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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
唯一の友である飼い犬を亡くし緘黙症がエスカレートした小五の美咲。圧倒的な喪失感を味わい改善しない日々の中でも、希望さえ持ち続ければ糸口は見えてくると明るく照らしてくれる作品。引っ込み思案の子や気が塞ぎがちになってる人に特にオススメ
多くは語らない文章
2021/10/06 22:39
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投稿者:とりまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
愛犬レオンを亡くしてから悲しみにくれてばかりの美咲。
ある日近所にできた花屋にレオンそっくりの犬を見かけて・・・。
美咲は全緘黙なんですね。
外でも家族に対しても話せない。そんな事ある?と思いましたが、あるようです。
作中では病名?についての言及はありませんし、
家族が集まるシーンでも、美咲が喋らない事について本人の前では話題に出してません。
美咲はもう小学5年なので、その事については散々話し合いは経てきており、
今はあまり話す事を無理強いせず、家族でそっと見守ろうというスタンスになっているのかなと思いました。
最初美咲は自己中の子に見えたので少しイライラしましたが、
話が進むにつれ、ちゃんと周りの人の事を慮る子なのが分かってホッとしました。
花屋のお姉さんが何故全く話さない(小さな子供でもない)美咲に初対面から親身なのかが謎でしたが、
最後の方で理由が分かって納得できました。
最後、そんなにうまくいくかな?とは思いましたが、
児童書ですし、明るく読み終えられたので良かったです。
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いつの頃からかの猫ブームに押されて脇道に追いやられている犬本。犬派かつスパニエル推しの私にはどストライクな表紙に惹かれて読み始めました。
自分の思いをうまく言葉にできない小5の女の子、美咲。
日常生活はもちろん、卒業式での6年生を送る言葉の自分のパートでも声が出ない。これも物語の中で美咲の成長を表すための、わかりやすい縦軸バロメーターですよね。
そして美咲が生まれたときから寄り添って生きてきたキャバリアのレオンの死。
冒頭からレオンは骨壷に入った存在。でも美咲にとっては、たとえその状態でも、大きすぎて受け止められない喪失感を癒す存在なんですよね。
4・5年生くらいから読めるやさしい文章なんですが、喪失の苦しみや生きづらさにあえぐ、子どもなりの心情がなんだかリアルで。
愛犬を失ったことのある人はこの気持ちと行動すごくよくわかるんじゃないでしょうか。
火葬前に少し切った毛をしばらく指で撫でたり嗅いだりしては泣いていた人間には響きましたよ。生きてたら絶対涙を舐めてくれるのに。とか思って底なしに落ちていくんです。
レオンに生写しのキャバリア犬ビリー(同じ犬種なんだから似てるのは当たり前だろ、なんていうやつがいたら、そいつは犬と暮らしたことがないのだ)と、ビリーが看板犬を勤める花屋の店主である女性との出会いで、喪失感と周囲に感じる温度差でガッチガチの美咲の心が少しずつ解されていき、もうひとつの重要な出会いに辿り着くという流れ。
ひたすら「ビー玉」を引っ張ってきた分、山場での描写は一定のカタルシスを覚えるものの、やってやった感を感じなくもないひねくれ読者。
いや、児童書なんだからこれくらいわかりやすく気持ちのいい流れと表現は控えめに言って最高でしょう。
しかし、夜明けを迎えてからのあまりにスムーズかつ達者な喋りに、どういう症状だったのかと掘ってみたくなる。
陽気な弟が一計をめぐらせてしまうくらい、家でも喋れていなかったことを考えると場面緘黙ともまた違うのかなとか、そういうパターンもあるのかなとか。
しかしこれ、表紙はレオンなのか?ビリー?いや、やっぱりレオンでしょうね。
というかサンであるべきなのでは?
うーん。物語の山場で物理的に夜明けを連れてきたのはサンだけども、美咲だけを覆っていた夜の世界に夜明けをもたらしたのはレオン…いや葉子さんじゃない?
「夜明けをつれてくる三十路女性」
それはそれで手が伸びていただろうとも思う。
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犬と暮らすってそんなにいいことなのだなあ。アレルギーで動物が飼えないので絶対にできない経験。お花屋さんのお姉さんが優しすぎる。傷ついた分だけ、人の心の傷に気づくことができ、優しくできる、そんな人になりたいものです。美咲の家族もあたたかい。
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小さい頃から、自分の思いをうまく言葉にして発することができない小5の美咲。
愛犬の死をきっかけに、より言葉が出なくなってしまう。
言葉が喉に詰まってしまうもどかしい思いと、愛犬の死を受け入れられない思いが、切々と語られる。
自分だけが辛い気持ちを抱えている、と思っていた美咲だが、徐々に周囲の人々が抱える辛い気持ちに気付き始め、発語と愛犬の死という二つの困難に向き合い、前を向いて乗り越えようとしていく。
主人公の美咲の言葉が出ない様子を、
言葉はいっぱい自分の中にあふれているのに、喉にビー玉が詰まってしまったようで、出てこない、
というような表現で書かれている。
症状についての詳しい説明はないが、もしかして場面緘黙症なのだろうか、と思った。
家族もそれぞれ心配しながら、どうにか美咲が自分で言葉を発せられるようにと、色々と考えている様子が伝わってくる。
吉田桃子さんは、「ラブリィ」以来。
素直で前向きな中学生男子の話だったが、今回は少女の辛い心情が中心の物語で、全く違う味わいだった。
naffyさんの挿画はとても素敵なのだが、何となくこの物語の家族像と一致しない気がするのが残念。
2022.1.17
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うちにもキャバリアがいるので完全にジャケ買いです。
児童書ですが、とても良かった。あたたかな気持ちになれる一冊。
作家さんはキャバ主さんなのかな
キャバリアの柔らかい感じが伝わってきました
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Naffyさんの、ちょっとクールでバランス感覚が独特な、美しい絵を見たくて借りた本書であったが、読んでいく内に、犬のかけがえのない素晴らしさを知ることができた、吉田桃子さんの物語も、少女の成長とともに印象深いものがありました。
物語の主人公「斎藤美咲」は、その両親と兄も含め、家族みんなに愛されていた、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの、「レオン」が亡くなったことが、一年経った今も忘れられず、いわゆるペットロスのような喪失感に苛まれていたが、彼女に関しては、それだけではなく、幼少期から声が出ない、精神的な苦しみも抱えていたことから、その辛さは尚のことであり、学校ではひとりぼっちでいることが多い上に、その話すことができないことを、度々馬鹿にされるような姿には、はっきりと、こういう病気ですといったものが不明であるからなのか、見ていて不憫でならなかった。
そんな彼女にとって、数少ない心を許せる友達がレオンだったのであり、そこには言葉が無くとも通い合わすことのできる、犬が人間にもたらす、素晴らしき恩恵を見た思いであったが、その大切なレオンがこの世からいなくなってしまった、今現在に於いて、彼女はこれからどう生きていけば良いのか?
と思った矢先に、幸か不幸か、レオンにそっくりな犬を花屋さんで見かけた美咲は、勇気を出して、その飼い主に止められない思いを伝えようとするが・・・。
生き物には寿命があるため、いつかは別れなければならない時が必ず来るし、それに関して特別な思いを抱くのは、美咲だけとは限らず、寧ろ、犬が好きな人であれば、他の人がそのような体験をしたときに、それがきっと自分事のように思えるはずなのだと感じた時、「ああ、こういうことなのか」と彼女も初めて実感することによって、自分の内の思いだけに拘らず、少しずつ、外の思いにも目を向けるようになっていく、そんな様子に、まずは彼女自身の成長を感じられた。
また、そうした成長を促してくれたのは、数は少なくとも、心温かい周りの人と犬であり、特に人間に対する真っ直ぐな犬の優しさを表した、『犬は、自分のことをよく見せたいとか、こうするとなにか見返りがあるからという理由でやさしいんじゃない』には、とても心を動かされるものがあり、それはレオンの素晴らしさだけでなく、それぞれに別の個を持った犬の素晴らしさでもあり、美咲自身の喜びでもあった。
そして、何よりも美咲自身、素敵な未来を実感できたこととして、誰かにやってもらうことよりも、彼女自らがそうしたいという思いに達したことがあり、それは、相手の中に自分自身を感じることができた、とても素敵なことであり、そんな共感できる思いが、生きたいという気持ちを更に高めさせてくれたり、大きな励みとなってくれることには、『犬には、たいへんなことがあっても、困難を乗り越えて、それでも前に進んでいこうとするパワーがそなわっている』という、犬自身の持つ生命力からも感じられた、そんな前向きなメッセージがタイトルには込められており、これまでの長く辛い夜を押し退けて、ようやく連れてきてくれた夜明けは、彼女の為���けではない、犬の為のそれでもあったのです。
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愛犬を看取ったことがある人はみんな気持ち宝箱が開いてしまってしばらく涙が止まらないんじゃないだろうか。今は亡き歴代キャバリアたちの優しい温もりを思い出して恋しくてたまらない。