、次巻も楽しみです。
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待ってました3巻!
発売まで長かったーー。前作とか全然覚えてなかったけど津軽、静句、鴉夜のキャラはすぐ思い出し、楽しく読めた。
誰が村の少女を殺したのか、またもう一つの村でも同様の事件が起きていて、のめり込むように読んでしまった。
ラストまた次作に続く伏線で楽しみ!
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ブラックダイヤの暗号を解いて鳥籠使い一行が向かった先はドイツの森に囲まれた小さな村ホイレンドルフ。そこでは人狼による少女連続殺人事件が起きていた。事件解決を目指す鳥籠使い、人狼を狙う夜宴、怪物主義のロイズ、そして問題の人狼、それぞれの目的達成のために動き始めた。
4年ぶりに出た作品だが、作品を通してそういった時間の経過を感じなかったのは鴉夜の魔法か。
今回は目的のためなら一時的な協力関係を持つが、お互いの腹の中はへっへっへっというかんじがゲスくてよかった。事件については人間、人狼どちらにも事情があり、犯人の動機も分かるが、誰にも共感は出来なかった。個人的にはこの作品、推理するために頭使うより、戦闘の方がどう相手を出し抜くか、どう負かすか、どう逃げるかという面での頭を使う方が面白いと思う。それとロイズって弱くないか問題と夜宴強すぎ問題、鳥籠使い数の不利問題、それはまだ解けないと感じた。
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最強最恐最凶トリオ健在。
今回バトルと謎解き、両方とも濃くって濃くって。しかし痛いよ、静句も津軽も満身創痍の闘いっぷりで、痛い痛い。痛いのに気持ちいい。なんだろ、これ。なんていうんだろう。かさぶたって治ってくるとかゆくなるじゃないですか、で、かいちゃうとかさぶた取れてまた血が出るじゃないですか、だからかいちゃだめってわかってるのにかいちゃうじゃないですか、で、かいて血が出ていたいのに、なんていうか、気持ちいいっていうか。そういう、アレ。
え?何言ってるのかわからないって?わからないです、アタクシも。
人狼と人間、そこに鴉夜たちとロイズと夜宴たちが加わり三つ巴。彼らの間にある、微妙な、というか絶妙な関係がね。命かけてるからこそ生まれる間合いみたいなのも楽しみのうち。
いやぁ、なんだろ、この魅力。読んでる途中の快感、いや、怪感、そう、まさに怪感!!
ちなみに「真打津軽」っ名前、アタクシが今まで出会った登場人物のカッコいい名前リストの上位に入ってますわ。
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Ⅱが次なる舞台はドイツの狼男村、乞うご期待! で終わってから何年待たされたんだっけ。
それはともかく、お話のできとは関係ない話だが、三冊読んでから、自分はこの手の話が好みじゃないことにようやく気付いた。やれやれ。
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なんだろなぁ…読後感はあまり良くないかも。
1、2巻のさらっと解決ストーリーの方が笑劇としては良かったという印象な分、今巻はミステリーまで深くなく笑劇には至らぬ種族の事柄?で、正直に言えば中盤辺りのやり取りについてはよろしくなかった。
必要だから書かれたのだとは思うが、この作品に関して必要であるとは思えない。
バンケットとロイズも付けた感じで好ましくは見られなかった。
テンポも良くなかったように感じたし、細かい章分けのタイトルいらなくないですか?と。
期待して待っていたほど、のめり込めなかったのが残念。
次巻買うか、ここで切るか…今のところ後者優勢。
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このシリーズの第1巻を、著者サイン入り本プレゼント企画でいただいてから読み始めた。4年ぶりの第3巻。
首から下を奪われた不老不死の少女・輪堂鴉夜と、鬼の血を混ぜられて半分鬼になった男・真打津軽。そして鴉夜に仕えるメイドの馳井静句。
奪われた体を取り戻すべく、三人は「怪物事件専門の探偵」として、19世紀のヨーロッパに渡る。通称「鳥籠使い」。体を奪ったのは、あのモリアーティ教授とその一味。彼らの目的は、各地の怪物の体を集め、切り裂きジャックと融合させて新たな怪物を作り出すこと。今回は「人狼」を探してドイツへ。人狼が住むという村は何処に?
今巻ではホームズとワトソンは少しだけの登場だが、ロイズの怪物根絶を目指すエージェントたちは大暴れするが…。
いろんな有名人(?)を登場させすぎのきらいはあるが、気楽に読めて面白い。若い人向けのエンターテインメント路線のレーベルから出版されているが、見取り図とか入れてあり、これは「本格ミステリー」なんだと主張しているかのように思えた。
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怪異専門の探偵が織りなす異形の推理劇と異能バトル、待望の第3巻。今作は本格連作短編推理の1巻、コン・ゲーム風の2巻と比較して、今作は最も推理とバトルのバランスがいい。物語全体が閉鎖的な村で起きた人狼による殺人事件を軸に進み、合間にバトルが挟まる構図で、ミステリ・ライトノベルとしては一つの完成形に値するだろう。除外による最終的な帰結はやはり著者の得意とするクイーンの本格推理であり、またバトル描写は相変わらず巧みで、人外の実力の描写が素晴らしい。異形同士のバトルもロジカルでありながら、その前段階の登場の時点でのアジテーションが非常に上手く、少年漫画心にしっかりと火を灯してくれる。また、バトル自体も単なる顔見せに終わらず、どちらが勝つのか分からない手に汗握る死闘であり、しっかりと決着がつくのも大事なポイントだろう。これができておらず、命の奪い合いではない能力のお披露目会のような軽薄なバトルになってる作品は本当に多い。
推理面では、犯人当てという意味ではさほど難しくはないものの、真相は埒外であり、一捻りがしっかりと効いている。また人間では不可能な怪異による反抗という点も活かしているのが本作の一番の魅力だろう。
いや、本当に1巻、2巻があまり売れていないというのが信じられない。ジャンル的にはライトノベルでありながら、数多ある同ジャンルの中では間違いなくトップクラスの作品であり、また本格推理としても申し分ない。これが売れないのは何かがおかしいとしか思えない。単純な告知不足か、ジャンルそのものの発展性の問題なのか……。ライトノベルもミステリも好きなだけに憤りすら感じる。オタクは間違いなく好きな作品であるのでオススメの本を訪ねられたら真っ先にこれを薦めるだろう。
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青崎、さてはあれだな? 百合好きだな???
いや、好きですけどね。百合。ようやく出た三巻目。前二冊をざっと読み返してから挑みました。
ファンタジィの土台できちんとミステリを展開してるなぁ、という印象は相変わらず。派手なバトルも多いけど、事件と謎と謎解きがちゃんとある。まあじゃないとぶっちゃけ、師匠の出番がなくなっちゃうんだよな。身体がないから。この設定、作者に対するうまい縛りになってる気がする。
師匠はとりあえず身体を取り返すことがメインの目的で、夜宴が人間や化け物に何をしようとべつにいいのかな。夜宴の犯罪行為を止めようって気はなさそうだなぁ。津軽はまあもともと頭の中が化け物だから基準にはならんし。
ロイズ側がどうにもちょっと弾丸系が多くて読んでて疲れる。第一エージェントさんはそうでもなさそうだったね。
ノラちゃんが今後、ルパンサイドのキャラとして出てきてくれたらいいな。彼女とても好き。あと、ユッテとルイーゼの関係がめちゃくちゃ好きですね。ふたりの持つ、どうにもならなかった感がすごくいい。
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特殊設定推理の1巻、冒険活劇の2巻と来て、3巻はどちらもありの豪華な内容。トリックもロジックも素晴らしく、ミステリとしては大満足。物語やバトル描写も面白い。願わくば次巻が早く読めると良いのだが。
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こういう話は普段あまり好んで読まないんだけど、このシリーズは面白いし好き。あっちでもこっちでも似たような事件。それを鮮やかに解決していく様は読んでいて気持ちがいい。
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巻を増すごとに面白くなってる。
1巻はミステリ要素が強く、2巻はバトル要素が強く、今回はどちらの要素もいい感じに混ざり合っていて面白かった。
【以下結構ネタバレ】
犯人やトリックなんかは結構すぐわかるものの、犯人の本当の目的はわからずなるほどなぁと思いながら読めた。
村や洞窟の描写もよかった。
ただ、狼の嗅覚は凄まじいのでいくら死体の臭いを雨で消してもバレそうな気がするとか、犯人の真の目的は人狼村の娘たちをおもえば良い行いかもしれないけど人間の娘たちにとってはとばっちり以外のなにものでもなく、あの年頃の娘をあぁも無残に殺しまわった犯人には同情できないなぁ、とか思った。
可愛そうだったからって見逃しちゃうかねぇ…。
ホームズの出番は少なかったけど、ワトスンをばかにされて怒るホームズはとても良かった。