投稿元:
レビューを見る
マチルダとヴィヴィアン、時代を隔てた2人のクリエイターの物語。マチルダパートは第二次世界大戦後からベトナム戦争という大きな時代の流れも組み込まれ、映画業界も目まぐるしく発展していく中でのストーリーに心掴まれるものがあった。ヴィヴィアンパートは現代の映像業界のテクニカルな部分の説明が多く難解な専門用語に読み進むのに難儀したところはある。でも知ってる映画のキャラがたくさん出てきたのでそこは興味深かった。
調べに調べたであろう業界の技術的な部分、スタッフ達の想いや心理を汲み取り深い考察で書かれた本書は内容以上の重みを感じた。作者には感服する。
ポサダ監督はギレルモ・デル・トロ監督をイメージしたのかな。
投稿元:
レビューを見る
CGの出現に絶望し職を投げ出した伝説の特殊造形師マチルダと、彼女に憧れ特殊造形にコンプレックスを抱く30年後のCGクリエイターヴィヴ。
多くの人による共同作業である映画作りの中で、自分の役割とは何なのか。
30年の時を隔て、反対側から自分の存在意義について悩むヴィヴ。
時代や主題は違っても、職業に掛ける意識が高いほど人は悩み、それを救ってくれるのは自分が信頼する人たちからの信頼や人と人との強い結びつきだということは変わらない。
何故だろう。三浦しをんの「風が強く吹いている」を思い出した。
投稿元:
レビューを見る
専門用語頻出で諦めかけるタイミングで、懐かしい映画たちが登場し、なんとかゴール。読んだという満腹感としみじみとした感動。深緑さんの剛腕、取材力いやはや思わず拍手。このところ、この内容、この薄さで高すぎるという本が続いていたが、これは逆に1700円は安過ぎ、映画5本分の充実感。「あなたの才能を信じてる」でも直木賞は微妙か?「戦場のコック」とか「ベルリンは晴れているか」ふさわしい作品たくさんあったのに…巡り合わせか
投稿元:
レビューを見る
時代を超えて2人の女性クリエイターの想いが重なるラストはとてもよかったが、アニメ作りの専門的なところなど、読みにくいところもあった。確かにアニメやCG映画のエンドロールにはものすごく沢山の名前があるので、それらの作品の裏にはクリエイター達の苦悩や苦労があるんだなと改めて考えさせられた。
投稿元:
レビューを見る
マチルダ編からヴィヴィアン編への流れがおもしろかった。CG前後の時代はこうも違ったのか。ヴィヴィアン編は、ドタバタ劇もあって読んでいて楽しい。
投稿元:
レビューを見る
直木賞候補作。
著者の本は三冊目ですが、今回はミステリーでもサスペンスでもなく、海外のSFX、VFXを女性視点で描くど真ん中の人情お仕事小説でした。
「2001年 宇宙の旅」に少年時代で接して、「スターウォーズ」で青春時代に感動させられた世代の自分としては懐かしく、自主映画を作っていた自分としては主人公たちに感情移入しまくってしまいました。
構成も、前半はSFXの歴史が、後半はVFXで一つの作品を作り上げていく物語が、それぞれの女性主人公で描かれていて素晴らしかったです。
p338の主人公名の間違いが無ければ★4つもありだと思いましたが、本当に残念です。
投稿元:
レビューを見る
めちゃくちゃ良かった!!特殊造形師とCGクリエイターの違う時代を生きる2人の女性の成長劇。
アンヘル・ポサダはギレルモ・デルトロ??
日本じゃ無理そうだけど映像化してほしい!
投稿元:
レビューを見る
直木賞候補作。面白かった。年齢感がちょっとわかりにくくて、その点は残念だったかな。ラストが素敵ですが、ラスト近くがちょっと駆け足…?
投稿元:
レビューを見る
前半は戦後ハリウッドで奮闘した特殊造形師・マチルダ、後半は現代ロンドンのアニメーターでCGクリエイター、ヴィヴィアンの視点で語られる。
創作者としての苦しみと性別ゆえの苦しみ。鑑賞者は勝手なものだなと己を棚にあげて嘆いてみる。当事者でなければわからない苦しみは何にでもあるもので、短絡的な批判者にはなりたくないものだが。
投稿元:
レビューを見る
1章2章に分かれ,1章は1948年から1986年,少女の頃見た犬の影に魅せられ続け映画制作に特殊造形師として関わり成長していくマチルダの物語.2章は2017年アニメーターヴィヴィアンが「レジェンド・オブ・ストレンジャー」のリメイク版に関わる中での成長を描いているのだが,それよりマチルダに関わる動きがミステリー風で1章とはまた一味違った味わいになっている.とにかく造形にかける情熱に圧倒され,特殊造形やCG,アニメーションの技術的な面も少しはわかった.
また,女性の社会進出としての歴史としても読み応えあり,特にタイトルにもなったスタッフロールに名前が載るということは当たり前のことなのに,それがなかなか当たり前のことでなかった事実にも驚いた.
そして何よりたくさんの映画が登場し,裏話的な蘊蓄が面白かった.特に最後ユージーンが次は「スパイダーバース」に参加すると言って辞めるところ,作品の素晴らしさを既に知っているので地味に感動しました.
直木賞取ってほしいです.
投稿元:
レビューを見る
そこそこ分厚いが一気に読ませた。
そうややこしい話でなし、ミステリーでもなし、映画業界の歴史をたどるストーリー。
投稿元:
レビューを見る
期待以上に面白く、読後感がとてもいい。
自分の能力を否定してしまう心の揺らぎ、世間や周囲からの批評にさらされる辛さ、そして理想になかなかたどり着けない虚無感といったものに、造型師もアニメーターも、世代を超えて、押しつぶされそうになる。地味でスポットライトが当たらない映画制作現場を舞台にして、「創造」することの難しさを描いた良質な作品だと思う。文中に昔に見た映画のタイトルが出てきたのも良かった。「2001年宇宙の旅」を見直したいと思います。
投稿元:
レビューを見る
戦後すぐのハリウッドを舞台とした特殊造形師と、現代のロンドンを舞台としたCGクリエーターという、映画の裏方として製作に関わった2人の女性を主人公に据えた作品である。
時代とともに新しく生まれる技術がある一方で、ニーズが無くなり枯れゆく技術もあるわけで、そのあたりの変化に対するクリエーターの葛藤模様のようなものが描かれている。
テーマ設定自体は悪くないと思うのだが、肝心の物語の展開がひどい。一言でいうと「ご都合主義全開小説」。ストーリーの誘導が見えすぎていて、かつ読者の予想をほとんどはみ出さないので面白みに欠ける。
別にご都合主義が悪いって言ってるんじゃなくて、本格ミステリではよくある一種の様式美みたいな形で、どう考えても不自然なんだけど読者の一定の了解のもとで、論理的整合性の有無のみを問題にする、みたいな作品はその工夫度合いが読みどころになっていたりするので、全然ありだと思う。
でもこれはそういう小説じゃないからねえ。
もっと言うと、不自然さを凌駕するような別の魅力が作品から出ていればいいんだけど、それも感じられないし。
おかしなところはいっぱいあるんだけど、一番納得がいかなかったのは前半の主人公がCG技術を見せられて激昂するシーン。
例えば平成ゴジラシリーズの特殊技術をやっていたスタッフがシン・ゴジラを観て怒り狂うのかって言ったらそんなこと無いでしょう。
たぶん本作の主題を端的に表すシーンとして挿入したのだと思うけど、不自然さと作り物めいた印象しかしない。
他にも、社長の気に食わない女性に会いに行っただけで謹慎処分をくらうとか、常識的に考えてありえない。このシーンの舞台はイギリスのロンドンだけど、アメリカでこれをやったら訴訟ものではないのか。
そのあとのお涙頂戴的な展開も、申し訳ないが全くと言っていいほど心を動かされなかった。
そして何より、本作のキモである「スタッフロール」に名前が載ることが本人の名誉欲なり満足感を満たすという、ストーリーの前提にあたる部分にほとんど共感できないのが致命的なように思える。
スタッフロールを見て満足するのなんて一瞬でしょう。果たしてこれだけの長さの小説に見合ったタイトルだったのだろうか。
この著者の以前の作品は結構好きで、当時もストーリーで不自然なところは結構あったんだけど、戦時下という極限状況を舞台としており、多少の瑕瑾は緊迫感に相殺されて大して気にならなかった。
だけど戦争という設定が無くなった本作は、著者のウイークポイントが一気に目立ってしまった感が強く、残念。
投稿元:
レビューを見る
2部構成のうち、第1パートは、60年代から80年代、ニューヨークからロサンゼルス、パペット(人形)や特殊メイク等、映像向けの造形を製作する特殊造形師、マチルダ・セジウィックの物語。第2パートは、それから約30年後、2017年のロンドン、3DCGのアニメーター、ヴィヴィアン・メリルの物語。30年の技術の進歩は凄まじいが、デジタル化されて、仕事が楽になった訳ではなく、アナログだった時代と同様、クリエーターたちの苦労は変わらない。特殊造形からCGへ、マティからヴィヴへ、引き継がれるクリエーター魂に胸が熱くなる。
投稿元:
レビューを見る
特殊造形からCGへ。技術が進歩しても創作者の思いは変わらない。映画製作への深い愛情をこめた小説。
「戦場のコックたち」といい、この作者は海外を舞台とした作品作りに長けている。
本作は二部構成。特殊造形とCGアニメーター、2人の女性技術者を主人公に、映画製作の舞台裏が描かれている。
特撮は神への冒涜か、夢と魔法の世界か。
意外に深いテーマ。
分量の割に一気に読める展開。