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「細穴の奥は深い」「お菓子と秘密。その魅惑的な世界」「丘の上でボートを作る」
「手の体温を伝える」「瞬間の想像力」「身を削り奉仕する」
6篇収録の工場エッセイ。
文中から小川さんの工場愛が溢れ出していた。
私自身は工場に全く興味はなかったが、実家が自営業だったので職人愛は強い。
それもあってか工場で働く方達の物作りに対する情熱やプライド、真摯さに胸が熱くなる。
町で時々見掛ける数人の子供達を載せた箱が「サンポカー」という名称だと初めて知ったり新発見がいくつもあり楽しい。
普段使用している物達を更に大切にしたいと思えた。
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工場見学の感想と説明が主役。
小川さんの視点で、感動や感心した事が書かれている。
私個人としては、おさんぽカーと鉛筆が印象的で楽しく読めた。
反対に、興味の薄い製品の工場だと、文字だけの描写では工程とかが難しくて伝わりにくいかなーって思った。
実際に工場見学をした小川さんは、沢山の発見があって、楽しかっただろうなーーと思う。
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普段そんなに考えたことないけれど、絶対に誰もが1度は目にしたことがあるような、日々の生活に沿うものをつくる工場巡りエッセイ。
小川洋子については小説をいくつか読んだことがあるのですが、静謐な美しさとちょっと仄暗いイメージがありました。しかし今作ではそんな雰囲気がなく、ものづくりに興味津々の少女と一緒に工場巡りをしているように感じられて楽しかったです!
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「科学の扉をノックする」同様、小川さんならではの文章で、ものづくりの工場の様子がとてもよくわかった。それにまつわる感想、考察も共感したり、そういう見方をするのかと感心したり、一緒に工場見学している気分になれた。
ただ、矛盾しているかもしれないが、ここは小川さんの目を通して、小川さんの文章で想像するのが良いのだとわかってはいるのだが、写真が欲しかった(イラストはあった)。こんなに写真が欲しいと思った本はないというほど写真が欲しかった。
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本屋大賞「博士の愛した数式」受賞作家さんは幼少頃から工場オタクだったらしい東大阪女性が活躍細穴グリコピア神戸、競技用ボート製作、保育園で大活躍サンポカー、理科化学実験ガラス北星鉛筆6つの工場のものづくりへの想いをわかりやすく
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工場見学ならば動画ですぐに理解できるものを
わざわざテキストで読みたいなんて変かな
著者が見たものをその感動を味わいたいって感じかな
想像するのが楽しいんですよね
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小川洋子の工場見学記。
ネット記事やテレビの特番などで良く出てくる施設見学とは一味も二味も違うのは、小川洋子の教養と知性に根差す視線の面白さと優しさ、それに言わずもながの文章力。
グリコにしても北星鉛筆にしても、小川洋子じゃなければ「はいはい、知ってます。もう観たことあります」で素通りしていると思う。ある程度の大人になれば、経験とか知識とかが邪魔して、見知った(と思い込んでいる)ことを改めて知りなおそうとしない。所謂「擦れた」大人になってしまうのだ。
この本を読んでみると、擦れることの勿体なさを痛感する。出てくる職人さんは毎日毎日何十年も同じ仕事を繰り返す、その中で少しずつ修正改善を繰り返し、理解のレベルから無意識のレベルで作業を行い、やがて神業と至るようになる。競技でいう「フロー」の状態を毎日維持し続けることができるまで当たり前の仕事をやり続ける。
飽きることもあるだろうし、目新しいことに心奪われることもあるだろうし、他人の芝生の青さに嫉妬することもあるだろうけど、そこに甘んじて「擦れる」ようにはならなかった職人各位、著者の小川洋子だって何年も何文字もとてつもない数の文章を書き続けた人である。そういう人々が層をなしている社会こそ、成熟した過ごしやすい世の中なのかもしれない。
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【株式会社エストロラボ<屋号 細穴屋>)】
それにしても三角柱にあいた穴の、なんと美しいことだろう。穴を美しいと感じたのは生まれて初めての経験だ。本の一点にすぎない入口は正確な位置を守り、何の自己主張もせず、静かに三角柱に馴染んでいる。
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完成品を知らされない事実は、穴をあけるという仕事に対する尊敬の念をいっそう強くさせる。穴が持つ潔さがそのまま、仕事ぶりと重なり合っている。一つの三角柱、一つの四角柱、一枚の板を前に、その人の目は穴をあけるべき一点にのみ注がれている。
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【グリコピア神戸】
お菓子と秘密。なんて魅力的な組み合わせだろうか。(中略)グリコの工場は、ワンカ氏の工場に引けを取らないファンタジーにあふれている。
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【桑野造船株式会社】
「リスクがあるなら、しないのが一番なのに、なぜボートを教えるのか、そこを安全講習の時、指導者たちに問いかけます。(中略)ボートを漕ぐというのは、きちんとリスクを考えたうえで危険な場所に出てゆき、そこで安全力を身につけることである。安全を身につけるためのスポーツにして下さい。そう言っているんです。」
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「皆がビシッと揃うと、空を飛んでいるような感覚になります。あの一体感、スピード感は、他では味わったことのない、何とも言えない、すごい感覚です。」
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【五十畑工業株式会社】
時代の先を読む、というのとは異なる、もっと人間的な切実さが介護用品を産んだ。
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新しい製品が生まれる原点には、目の前の困っている人のためにどうにかできないか、という思いがある。人間的な温かさがエネルギーになっている。
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幼児や、足の不自由な人や、高齢者や、弱ったペットや、助けを必要としている人々に差し伸べられる用具に、手の温もりが込められていること。それを教えられ、改めて人間の手の偉大さをかみしめた。手助け、とはつまり、手の体温を相手に伝えることなのだ。
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【山口硝子製作所】
ガラス部品の魅力は、独特の緊張感なのだ。息さえ止まるような真空の一瞬が、形になって現れ出ている。
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数値化できない職人技を、数値によってより有効的に生かす。この難しい矛盾が、見事に融合していると感じる。
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【北星鉛筆株式会社】
一本の鉛筆で線を引いてゆくと、50キロメートルになるという。(中略)50キロメートルにも及ぶ果てしない旅路を伴走し、自らは姿を消す。書きつけた人と、書きつけられたものにすべてを捧げ、自らは退場する。
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【あとがき】
工場はありふれた日常の中に潜む、圧倒的な世界の秘密でした。世界は自分がおもうよりずっと広く、人間は私が想像するよりずっと偉大な働きをしている。
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たとえ無機質なほどに整備され、管理された工場であったとしても、ものを作る現場である以上、そこはやはり人間の知性と感情が詰まった場所と言えるでしょう。
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今生活で使っているものはいろんな人の企業努力で成り立っているんだなっていうことを感じた。
特にグリコのビスコのビスケットの配合を日によって微調整してることに驚いた。