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わたしはやはり川上未映子さんが、紡ぐ物語がすごく好きなんだなぁと再実感した、短編集。
タイトルの通り春のこわいもの。
コロナ禍でたくさんの作家たちがコロナ禍な現在を作品として残してますが、どうも読んでて楽しいと思えない。それもそのはずで前代未聞なパンデミックで世界的にもどうなるかわからない不安定な中、物語の中でもパンデミック、自宅待機とかもう疲れちゃったんだよね。
でもこれは書籍となった現在がいわゆるコロナ慣れしちゃってるからなのか、すごく読んでて心地よかった。
けど、これをオーディオブックとして発売された去年に読んでたらまた違った感想なのかも。
あなたの鼻がもう少し高ければ、娘についてが中でも好き
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春、今までの日常に突如目的を無理やり持たせてみてはかえって視界がぼやけたり、他人の人生が当たり前のように廻っていることを一つ一つ確かめて、引き止めたくなったり、頭のなかはカンカン観念と現実と思い出とを行き来してずっとうるさい。まさに、春のこわいもの。
「でも、もし動けるなら誰かに助けを求めることはできるよね」
無邪気に酷なことを言う。
コロナ禍のいま、加害とは認知の問題ではなく必ず存在するものであること、貧困、格差は構造が基であると、はっとする言葉が随所にある。
Audible用の書き下ろしとのこと納得。ほんとにリズムがいい。
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「ヘヴン」「夏物語」が好きだったので購入。
短編集ということだが、ちょっと今の自分には面白いと思えなかった。
テンポも冗長に感じたし、あまり引っかかるものを感じなかった。
春も終わってしまったので、途中だけど一度寝かせることにする。
来年の春になったら、また読んでみよう。笑
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話の構成力と表現力が素晴らしくて、何度でも読み返したいと思った。次読む時はまた違った感触を得られそうな気がする。
特に好きだったのは「娘について」
無遠慮な村意識みたいな人間関係のしつこさがたまらなかった。
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あんまりよくわからなかった。娘について は、見砂と主人公の過去のやり取りが後半なんとも気まずい感じなのと、久々の電話がオイルの勧誘って言うのもちょっとコロナ禍の私の身の回りのあるあるだったのが重なり興味を引いたが、ラストはまあこんなもんかという感じであった。
全体的にはっきりした結論はなくそれにしても少し物足りなさが残る一作であった。
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こわい。
これをこわいって思う感情が、
どこから生まれてくるのかって、
たぶん、負の感情を薄い膜ひとつで包み込んで隠すような行為が、自分の身に覚えがあるからじゃないだろうか。
もしそれが破けてしまえば、そこから苦味が溶け出してくるオブラートのように。
手のひらの上にオブラートを乗せると、まるで生きてるみたいに蠢くの。
風に翻るように、それは容易く起こる。
手のひらの持つ熱で、悶えのたうつオブラート。
誰かの人生の春を目前にして、人が感じる妬み、恨みなんかの拗らせ、急に巻き起こる台風みたいなものに感情をも巻き込まれて、思いもよらないことが起きたり、起こしてしまいそうだったりする、危うい、こわいもの。
何食わぬ顔でそれは側にあり、気づいた時にはもう冒されている。
春。2年前のあの春。
気づいたらその季節を生きていて、過ぎた季節に戻ることはできない。
そういうこわさ。
もう戻らない、というこわさ。
ーーーきょうはあしたの前日だから……だからこわくてしかたないんですわ
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コロナ禍の初めの頃を舞台にした短編6編。
存在するとは何なのか、思い出すとは何を思い出すことなのか、生きることの物憂さ、そんないろいろが詩的にあるいは哲学的に淡々と語られている気がした。
出てくるどの女性もそれぞれに辛辣。
他者に対して時々どうしようもなく残酷で、しかし外面的にはそれを繕いつつその罪に怯える心理がリアル。
「あなたの鼻がもう少し高ければ」の、美への憧れと、五十歩百歩な他者への軽蔑、自分では満足できた美を暴力的に踏みにじられる感じが、遠野遥の『改良』を彷彿とさせた。
好意を寄せる女の子からもらった手紙を無くして夜の校舎を二人で探す「ブルー・インク」は青春の甘酸っぱい感じや、デッサン室が落ち着くという学生である主人公の若い心情や、全体的に優しくて素敵なんだけど、夜のデッサン室の異界性や、結局何も覚えていないのではないか、何が現実で何が想像なのか、というようなふわふわした感じもあり、全体的に繊細でリアルで好き。
過干渉な親を持つ甘ちゃんな友達とその母とを、その苛立ちからかつて騙してしまった「娘について」は、心情的には尤もなことながら罪なことをしてしまう人間一般の醜さが描かれていて、怖いけれどリアル。
全体として、飾らないリアルな人間、清濁併せ持つ当たり前な人間を描いていて、よかった。
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川上未映子「春のこわいもの」
shinchosha.co.jp/book/325626/
パンデミック下で心理的な歪さを強めていく市井の人たち。生活の自由度が減り内省の時間が増えたことで、不安や閉塞感や強迫観念や劣等感にまみれていく。一番こわいのは人間、それも自分なんだよな。文章から生生しさが薄まってたのが意外だった
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今までと少し作風が変わりコロナ化の中で
の人々に気持ちの変化と明日の見えない
不安と孤独をそれぞれの違う視点から書いた
物語。
たしかにコロナで日本の状況が一変した
それ以前にSNSで言葉は軽くなりコロナなの日々
と同様に季節も感じ無いまま同じく時と言葉は
流れ去って行く。
川上未映子は作家なので言葉の重みも、
力も知り尽くしている。
明日がどうなるか分からない今、漠然とした
不安から逃れるため口から出る言葉を胸の
奥に仕舞い込み、それが後に後悔や懺悔となって
胸のを抉る。話せない言葉、書けない言葉
相手の思いを知るだった一つの言葉になる
事もあるのだ。
明日はどうなるかわからないから。
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最初のお話があんまり好きな感じじゃなくて、あー、これがずっと続くの辛いなぁとおもったら、意外と面白い話が多かった。
整形したマリリンの話が私的には、好きだったなぁ。あのなんとなく口調が軽い感じ。そして独り言が違和感あるようなでもないような感じ。
コロナが何かと出てくるんだけど、それを感染症って書いてるとまたなんか、コロナじゃないみたいな印象だった。
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こちらは3/17に読み終わった作品。
もう3ヶ月も経ってるので記憶も曖昧やけど、収録作の“ブルー・インク”は今も鮮明に覚えている。それくらい衝撃だった。怖すぎる。
私はそもそも春が苦手で、タイトルの通り、春って怖いなって思って生きてる。何が怖いかは分からんけど、不安になる季節。
だからこそ、この作品に出会ったのがとても嬉しかった。いろんな“こわいもの‘’を共有できた気がします。
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えっと…どう解せばいいの?と言うのが正直な感想。
入院してて、色々考えちゃう話
整形に興味のある少女がギャラ飲み面接を受けてブスと追い返される話
→これは作者がこういった若者の世界も書けるんだぜ!っていう挑戦かな?
深夜の学校に忍び込んで、手紙を探しつつ、一緒に忍び込んだ女の子を犯す妄想をする話
→ 自分の感情を情報に残したくない女の子。文字という情報について考えさせられる?
死にかけの女が半生についてベッドで振り返る話
→ この女が次の話の過保護な親なのかなぁ。
母子家庭苦労人の女小説家の卵と裕福で余裕のある女優の卵の同居から20年後の話
→ この女小説家が、自殺するのかなぁ
あ、あとなんか第三者視点で老人徘徊を描くような短編もあった。
短編間の繋がりを意識してしまうから、面白くないのかな。文体とかが短編ごとに主人公に合わせて変わるのは面白い。
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美容整形の話と、作家になった主人公の話。
この二つが特に印象に残りました。
SNSをチェックするときの思考パターンを文章化するのがすごい。そしてコロナ禍の空気感も取り込まれていて、今の時代を経験した人しか書けないものを読めるのが嬉しい。
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感染症が流行りだした春先を舞台にした短編集6部作。まだ私は30年しか生きていないけど、ああこんな春があったなと感じてしまう作品たちでした。特に、あなたの鼻が…は大学生の長すぎて持て余した春休みを、花瓶は祖母の死を、娘については近年のコロナ禍の春を彷彿とさせました。
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すごいよこの表現。
あなたの娘より、わたしの母の娘のほうがふごいんだよ。わたしの母の娘のほうが、すごいの。